電影少女:なぜ今? 実写ドラマ化の「理由」 担当Pに聞いた!

桂正和さんの名作マンガを実写化する連続ドラマ「電影少女~VIDEO GIRL AI 2018~」の場面写真 (C)「電影少女 2018」製作委員会
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桂正和さんの名作マンガを実写化する連続ドラマ「電影少女~VIDEO GIRL AI 2018~」の場面写真 (C)「電影少女 2018」製作委員会

 「ウイングマン」「I”s」で知られる桂正和さんの名作マンガを実写化する連続ドラマ「電影少女~VIDEO GIRL AI 2018~」が13日にテレビ東京で放送をスタートする。原作は20年以上も前に連載されていたSF恋愛マンガ。かつビデオテープという前時代的なアイテムが作品のキーとなっていることから、ドラマ化の発表が発表されると同時に「なぜ今、実写化?」「あの時代だったから成立した話」などの声も上がった。今回の実写化にはどういった思いや狙いがあるのか。「『電影少女』ってラブストーリーとしては王道でもあるから、そこに勝機があるんじゃないかと思った」と明かす五箇公貴プロデューサーに話を聞いた。

ウナギノボリ

 「電影少女」は、1989~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、累計発行部数1400万部のSF恋愛マンガ。恋に悩む高校生の弄内洋太(もてうち・ようた)が不思議なレンタルビデオショップで借りてきたビデオを再生すると、いきなり美少女が画面から飛び出してきて……というストーリー。

 ドラマは俳優の野村周平さんとアイドルグループ「乃木坂46」の西野七瀬さんのダブル主演。原作から約25年後の2018年が舞台で、高校生の弄内翔(野村さん)は、両親の離婚を機に絵本作家のおじ・洋太の空き家で一人暮らしを始める。学校では同じクラスの美少女・奈々美(飯豊まりえさん)にひそかな恋心を抱いているが、奈々美は翔の親友・智章(清水尋也さん)に好意を抱いているという一方通行状態。そんな折、翔は家でテープが入ったままの壊れたビデオデッキを発見、修理して再生すると“ビデオガール・アイ”の天野アイ(西野さん)が画面から飛び出してきて……という内容だ。

 ◇桂正和作品ありき 「ウイングマン」の可能性もあった?

 「電影少女」の実写ドラマ化は「桂正和作品ありき」で始まったプロジェクトだという。五箇プロデューサーは「僕は常に映画なりドラマなりの原作を探していて、そこで桂先生のマンガをやれたら面白いよなと、実は『ウイングマン』も考えたりした」と笑う。

 バジェット(予算)の問題や「ファンタジーすぎる」との懸念から「ウイングマン」は結局、思いつき止まり。それでも桂正和作品から離れることはなく、次に出てきたアイデアが「電影少女」の実写ドラマ化だった。「だったら『電影少女』があるじゃんって。むしろ『電影少女』の方がよくないかって」と考えた。

 「電影少女」のマンガが連載されていた当時、自身が主人公の洋太と同じ高校時代を送っていたということもあり、原作への思い入れは人一倍。「僕らの世代が40歳を過ぎて、それこそVHSのデッキが生産中止になったりとか、自分たちが時代に取り残されているって感じていて。とはいえ携帯電話もない、直接的なコミュニケーションを最も大事にしていた時代に青春を過ごしているので、今『電影少女』を、あの一生懸命なあいちゃんをよみがえらせることで、何か伝えることができるんじゃないかって思った」と振り返る。

 さらに「『電影少女』ってラブストーリーとしては王道でもあるから、そこに勝機があるんじゃないかと思った。改めて読み返したらSF的な部分、エロの部分より、(マンガのキャラクターの天野)あいちゃんや(早川)もえみちゃんと洋太のすれ違い、携帯電話のない時代のコミュニケーションと恋愛の切なさっていうのが、よくできている。これを今やったら絶対に面白いだろうな、むしろ切ない部分を際立たせて、うまくドラマ化できないかっていうのが最初に思ったこと」とも明かす。

 ◇「90年代の天野あい」を現代に登場させる意義 桂正和も「面白い」と太鼓判   

 実写ドラマのアイデアを具現化させるのに、まずこだわったのは、1990年代の天野あい(ドラマ版では天野アイ)をそのまま登場させること。一方で「おじさんのノスタルジーにはしたくはない」と舞台は現代に変更した。「そのままドラマ化すると、今の若い子たちに『自分らには関係ない』って言われると思ったし、絶対に若い子に原作の持つ、すれ違う切なさを味わってもらいたいと思ったから」と説明する。

 そこで生まれたのが「テープが入ったままの壊れたビデオデッキを修理して再生したら、25年前の“ビデオガール”が画面から飛び出してくる……」というドラマの基本設定。「ドラマの中でアイちゃんは、干渉して気持ち悪くなるからって携帯電話を持たないんです。このアイちゃんを使って、携帯電話のないころのコミュニケーション、会って直接ものを言うとか、連絡がとれなくてすれ違ってしまうとか、そういったものを核にして書いたものを桂先生が読んでくれて。『面白いからやってみてください』って言ってもらった」という。

 桂さんに「やってみて」と言われたのが昨年4月のこと。安易な実写ドラマ化ではなく、五箇プロデューサーも「そうですね、すごくていねいに作りましたね。桂先生にも『たまに(時代に合わせて)ブルーレイディスクから出てくるってアイデアをいただくことはあるけど、ちゃんとVHSテープを守ってくれているのがありがたい』って言っていただいて。僕もVHSテープっていうのはキモになると思って、一切変えるつもりはなかったので、よかったです」とうれしそうに話す。

 ◇伝えたいのは「すれ違いの切なさ」 桂正和作品の普遍的な魅力と合致?

 今回のドラマを通してもっとも伝えたいことは何なのか? 五箇プロデューサーは「一番、最初に企画書に書いたのは『すれ違うコミュニケーションの切なさ』。携帯電話がなかったころの、あの感じ。それはすなわち(90年代の)あいちゃんに会いたいってことなんですけど。あいちゃんは好きと思ったら好きって伝えなくてはいけない、面と向かって言わなくては伝わらないし、思っているだけではダメなんだってことを身をもって教えてくれる。そういう意味でも、“時代遅れ”なあいちゃんが必要で、(ビデオから出てくるという)原作の核となる部分は変えずに時代だけを変えようとした理由にもなっている」と狙いを語った。

 インターネットの発達や携帯電話、スマートフォンの普及によって簡単に他者とつながれてしまう現代に対してのアンチテーゼも少なからず含んでいるようで、90年代的な考えで“行動”するアイちゃんに対して、現在的な考えで“選択する”翔との世代間ギャップも見どころとなるという。またタイムスリップものでもあり、余命ものでもあるため「連続ドラマにしたときに盛り上がる要素がたくさんある」と五箇プロデューサーは自信をのぞかせる。

 最後に自らドラマの素材に選んだ桂正和作品の魅力を聞くと、「簡単に言うと切なさですよね、究極的なすれ違いの切なさ、そこを描くのが圧倒的にうまいし、いつの時代でも普遍。あとは女の子がめっちゃ可愛い」と笑い、「男子なら『これは!』ってなる」とにやり。

 「桂先生が80~90年代、あの当時の少年たちに向けて描いていた切なさと直接的なコミュニケーションの大事さっていうのはやっぱり大きいですし、そこをドラマでも伝えたい。あと見てほしいのは、90年代の女の子が2018年に来て、どう思うか。『なんで食べ物の写真ばかり撮っているんだ』とか。意識的にそういうギャップや、死語みたいなギャグも入れているので、楽しみにしてもらいたいですね」とアピールしていた。

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