歌手の山崎まさよしさんが、来年公開の映画「影踏み」(篠原哲雄監督)で約14年ぶりに長編映画で主演を務めることが23日、分かった。山崎さんと篠原監督は、「月とキャベツ」(1996年公開)以来となる約22年ぶりに長編映画でタッグを組む。
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映画は「クライマーズ・ハイ」「64」などで知られる横山秀夫さんの同名小説(祥伝社)が原作。真壁修一(山崎さん)は深夜に忍び込んで泥棒を働く「ノビ師」。彼には、15年前母親が起こした無理心中で死んでしまった双子の弟・啓二がいた。2人は1人の女性・久子をともに愛してしまったため、ゆがんだ関係だった。そんな修一に幼なじみの刑事の変死、久子に迫るストーカー事件がふりかかる……という内容。
「月とキャベツ」を繰り返し見るほどのファンで、自身の作品が山崎さん主演で映像化されたらという願望を抱いていた横山さんと、長年横山さんの作品のファンで作品を読みあさってきた山崎さん、「月とキャベツ」の公開20周年をきっかけに山崎さんとの再タッグを望みつつ、いつか“横山作品”を映像化したいと考えていた篠原監督。今回の映画化は、そんな3人が2016年の「伊参スタジオ映画祭」にゲストとして参加したことがきっかけで実現したという。映画は5月から群馬県でオールロケを敢行し、来春以降の公開を予定している。また、主題歌は山崎さんが担当する。
――久しぶりの長編映画主演について。
今回は、過去の経験も踏まえて最初から主演でとお話をいただきました。ずっと役者とは全く違う動きの中で活動してきたので、今はプレッシャーを感じています。
――真壁という役について。
今回はミュージシャンである自分とはかけ離れていますが、歌を書く時の目線は底辺からいろんな景色を見たいと思って歌を作っています。その意味では真壁と同じ目線になれるような気がします。そういう共通項を自分の中に見つけていければと思っています。真壁もしくじりから始まっているし、心の闇も抱えているから、真摯(しんし)に役に向き合っていきたいです。
――横山秀夫作品の魅力。
どの作品でも、普段クローズアップされないポジションにスポットを当てているところ、普段は人々が知るよしもない人間臭い部分を描いているところが好きなんです。
――今回手掛ける主題歌について。
悲しさやどうにもならない気持ち、救い、最後には報われるのか、形は分からないけどそんな主題歌が書けたら。登場人物が抱えるジレンマや葛藤はこの物語に出てくる人誰もが持っているものです。その部分が成就していく醍醐味(だいごみ)を描きたいと思います。
――泥棒を主人公とする「影踏み」について。
警察などの組織も泥棒も同じフィールドにある感覚なんです。組織と個人の関係を突き詰めて考えていくと、最終的にはどんな立場の人間であれ世の中のしがらみと無縁ではいられない。すべての人間はそこから逃れられない。地面すれすれから見た社会を描きたいと思いました。
――映画への期待。
山崎さんと篠原監督が素晴らしい世界観を作ってくれるでしょうから、原作にとらわれずに作っていただきたい。僕はその「影踏み」を楽しみたいと思っています。ミュージシャンとして人の心を盗むのがうまい山崎さんは、実は“泥棒”という役がぴったり合うんじゃないかと思っています。でも、山崎さんを泥棒にしてしまって申し訳なく思っています(笑い)。
――撮影に向けての意気込み。
僕のイメージとしては、いろんな設定を通じて浮かび上がってくる人間の造形を描きたいと思っています。
――山崎まさよしさんの魅力。
男のダメなところを自然に演じられる、人間の弱さを悪びれずに自然体に演じられるのが魅力です。いろんな役で人間の表面化しない裏側も悲哀を伴って出てくる感じが僕は好きなんです。愛すべきアウトローですかね。一緒に仕事をするたびにいつも新しい山崎君を発見できています。権力に対しての反抗心は誰にもどこかあるし、泥棒という仕事が成功するかどうかというスリル、緊張感、快楽はステージに立つ時のものと似ている気がするんです。今回も彼の魅力をどう引き出せるか楽しみです。
――「月とキャベツ」に続いての群馬での撮影。今回はどういう風景を撮る?
今回は群馬のあらゆるところ、住宅街や田んぼや空き地といったとりとめのない空間での撮影になります。そのとりとめのない風景を乾いた面白さとして捉えたいと思っています。
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