俳優の福士蒼汰さんと桐山漣さんが出演する映画「曇天に笑う」(本広克行監督、公開中)は、人気マンガを実写化したアクションエンターテインメント作だ。300年に1度、曇天が続くときによみがえるとされる、破壊神「オロチ(大蛇)」。その力を利用し、政府転覆をもくろむ忍者集団「風魔一族」に立ち向かう曇(くもう)3兄弟の活躍を描いている。福士さんが演じるのは、その曇3兄弟の長男・天火(てんか)だ。曇家に居候する金城白子(きんじょう・しらす)を、桐山さんが演じている。福士さんは2011年の「仮面ライダーフォーゼ」、桐山さんは09年の「仮面ライダーW」という、共に「仮面ライダー」出身俳優の2人に、今作の役作りや演じる際に意識したことなどを聞いた。
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原作は、女性層を中心に熱狂的なファンを持つ唐々煙(からからけむり)さんの同名マンガだ。メガホンをとった本広監督は、原作ファンの期待に沿えるよう、画面の構図や人物配置などで「女性が萌(も)えることを意識」した撮り方をしていったという。
もっとも、福士さんも桐山さんも、そういった本広監督の意図は映画完成後に知ったといい、撮影中、監督からは、福士さんは「(次男)空丸(そらまる=中山優馬さん)を抱き締めるシーンがありまして、僕はガッと自然に抱き締めたんです。そうしたら(監督が)『それいいねえ』と」採用されたこと、桐山さんは、たすき掛けをする際「ひもを手で持つのではなくいったん口にくわえてほしい」と要望された程度だという。
あえて原作との違いを挙げてもらうと、福士さんは「原作は、オロチが結構、悪者として描かれていて、それを“倒す”感じになっていますが、映画は、天火が“鎮める”という要素が強く、そこが天火らしいなと思いました」と指摘。その上で「天火の武器である鉄扇も、刀ではない“斬(き)れないもの”で、人を殺(あや)めるためのものではないという認識なので、天火らしさというのが、結構そこ(オロチの描写)に表れているのかなと思いますね」と説明する。
一方、桐山さんが挙げたのは、「確か原作は、白子は料理が下手だった気がします。でも、映画では料理をはじめとする家事が上手」なところ。実は、白子は元風魔の忍者で、大けがをしているところを天火に助けられた。以来、曇家に居候しながら家事をこなし、いわば、曇家における“母”のような存在だ。家事を得意としたことで、白子が一層母親らしく見え、それゆえに時折、天火と白子が夫婦に見えることがある。
その指摘に、福士さんは「僕が兄であり、父親であって、(白子が)母親代わりであるという認識はありました」と明かす。天火がスーツを着る場面でも、「着終わって脱ぐときも、なんとなくさらっと(白子に)渡すんですよ。それを(白子が)自然に受け取る、みたいな。そういうところも夫婦っぽいなと。そこはなんとなく意識しながら演じました」と振り返る。
かたや桐山さんは、白子の行為は、妻の意識というより、「白子は(過去に)天火に救ってもらっているんです。だから、俺にできることがあれば何でも命じてくれ、と。要は、家の中にいさせてもらっている感謝の印というか、すごく忠実に一家の主に仕えるというか。そういう忠実な様(さま)が、結果的にそう見えたのかもしれません」と分析する。
桐山さんは、白子を演じる際、細かい目の動きなどに工夫を凝らし、「2回見たときに、ああ、白子はこのときこういうことを思っていたのか」と観客が思えるよう、「足し算、引き算を、役を作る上でしていった」という。また白子の武器「クナイ」について、「すごくリーチが短く、ナイフのよう」で、順手、逆手、どちらでも持つことができ、小回りが利くことから、「狂気的で色気がある」と感じ、「この武器には、とても共感していた」と話す。
アクションシーンも今作の見どころの一つだ。福士さんは、普段から心得のある「カリ」という武術を駆使し、ほぼノースタントで挑んだ。「華麗でありつつ、ただカッコいいだけではなく」、天火がボロボロにやられる場面もあるなど、「自分も必死にならないとできませんでした。その意味では、リアルに見せていくという点で、アクションにはこだわりました」としつつ、「きれいに撮ってくださった、監督とカメラマンさんの技」に感謝する。
意外だったのは、着流しでのアクションは「やりにくくないですね」という言葉。むしろ、普段はすり足で移動する袴(はかま)の方が、脚を上げると転ぶ危険性があるそうで、福士さんは「場所によっては脚を上げなければならなかったりするので、空丸は大変だったろうなと思います」と、空丸役の中山さんを慮っていた。映画は21日から全国で公開中。
<福士蒼汰さんのプロフィル>
ふくし・そうた:1993年5月30日生まれ、東京都出身。2011年に俳優デビュー。同年、「仮面ライダーフォーゼ」で初主演。13年にはNHK連続テレビ小説「あまちゃん」に出演し、14年エランドール賞新人賞を受賞。主な映画出演作に「好きっていいなよ。」「イン・ザ・ヒーロー」(共に14年)、「図書館戦争」シリーズ(13年、15年)、「ストロボ・エッジ」(15年)、「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(16年)、「無限の住人」(17年)など。18年公開作として「ラプラスの魔女」「BLEACH」「旅猫リポート」が待機中。
<桐山漣さんのプロフィル>
きりやま・れん:1985年2月2日生まれ、神奈川県出身。2009年に「仮面ライダーW」でテレビドラマ初主演。主なドラマ出演作に「37歳で医者になった僕~研修医純情物語~」(12年)、「空飛ぶ広報室」(13年)、「ロストデイズ」(14年)、「傘をもたない蟻たちは」(16年)、「幕末グルメ ブシメシ!2」(18年)など。映画出演作に「大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]」(12年)、「群青色の、とおり道」(15年)、「呪怨-ザ・ファイナル-」(共に15年)、「カノン」(16年)、「新宿スワンII」(17年)など。日仏合作映画「海の底からモナムール」「ドルメンX」が公開待機中。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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