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森崎ウィン:スピルバーグ監督のオーディション秘話語る 「レディ・プレイヤー1」でダイトウ/トシロウ役

映画
映画「レディ・プレイヤー1」に出演した森崎ウィンさん

 スティーブン・スピルバーグ監督が、VR(バーチャルリアリティー)の世界を舞台に描くSF映画「レディ・プレイヤー1」が20日に公開された。今作で、主要キャラクターの一人、ダイトウ/トシロウ役の森崎ウィンさんは、オーディションで役を射止めたという。出演が決まったときは驚喜のあまり、「時間がいったん止まった」とか。森崎さんに、出演が決まるまでの経緯や自身をスクリーンで見たときの感想、スピルバーグ監督の演出法、さらに10年後の目標などを聞いた。

 ◇スピルバーグ作品と知らずにオーディション

 「いろんなことが怒涛(どとう)のように過ぎていくアドベンチャー作品なので、出ている自分を見たときより、最後のエンドロールで“ウィン・モリサキ”という名前を見たとき、俺、本当に出ているんだと一番感動しました(笑い)」と語る森崎さん。

 「レディ・プレイヤー1」は、アーネスト・クラインさんによるSF小説「ゲームウォーズ」が原作。今から27年後を舞台に、「OASIS(オアシス)」というVRの世界にのめり込む若者が、世界中のプレーヤーと、その中に隠された宝の争奪戦を繰り広げるエンターテインメント作だ。森崎さんが演じるのは、タイ・シェリダンさんが扮(ふん)する主人公ウェイドと共に宝を探すトシロウという青年で、OASISの中でのアバターは、武術に秀でた日本のサムライ“ダイトウ”だ。

 森崎さんはダイトウ/トシロウ役をオーディションで手に入れた。所属事務所から「ウィン、行って来い!」とオーディションに送り出されたときは、「某ハリウッド映画」としか聞かされず、誰が監督かも分からず、「これほどの超大作と考えてもいなかった」と振り返る。スティーブン・スピルバーグ監督の作品だと知らされたのは、2次審査を受けるために、米ロサンゼルスに出発する前夜だった。

 ◇あきらめかけたとき朗報が

 その2次審査でスピルバーグ監督と初めて対面。1次審査のときと同じ台本を読む森崎さんを、スピルバーグ監督自らが「オーケー、ウィン、レディー、アクション!」とハンディーカメラを回した。そのことに新鮮な驚きを覚えた森崎さんだったが、さらに驚いたことに、今のせりふを日本語で話すよう指示された。「僕も急に言われたので頭が回らなくて。でも、とりあえずニュアンスは伝えようと思ってしゃべりました。ですから、あのときに僕が言った日本語はぐちゃぐちゃでした」と苦笑交じりに明かす。

 緊張のあまり、そのオーディションでは、「何をしゃべったかほぼ覚えていない」そうだが、そこから8カ月は「なんの音沙汰もなく」、その間、全世界向けのオーディションが開始されたという情報が耳に入った。「あ、これはないな」「(ロサンゼルスに)行けただけでもラッキー」とあきらめかけていたとき、合格の連絡を受けた。そのときは喜びのあまり、「うおーっという気持ちになり(笑い)、1回、時間が止まった」と振り返る。そして、「気づいたら(撮影で)英国にいて、怒涛の4カ月」を過ごしていたという。

 森崎さんはスピルバーグ監督に、自身の起用の理由は「恥ずかしくて聞けませんでした」としつつ、「英語は勉強中で、100%仕事として対応できる能力はありませんが、発音がすごくきれいだと言われた」そうだ。

 ちなみに、来日したスピルバーグ監督は、森崎さん起用の理由を「ウィンが笑うと私も笑顔になる。機嫌が悪いときでも、ウィンの笑顔を見ると機嫌が直ってしまうんだ。私には4人娘がいますが、彼を起用すれば、彼女たち全員が、この映画を見てくれると思いました(笑い)。ハンサムだし、カリスマ性もあるし、とにかく“いい人”。だから彼に決めました」と語っていた。

 ◇「俺はそれが欲しいんだ!」

 そのスピルバーグ監督の演出は、ずばり「あったかい」。例えば森崎さんの場合なら、戦士らしいしゃべり方や歩き方を指示された程度で、それ以外は、「あまり縛りがなく、その場でアドリブを入れたり、こちらが考えることを提示していくと、とりあえずのみ込んでくれるんです。そして気に入ると、『ウィン、それだ! 俺はそれが欲しいんだ!』みたいなことを言ってくれるんです。それはめちゃくちゃうれしいですね」と笑顔で話す。

 映画の中で、ダイトウがお辞儀をする場面がある。当初の演出では頭を下げるだけだったが、森崎さんが、刀の扱い方を含め、日本のサムライのお辞儀の仕方を提示したところ、スピルバーグ監督は「いいね、それやろう」とすくい取ってくれたという。森崎さんは撮影に入る前、原作を読み、殺陣をやることになるかもしれないと殺陣教室に通った。そのことが奏功したというわけだ。

 ◇マフニって誰?

 ところで、森崎さんが演じるダイトウの顔は「世界のミフネ」こと、故・三船敏郎さんがモチーフになっている。実は森崎さん、そのことも「ギリギリまで知らなかった」と打ち明ける。というのも、スピルバーグ監督は撮影中ずっと、「マフニ、マフニ」「マフニみたいにやって」と指示。そのつど森崎さんも、「マフニって誰?」と首をかしげながら、スピルバーグ監督の「もっとウォリアー(戦士)らしく。サムライ、サムライ」という言葉を頼りに演技していた。そしてあるとき「マフニって誰ですか」と聞き、そこで初めて三船さんのことだと分かったという。そこからは、「七人の侍」(1954年)などでの三船さんの声の出し方や所作をイメージしながら演じていったという。

 ◇「部屋のドアを開けてリビングに出て来い」

 80年代のポップカルチャーのアイテムやキャラクターが随所に盛り込まれた今作。森崎さんは90年生まれだが、「80年代のカルチャーに触れたことのない僕らの世代でも、『レディ・プレイヤー1』で、(当時の文化との)距離が縮まった感覚になった」と話す。

 映画に登場するキャラクターの中で、森崎さんがお気に入りとして挙げたのは、もちろん「ダイトウ(笑い)」と「ガンダム」。「アニメ好き」とはいえ、ファーストガンダムは見ていなかったこともあり、これまではガンダムに対して、「それが良さでもあるのですが、古いなと感じていた」という。ところが、「この映画を見ることによって、ガンダムってカッコいいと、80年代にはまった方たちと同じような思いができるのだと改めて感じました。もう1回(ガンダムを)見ようと思いますね」と今作がもたらした効果を語る。

 今作はまた、VRの世界にのめり込み過ぎることへの警鐘と共に、現実世界における実体験の素晴らしさをアピールする。仕事柄、ソーシャルネットワークは使っているが、「のめり込むほどではない」という森崎さん。ただ、9歳下の弟は、学校から帰るとツイキャス(動画配信サービス)で知り合った友達と会話を楽しんでいるそうで、「弟に、この映画をぜひ見せたいですね。そして、部屋のドアをまず開けよう、リビングに出て来いと僕は言いたいです(笑い)」と呼びかけた。

 ◇目指せ、アカデミー賞

 森崎さんは、俳優のほかに、ダンス・ボーカルユニット「PrizmaX」のリードボーカルとしても活躍している。俳優としてのキャリアをスタートさせたのは2008年。この「レディ・プレイヤー1」が、10年という節目の年に公開される記念碑的作品になったことは間違いない。そこで森崎さんに10年後の自分を想像してもらうと、「10年後はアカデミー賞を取ります!」と即答。その上で、「言い方を間違えたらあきれられるかもしれないですけど」と恐縮しながら、「アクション系も好きなのですが、人間ドラマなどのライブアクション(実写)の映画、CG(コンピューター・グラフィックス)ではない、自分の素の部分、生身の体を使って演じる作品で、10年後は取ります!」と高らかに宣言した。

 その一方で、音楽も「もちろん続けます」と言い切り、「音楽は好きなので欠かせられないですね。よく、(俳優と音楽)どうバランスをとっているのですかと聞かれるのですが、そのとき、来たものを僕は一生懸命やるだけなので、どうバランスをとっているかは自分でも分かりません(笑い)。そのろき、来たものに対して、僕は100%(力を注ぐ)としか考えていません。ですから今、両方を求められているのなら、両方好きですし、僕は両方やります!」と力強く答えた。映画は20日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 もりさき・うぃん 1990年8月20日生まれ、ミャンマー・ヤンゴン出身。ドラマ「東京少女 桜庭ななみ」(2008年)で俳優としてのキャリアをスタート。映画デビュー作は「ごくせん THE MOVIE」(09年)。他の映画出演作に「パレード」(10年)、「天国からのエール」(11年)、主演作「シェリー」(14年)などがある。18年の公開待機作として「クジラの島の忘れもの」(5月12日公開)、「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(秋公開)がある。音楽ユニット「PrizmaX」のメンバー。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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