女優の寺島しのぶさん主演の映画「オー・ルーシー!」(平栁敦子監督)が28日からユーロスペース(東京都渋谷区)ほかで公開される。代わり映えのしない生活を送る40代の独身女性が、英会話教室に通うことになったのをきっかけに自らを解放していく姿を描く。女性、とりわけ、ある年齢以上の女性なら、あれこれ考えさせられる作品だ。
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とある会社で働く43歳の独身女性、川島節子(寺島さん)は、めいの美花(忽那汐里さん)に頼まれ英会話教室に通うことに。気乗りしないまま教室に行くと、そこで待っていたのは米国人講師ジョン(ジョシュ・ハートネットさん)。彼からあいさつ代わりのハグをされ、長年男っ気のなかった節子は、たちまちジョンに恋してしまう。ところがジョンは突然教室をやめ、美花と共に米国に帰国。ジョンを忘れられない節子は、娘の身を案ずる美花の母で姉の綾子(南果歩さん)と米国に向かう……というストーリー。同じ英会話教室に通う生徒の小森を役所広司さんが演じる。
さえない節子を演じる寺島さん。妹節子と不仲の綾子を演じる南さん。初登場シーンから屈託ない笑顔をはじけさせる忽那さん。ちゃめっ気とセクシーさを併せ持つハートネットさん。そして、ここぞというとき頼れる男に豹変する役所さんら、出演者それぞれが役にはまり、見事なアンサンブルを見せる。ジョンに金髪のカツラをかぶせられ、ピンポン玉を口に入れたまま、「ヘイ! マイ・ネイム・イズ・ルーシー!」とあいさつさせられる節子が滑稽(こっけい)なら、トムというニックネームを付けられ、やはりカツラをかぶせられた小森も滑稽。小森が登場した時は、その珍妙さに噴き出してしまった。
年をとることで増えていく経験とシワ。それを自信とするか、引け目と感じるか。節子にとって美花は可愛いめい。にもかかわらず、若くてはつらつとした彼女に嫉妬(しっと)してしまうあたりが、女心の複雑さと恐ろしさだ。ジョンに恋心を募らせていく節子は、正直なところかなりイタい。小森ではなくジョンによろめく彼女に、「どうしてそっちに行く?」とツッコミを入れたくなったが、それもまた女心。節子の感情や行動には、共感すると共に考えさせられた。(りんたいこ/フリーライター)
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