フジテレビ:ガリタさん構想の“CM融合ドラマ”とは… 本人が語る“仕掛け”や苦労

フジテレビの明松功さん
1 / 8
フジテレビの明松功さん

 今年3月に放送を終了したフジテレビのバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」のプロデューサーを務め、同番組のグルメ企画「ガリタ食堂」にも出演していたガリタさんこと明松功さん。現在同局の営業部で活躍している。その明松さんが構想・トータルデザインを務めた“アドフュージョンドラマ”「名探偵コジン~突然コマーシャルドラマ~」(フジテレビ、関東ローカル)が20日深夜に放送される。“ドラマ本編の中にCMを融合させる”という新しい手法を取り入れた作品で、明松さんに同ドラマについて話を聞いた。

あなたにオススメ

 “アドフュージョン”とは、広告と融合することでメインコンテンツの魅力をさらに向上させるという新しい広告の手法といい、今回のドラマは、アドフュージョンの考え方を取り入れた史上初の“アドフュージョンドラマ”として、フジテレビが電通と企画、制作した作品。ドラマ本編の中に“広告=CM部分”を組み込んでしまうという、画期的な演出でストーリーを作成し、CMチャンスという既存の考えを覆すだけでなく、CMもドラマの一部として楽しめるため、メインコンテンツであるドラマ本編がより魅力的な内容になるという。ドラマはサントリーホールディングス、エクスコムグローバル、LINEの3社がスポンサーになっており、一つのCMは90秒。CM中もドラマのストーリーは展開し続ける。

 ドラマは、周囲から隔離された山奥のペンションが舞台。私立探偵の萩原礼一は同ペンションを訪れる。いかにも怪しいペンションに、いかにも怪しい宿泊客たち。その中に、萩原の好みの美女がいた。そして萩原は思う。「この状況で殺人事件が起きれば、立場的に私がこの場を仕切って、華麗に事件を解決するパターンではないか。起きろ、殺人事件、起きろ!」と。やがて萩原の思惑通り殺人事件は起きた。しかし、被害者は萩原本人。萩原は背後から刺されたため犯人の顔を見ることができず、無念の中、息を引き取る。しかし、そんな萩原の無念が奇跡を起こす。萩原は亡霊となって現世にとどまり、故人(コジン)として事件解決に向かう……という展開。

 ミュージシャンで俳優の金子ノブアキさんが萩原、佐津川愛美さんが萩原が一目ぼれする美人フードコーディネーターの間宮紗良、北香那さんが萩原がタッグを組むことになるキーパーソン・神山結子を演じるほか、落合モトキさん、角田貴志さん、峯村リエさん、升毅さんも出演。滝藤賢一さんがストーリーテラーとして登場する。 

 ◇

 明松さんは、いわゆるインフォメーションとコマーシャルを掛け合わせた“インフォマーシャル”や通常のCMとの違いについて、「放送法や放送基準によって『番組とCMは識別できるようにしなければならない』というのがあります。このドラマのCM中は『ただいまCM中』というテロップを入れており、ステルスマーケティングを避けるため、画面に『突然コマーシャルドラマ いつ何を宣伝? 『商品A』『商品B』『商品C』『商品D』」と入れたり、ドラマの冒頭でストーリーテラーに『いつCMが“スネークイン”してくるかも、お楽しみに!』と説明してもらっています。その上で、CMを物語に自然になじませて、スネークインさせようと必死で知恵をしぼりました」と説明する。

 アドフュージョンドラマの魅力を聞くと「テレビ局目線で言うと、視聴者はドラマをずっと見続けられ、息抜きができない。広告代理店側としては、物語になじみながら広告が入るので、物語の邪魔をしない。あとは、こういう面白いことに賛同している会社(スポンサー)なんだという企業イメージのアップがあるように思います」と話す。

 明松さんが“アドフュージョンドラマ”を思いついたのは1年ほど前だという。「僕は2年前の夏に営業に異動し、ちょうど1年がたった時ぐらいでした。純広告だとスポットセールスの中で、売り上げを上げていくのがテレビ局の僕ら営業のベーシックだと思います。僕は45歳で営業に来た新人なので、そういったことを(局側から)求められていなかったというか、そこを突き詰めても(これまで営業をしてきた人たちに)人脈や経験などで勝てないと(笑い)。その代わりに(番組制作での)現場経験を生かして、番組と絡めてCMという商品を使って新しいことをしないとって考えていました。テレビ局ならではのメディアを使ってCMの新しい見せ方をやらないといけないと分かりながらも具体的に何も実現できていなかった」と当時を述懐。

 そんな中、明松さんは、今回同ドラマで同じく構想・トータルデザインを務める電通の中尾孝年さんと食事をしたといい、「営業職に慣れず、僕に課せられた宿題ができていないことを彼に説明しました。彼は彼でCMをたくさん作っているけど、このハードディスク時代にバンバン、スキップされてCMを見てもらえない、むなしさみたいなものを抱えていました。どうやったらCMを見てもらえるのか。その中でドラマだったら可能性があるぞ!って(なって)。ドラマをやるなら緩急が付けられるサスペンスだって(笑い)」と今回の企画の経緯について語った。

 しかし、ドラマの制作に至るまで苦労もしたといい、「ドラマのストーリーに広告を入れるって考えましたが、スポンサーが決まらないと脚本が書けず、脚本が決まらないと出演者のキャスティングができず、キャスティングができていないと企業は興味を示してくれず……。各所に『仮に』『例えば』って説明して回っていた時期がつらかったです」と明かした。

 ◇

 番組プロデューサーという立場から営業職への転向で「番組のことを俯瞰(ふかん)で見ることができるようになった」と語る明松さん。「当時は、番組というものにどっぷりつかっていたので、あまり俯瞰で見ることができなかった」と振り返り、「ドラマのオンエアの前に、ドラマをどう楽しんでもらえるか、どうPRするかは、番組のPRをするプロデューサーの作業と似ている」とも語った。

 ドラマの第2弾、第3弾の構想について聞くと、「実は(やりたい)“点”の発想はあります。これを線にして、面にしていけたら」と明かした。

 営業に異動し、“何も実現できていなかった”と語った明松さんにとって、ずばり、このドラマは“打開策”になりそうかと質問すると「(視聴者から)僕が想像している好意的な反応をいただければですが、このドラマが全て(のやり方)ではないと思いますが、新しい何か一つの形になればと思っています」と期待していた。

 「名探偵コジン~突然コマーシャルドラマ~」は20日深夜0時半から放送。

写真を見る全 8 枚

ビジネス 最新記事