15日に東京都渋谷区の自宅で死去した女優の樹木希林さん(本名・内田啓子)さん(享年75)の告別式が30日、光林寺(東京都港区)で営まれた。式では、喪主を務めた夫の内田裕也さんが弔辞を読むはずだったが、代わりに女優でエッセイストの長女・内田也哉子さんが樹木さんと裕也さんへの思いを語った。
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也哉子さんは「思えば内田家は数少ない、互いへのメッセージ発信をいつも大勢の方たちの証人のもとにさせていただくという奇妙な家族でした」と話し、「私は結婚するまでの19年間、母と2人暮らしでした……。そこにまるで象徴のように君臨する父でした。何をするにも私たちにとって常に大きな存在でした。幼かった私は不在の父の存在に押しつぶされそうにもなりました。困った私が、母になぜ、このような環境を続けるのか母を問い詰めると、平然と『だって、お父さんにはひとかけらの純なものがあるから』と私を黙らせるのです。自分の親とはいえ、人それぞれの選択があると、頭では分かりつつも、やはり私の中では永遠に分かりようのないミステリーでした」と振り返った。
さらに、「ほんの数日前、母の書庫で探し物をしていると、小さなアルバムを見つけました。(その中から)色あせたロンドンからの手紙を見つけました。それはまだ母が悠木千帆と(芸名を)名乗っていたころのものです。父から届いたエアメールでした」と語った。
手紙は「今度は千帆と一緒に行きたいです。結婚1周年は帰って2人きりで。この1年いろいろ迷惑をかけて反省しています。裕也に経済力があればトラブルが少なくなるでしょう。俺の夢とギャンブルで大きな代償を払わせていることはよく自覚しています。ロックをビジネスとして考えないといけないという時が来たのでしょうか。早くジレンマが解消されるように祈ってください。落ち着きとずるさが共存にならないように……。このやろう! てめえ! でも本当に心から愛しています。1974年10月19日ロンドンにて裕也」という内容。
也哉子さんは、時折、すすり泣きしながら「今まで想像すらしなかった。勝手だけど母への感謝と親密な思いが書かれた手紙に、私はしばらく絶句してしまいました。普段は手に負えない父の本当と苦悩と純粋さが妙に腑(ふ)に落ち、母が誰にも見せることなく、それを本棚に大切にしまっていたことに納得してしまいました。長年、私の心のどこかで許しがたかった父と母の在り方へのわだかまりが、すーっととけていくのを感じたのです。こんな単純なことで、あれほど長年かけて形成された重い塊が溶け出すんだと自分にあきれつつも。母が自虐的に時折笑っていました。『私はよそから内田家に嫁いで、本木(雅弘)さんにも嫁いでもらって、みんなで一生懸命、家を支えているけど、肝心な内田さんがいないのよね』と」と声を振り絞った。
続けて、「でも私が唯一親孝行ができたとしたら、本木(雅弘)さんと結婚したことかもしれません。私以上に両親を面白がり、大切にしてくれました。何でもあけすけな母とは対照的に、少し体裁が過ぎる夫ですが、家長がいない内田家に静かにずしりと存在してくれる光景はいまだにシュール過ぎて感動します」と感謝を語り、「絶妙なバランスが欠けてしまった今、新たな内田家の均衡を模索する時が来てしまいました。おじけづいている私は、いつか言われた母の言葉を記憶から必死にたぐり寄せました。『おごらず、人と比べず、面白がって平気に生きればいい』。まだたくさんすべきことがありますが、焦らず家族の日々を大切に歩めたらと」と語った。
告別式の前に会見を開いた本木さんは、樹木さんが亡くなった翌日に、裕也さんが樹木さんの自宅を訪れたことを語りながら「(亡くなった)樹木さんを見ながら『すごくきれいだ。美人だと思っていたんだよ』って笑いながら。ビールが飲みたいと言われたので、ビールをお渡しした」と明かした。生前の樹木さんと裕也さんの関係については「ダイヤモンドの原石のように、計り知れない純粋さを持っていたのと同時に、2人にしか分からない、独特の距離感というか、認め合っていた」と振り返った。続けて「樹木さんの骨つぼの蓋(ふた)を閉めようとした時に、裕也さんが改めて骨を箸でつかみながら、もう一度、頭蓋骨(ずがいこつ)とあごの辺りの骨を見ていた。その中からあごの部分の骨を取ってハンカチに包んでいた」と明かした。
なお、関係者によると、裕也さんが弔辞を読まなかったのは「裕也さんの体調を考えてのことと、也哉子さんがあいさつをしたいという思いがあったということで」と説明。也哉子さんが手紙を読んでいた間、「裕也さんは涙を見せることなく静かに耳を傾けていました」と語っていた。
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