俳優の志尊淳さんが主演を務める映画「走れ!T校バスケット部」(古澤健監督)が3日に公開される。高校の弱小バスケットボール部の奮闘を描いた青春ストーリーで、志尊さんは過去の傷を抱えたまま、バスケの強豪校から弱小高に転校する田所陽一役を演じる。志尊さんに撮影エピソードや自身の青春時代、スポーツへの思いなどを聞いた。
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映画は、松崎洋さんの小説が原作。中学時代、バスケ部のキャプテンだった田所陽一(志尊さん)は、強豪の私立白瑞(はくすい)高校に入学するが、部内で激しいいじめに遭い、自主退学する。「二度とバスケはしない」と誓い、通称T校と呼ばれる多田野高校に編入したが、連戦連敗の弱小バスケ部から勝負を挑まれ、そのまま入部することに。そこで陽一は個性的なチームメートと出会い、仲間とのバスケの楽しさを思い出す。そして迎えたウインターカップ。因縁のライバル・白瑞高校を相手に、弱小バスケ部は勝利を手にすることができるのか……というストーリー。
志尊さんは、もともとスポーツ群像劇を演じることに「憧れがあった」という。バスケを通して主人公が仲間たちとともに成長していく「T校~」は興味深かった。台本を読み、「リアリティーとファンタジーが行き交うような感覚を感じました。弱小チームが勝ち上がっていく、というのはどこかフィクションっぽいけれど、要所要所にリアリティーがあって……。等身大でいいなと思いました」と感想を明かす。
演じる陽一の魅力について、「穏やかで、ずっと前を向いているところ」と語る志尊さん。「心がけたのは、しっかりと周りを見ること。自分の中のルールとして『作中で周りの人物それぞれに一回は触る』ことを心がけました。例えばチームメイトが落ち込んでいるシーンだったら、『大丈夫だよ』と背中を触ったり、ゴールを決めたらハイタッチしたり。陽一は周りをすごく気にかけられる人だと思うので、そのディテールを入れるように心がけました」と語る。23歳での高校生役だが、志尊さんは「まったく抵抗ないですね」ときっぱり。だが、「お話をいただける限り、制服を着たいと思っていますけど……30歳までは着たくないですね」と苦笑する。
映画の見どころの一つが、バスケのシーンだ。だが、撮影前は、牧園役を演じる佐藤寛太さん以外、T校メンバーは志尊さんも含めてほぼ素人だったという。そのため、3カ月間の練習期間を必要とした。「3カ月あったとはいえ、みんな忙しかったので、(集まって練習するのは)週1回ぐらい。今回は時間が限られているので、うまくプレーするというよりも『うまく見せる』ことを大事にしていました。それぞれが持っている、もともとのポテンシャルが高いものを磨いていこう、ということですね」と志尊さんは明かす。
また、「バスケのシーンがたくさん入っていますが、監督に『僕はバスケシーンをすごく増やしてほしい』と言ったんです」とも。「バスケシーンは、せりふがなくてもそれがコミュニケーションにつながるから。みんなで練習した過程がチームの団結に結びつく、ということを練習期間中に多く感じました」と振り返る。
主人公の田所陽一のように、志尊さんにもかつて、スポーツに熱中していた経験があるという。「高校からは仕事に熱中していたんですけど、高校時代を除くと、熱中していたものといえば僕は勉強と部活。部活は野球部で、4番でキャッチャーでした。すごく体がでかかったんです。体重も70キロ以上あって、部活をやめるにあたって、18キロぐらい絞ったんです(笑い)」と志尊さんは打ち明ける。今のスリムなスタイルからは想像ができないが、「自称“動けるデブ”でやっていましたね」と笑顔で語る。
そういったスポーツ経験は俳優業にも生かされているという。「役者という仕事をしている以上、無駄な経験はないと思っているんです。役者を始めて、いろいろな経験をした中でも、今までにやっていたスポーツが糧(かて)になっていると確信が持てますし、たとえこの仕事をしていなかったとしても、絶対プラスになっていると思います」と断言する。「小・中学校でスポーツをやっていたときの考え方が、少なからず枝として支えてくれているな、という部分はあります。何かをやり遂げるとか、負けたくないとか、そういう気持ちはスポーツで芽生えてくるものだと思います」と語る。
バスケを軸に、仲間たちとの輝かしい青春時代を描いた本作。最後に、志尊さん自身の青春の思い出は? 「今振り返ると、部活が終わって駄菓子屋とかに行ってみんなで食べながら……とか、青春だったなと思いますね。あわよくば、ちゃんと恋をしたかったなと思います(笑い)。男子校だったのでまず出会いがなく……。唯一戻れるなら、恋をしたいです」とちゃめっ気たっぷりに笑う志尊さん。続けて「部活をする原動力にもなりますからね」としっかりと映画に結びつけて、ほほ笑んでいた。
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