女優の小芝風花さんが主演を務める連続ドラマ「トクサツガガガ」(NHK総合、金曜午後10時)が話題だ。隠れ特撮オタク役の小芝さんらキャスト陣の熱演ぶり、オタクたちの生態に迫るあるあるネタや共感必至の名言の数々に加え、他局のパロディーも飛び出すなど、回を重ねるごとに面白さが増していると言っても過言ではない。さらに人気の要因になっているのが、ドラマの大きな題材である特撮パートのクオリティーだ。「仮面ライダー」「スーパー戦隊シリーズ」で知られる東映の協力によって実現した、熱すぎる特撮パートの裏側に迫ってみた。
ウナギノボリ
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ドラマは、マンガ誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で丹羽庭さんが連載中のマンガが原作。特撮オタクの叶(小芝さん)が、日々の生活でさまざまなピンチに陥ると、本人にしか見えない特撮ヒーローが現れ、その言葉に勇気づけられ、次々とピンチを切り抜けていく……という物語。
1月18日放送の第1回「トクサツジョシ」では、冒頭からいきなり、劇中ヒーロー「獅風怒闘ジュウショウワン」のシシレオー、トライガー、チェルダが、敵対するゲンカ将軍や部下の戦闘員と戦いを繰り広げるシーンからスタート。本格すぎる作り込みに対して、視聴者からは、仮面ライダーやスーパー戦隊が放送されている“日曜の午前(朝)”を引き合いに「すげーガチ! ガチのニチアサ感」「ニチアサ感がハンパない」との声が続々上がるなど、特撮ファンの心をがっちりとつかんだ。
以降も、主人公が小さい頃に見ていた特撮ヒーロー番組という設定の「救急機 エマージェイソン」のエマージェイソン、「ジュウショウワン」の追加戦士・セロトルといったマンガの中の特撮キャラが、“本家・ニチアサ”と遜色ないクオリティーで三次元化・映像化されてきた。
ドラマ化の当初から、特撮パートも「三次元として描く」ことを決めていたと話すのが「トクサツガガガ」制作統括の吉永証チーフプロデューサー(CP)。「マンガのファンはもちろん、原作者の丹羽さん自身も自分が生み出したヒーローがどう映像化されるのか、期待していただろうし、ドラマとして作るなら、本物をできる限りのクオリティーで実現したいっていうのが最初からあった」と明かしている。
朝ドラや大河ドラマで知られるNHKではあるが、決して特撮に明るいスタッフがそろっているわけではない、そこで協力を求めたのが東映だ。「もちろん“なんちゃって”な感じで描く手もあったとは思います。ただ、主人公にとって特撮は“もっとも心を動かされるもの”であり、視聴者にとってもそうであってほしいと。加えて、マンガに出てくるヒーローたちは東映さんが作ってきた作品がモチーフになっているので、本物を目指すなら東映さんに協力をお願いするのが一番」と今回の「NHK×東映」タッグの理由を説明する。
現在、劇中に登場しているヒーローは全5体。さらにゲンカ将軍やカラオケ怪人、戦闘員を合わせると、10近くのキャラクターを三次元化している。それぞれのスーツに加え、武器などのガジェット、フィギュアやキーホルダー、DVDパッケージといった小物に至るまで、その全てが本物に限りなく近く、こちらも“作り込み”のあとがうかがえる。
ジュウショウワン、エマージェイソンのスーツデザイン・製作は「太陽戦隊サンバルカン」(1981年)をはじめ、数々のスーパー戦隊を手がけてきた「レインボー造型企画」が担当。フィギュアやキーホルダーは、スーツの三次元データをもとにミニチュア化、デフォルメ化を進めていったというが、撮影までに要した時間は約半年。吉永CPも「ここまでしっかりと特撮を扱ったことがなかったので、どこまで時間がかかるのか分からなくて……。一つのヒーローものを作るのことの大変さを知りましたね」と振り返る。
スーツや小物類をどんなに本物に近づけようとも、映像として、その本物感が伝わらないと元も子もない。そういった意味でも、特撮パートの撮影はドラマ制作において重要な部分であった。
「まさしくその通りで。劇中劇ではありますが、カメラも今回、特撮を撮るときのものを使いましたし、映像のスピード、印象的な場面は現場でスローで撮ってみたり、東映さんが普段からやっている手法で、質感や加工の部分含めて、細部までこだわって“再現”したつもりです」と吉永CPも胸を張る。
そのほかスーツアクターや起用声優に至るまで、制作陣の特撮愛は見事に結実し、視聴者からは「ニチアサ感がある」といった言葉に加え、「NHKの本気を見た」という意見も。そうなってくると期待したくなるのが、特撮パートのみのドラマ化だが……。
吉永CPは「原作者の丹羽さんの中には、きっと『ジュウショウワン』の壮大なストーリーがあって、それを“本編”として見せられる機会があったらなって思うんですけど……。それはそれで大変なことだと思いますので、現時点では、私個人として『見てみたい』とだけ言っておきます。今、言えることはここまでですね」と笑っていた。
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