注目映画紹介:「九月の恋と出会うまで」高橋一生と川口春奈が繰り広げる切なく温かいラブストーリー

映画「九月の恋と出会うまで」の一場面 (C)松尾由美/双葉社(C)2019 映画「九月の恋と出会うまで」製作委員会
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映画「九月の恋と出会うまで」の一場面 (C)松尾由美/双葉社(C)2019 映画「九月の恋と出会うまで」製作委員会

 俳優の高橋一生さん、女優の川口春奈さんダブル主演の映画「九月の恋と出会うまで」(山本透監督)が、3月1日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開される。小説家志望の男性と、1年後に存在が消えてしまう運命にある女性の切なくも温かい恋が描かれている。高橋さんと川口さんの顔合わせが新鮮で、2人のやりとりに引き込まれる。

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 原作は松尾由美さんの同名小説。旅行会社に勤める志織(川口さん)は、引っ越してきたばかりのマンションで、身に危険が迫っていることを知らせる1年後の未来からの不思議な声を聞く。志織から、その声について相談を受けた、同じマンションに住む小説家志望の平野(高橋さん)は、助かった志織に「タイムパラドックス」が生じることに気づく。それは、志織の存在が1年後に消えることを意味していた……というストーリー。

 高橋さんと川口さんの表情がいい。平野は、朴訥(ぼくとつ)で優しく、ちょっと変わったところがある男性。髪の毛の寝癖には無頓着なのに、高熱で倒れた志織のために薬や食べ物をきちんと用意する几帳面さと繊細さを持つ。志織のことが好きなのに思いを伝えられない。その歯がゆさを、高橋さんは大人の魅力を漂わせながら演じ、心を動かされた。

 川口さんが演じる志織は、いわゆるカメラ女子で、カメラ片手に撮影して歩く活発な一面を見せる一方で、平野に引かれていく過程を繊細かつチャーミングに表現していた。バスの中での、平野の小説を巡っての2人のほほ笑ましいやりとりには、思わず頬がゆるんだ。

 志織と平野が住んでいる造りの変わったマンションもすてきで、物語のファンタジー性を後押ししている。ミッキー・カーチスさんや浜野謙太さん、中村優子さんが演じる他の住人たちも魅力があり、彼らについてもっと知りたくなった。川栄李奈さん、古舘佑太郎さんも出演している。SF要素の強い作品だが、共感することは多い。今、何かに迷っている人、自分の殻を破れず悩んでいる人の背中をそっと押してくれる作品だ。(りんたいこ/フリーライター)

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