直木賞作家・西加奈子さんの同名小説を映画化した「まく子」(鶴岡慧子監督)が、15日からテアトル新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。大人になりたくない少年が不思議な少女と出会って成長する姿と、ある奇跡を描いた物語。「真夏の方程式」(2013年)で恭平役を演じた山崎光さんが映画初主演を果たした。思春期のもやもやをみずみずしく演じ切っている。浮気性の父親にふんした草なぎ剛さんとの不器用なやりとりが、印象に残る。
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小学5年生のサトシ(山崎さん)は、山あいの温泉街で旅館「あかつき館」を営む両親と暮らしている。母親の明美(須藤理彩さん)は旅館を切り盛りし、父親の光一(草なぎさん)は料理長として働いている。サトシは、大人の体へと成長していく自分に抵抗感、女好きの父親に嫌悪感を抱いていた。ある春の日、旅館の従業員用の寮へ母親と共に引っ越してきたコズエ(新音<にのん>さん)が、サトシのクラスに転入してくる。サトシはその不思議な魅力に引かれていく。ある日、コズエがサトシに秘密を打ち明ける……というストーリー。
NHK朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で松坂桃李さんの子供時代を演じた山崎さんが、14歳(撮影時)で主演デビュー。自身も思春期の真っただ中にあり、リアリティーにあふれる表情で、繊細に演じている。コズエ役の新音さんは、RADWIMPSの「狭心症」のミュージックビデオにも出演したモデルで、大人っぽく謎めいた美少女ぶりで存在感を放っている。つみきみほさん、お笑いコンビ「しずる」の村上純さん、根岸季衣さん、小倉久寛さんらが出演している。
王道の「通過儀礼」を描いている。思春期に差しかかかったサトシの揺れる心情が、リアルでほほ笑ましい。大人になるのが怖いサトシの言葉、一挙手一投足が、10代のものであり、対照的に自分の成長を楽しむコズエに引かれるのも分かる。
サトシが超えるべき相手の父親・光一は、女好きのダメ男だが、演じる草なぎさんが、優しさと色気も兼ね備えた演技で、本当は家族を愛する男であることを繊細な演技で見せてくれる。父親の手で握られたゴツゴツとした握り飯も味わい深い。光一がサトシとどう対峙(たいじ)するのかも見ものだ。登場人物は、不器用に生きる素朴な人間ばかり。すべての人を祝福するかのような美しい奇跡をぜひ見届けてほしい。
主題歌は、高橋優さんが書き下ろした「若気の至り」。群馬県の四万温泉の自然豊かな美しい風景の中でロケをしたという。劇中の砂絵は、鶴岡監督の友人で砂絵アニメーターの佐藤美代さんが手がけた。(キョーコ/フリーライター)
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