注目映画紹介:「多十郎殉愛記」伝説の監督の20年ぶり本格時代劇 高良健吾が瀬戸際で生きる男を色気たっぷりに

映画「多十郎殉愛記」の一場面 (C)「多十郎殉愛記」製作委員会
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映画「多十郎殉愛記」の一場面 (C)「多十郎殉愛記」製作委員会

 高良健吾さん主演の時代劇「多十郎殉愛記」(中島貞夫監督)が、12日から丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで公開される。「木枯らし紋次郎」(1972年)、「新・極道の妻たち」(91年)などを手がけた日本映画のレジェンド、中島監督が20年ぶりにメガホンをとった。ヒロインには多部未華子さん。生きるか死ぬかの瀬戸際で見つける愛によって突き動かされる侍を、高良さんが色気たっぷりに熱演している。

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 幕末の京都。貧乏長屋に住む清川多十郎(高良さん)は、親の残した借金から逃れるために脱藩浪人となり、大義も夢もなく無為に日々を過ごしていた。ワケありの小料理屋女将おとよ(多部さん)は、多十郎に思いを寄せ、かいがいしく世話を焼きながら見守っていた。その頃、京都見廻組が浪人の取り締まりを強化。多十郎に危機が迫る……という展開。

 多十郎の腹違いの弟の数馬役に木村了さん、敵役の抜刀隊隊長・溝口蔵人役に寺島進さん。永瀬正敏さんが桂小五郎役で特別出演し、それぞれ存在感あふれる芝居を見せている。斬られ役でおなじみの福本清三さんの華麗な散り際や、テレビドラマ「暴れん坊将軍」シリーズなどの栗塚旭さんの円熟した芝居も見逃せない。

 高良さん演じる多十郎は、静と動、別の美しさがある。することなくダラリと座っていても、力強い目としなやかな肉体は、何かを探し求めているようだ。追っ手がやって来て逃げ回る姿は、風のように爽快で力強い。おとよからのいちずな愛を受け、やがて愛する人を助けるために刀を持つ選択に至るといったストーリーの中に、斬る・斬られるという肉体を通じた東映京都・太秦時代劇の美学が宿る。クライマックスの殺陣では、一つ一つの動きに魂と熱を感じ、最後まで緊張感が途切れない。

 高良さんは、2カ月間殺陣の稽古(けいこ)に励み、エキストラの稽古にも参加する熱の入れようだったという。中島監督の「ちゃんばらを次世代に」という期待に十二分に応えている。中島監督は「くノ一忍法」(64年)で監督デビュー。同作をはじめ、「必殺」シリーズなど数々の時代劇に出演歴のある三島ゆり子さんも今作に顔を出し、高良さんとの絡みを見せている場面も面白い。

 「私の男」(2014年)などの熊切和嘉監督が、監督補佐として参加している。主題歌は、中孝介さんの「Missing」。(キョーコ/フリーライター)

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