注目映画紹介:「バースデー・ワンダーランド」原恵一監督最新作 色彩美と共感できる物語に引き込まれる 声優に松岡茉優ら

劇場版アニメ「バースデー・ワンダーランド」の一場面 (C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会
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劇場版アニメ「バースデー・ワンダーランド」の一場面 (C)柏葉幸子・講談社/2019「バースデー・ワンダーランド」製作委員会

 アニメ「クレヨンしんちゃん」シリーズや「河童のクゥと夏休み」(2007年)などで知られる原恵一監督の新作劇場版アニメ「バースデー・ワンダーランド」が26日からTOHOシネマズ日比谷(東京都千代田区)ほかで公開される。ロシア出身の若手イラストレーター、イリヤ・クブシノブさんがキャラクター、ビジュアルアーティストとして参加。見事な色彩と東欧風の異国情緒あふれる景色など圧倒的な映像美、主人公の少女アカネが勇気を出して一歩踏み出す姿を描いた共感できるストーリーで、スクリーンにぐいぐいと引き込まれる。アカネの声は昨年、映画「万引き家族」での演技が評判となった女優の松岡茉優さんが担当している。

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 「バースデー・ワンダーランド」は、柏葉幸子さんの児童文学「地下室からのふしぎな旅」(講談社青い鳥文庫)が原作。誕生日の前日、自分に自信がないアカネの目の前に、謎めいた大錬金術師のヒポクラテスと弟子のピポが現れ、「私たちの世界を救ってほしい」と頼まれる。アカネはその場に居合わせた叔母のチィと共に“幸せな色に満ちたワンダーランド”に無理やり連れて行かれる。不思議な動物たちなどが住むカラフルな世界は、色が消えてしまう危機に陥っていた。ワンダーランドの救世主にされてしまったアカネは大冒険を繰り広げ、やがて人生を変える決断を迫られる……というストーリー。

 アカネ役は女優の松岡茉優さん、骨董屋を営む自由奔放な性格の叔母チィ役を杏さん、アカネの母ミドリ役を麻生久美子さん、ヒポクラテス役を俳優の市村正親さんが声を担当。また、ヒポクラテスの弟子の小人のピポを東山奈央さん、ワンダーランドから色を奪うザン・グ役を藤原啓治さん、ザン・グの相棒ドロボ役を矢島晶子さんが声優を務めている。挿入歌・イメージソング「Wonderland」は新人シンガー・ソングライターのmilet(ミレイ)さんが歌っている。

 とにかく色がきれいだ。これは、原監督がたまたま入った本屋で画集を見て一目ぼれしたというロシア人のクブシノブさんの手によるもの。これまでの原監督の作品にはなかった色彩、東欧風の景色に目を奪われる。そこに原監督が得意とするリアリティーのある人物描写が加わり、大人も子供も楽しめる上質なアニメーション作品に仕上がっている。

 声は松岡さんはもちろん、原監督作品に出演経験のある杏さん、麻生さん、市村さん、さらに声優として実力のあるしんちゃんの初代声優の矢島さん、しんちゃんの父ひろしの初代声優の藤原さん、東山さんらの声は、上質で完成されたものでありながらもリアリティーがあり、思わずストーリーに引き込まれる。大冒険の最後にアカネが決断したこととは……。見終わったあとに何か一歩踏み出そうと前向きな気持ちになれる良作だ。(細田尚子/MANTAN)

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