浜辺美波:進化を続ける18歳 受けの芝居で物語を支配 「映画 賭ケグルイ」でさらに“一つ上”へ

「映画 賭ケグルイ」で主演を務める浜辺美波さん (C)2019 河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX・「映画 賭ケグルイ」製作委員会
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「映画 賭ケグルイ」で主演を務める浜辺美波さん (C)2019 河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX・「映画 賭ケグルイ」製作委員会

 2017年に公開され、興行収入約35億2000万円を記録と大ヒットした映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」(キミスイ)で、誰からも愛される明るいクラスの人気者と余命を宣告された少女という、相反する設定を見事なバランスで演じ切り、大きな注目を集めた女優の浜辺美波さん。そんな彼女が、人気マンガを実写化した連続ドラマ「賭ケグルイ」シリーズの劇場版で、最新主演作となる「映画 賭ケグルイ」でさらなる進化を遂げている。

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 ◇どんな役柄でも手の内に入れ、すでに“演技派”という声も

 「キミスイ」で正統派ヒロイン像を強く印象づけた浜辺さんだが、18年1月に連続ドラマとしてスタートした実写版「賭ケグルイ」で、ギャンブル狂で命を削るような勝負では目をむいて“賭け狂う”ヒロイン・蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)役と出会う。

 そのはじけっぷりは「キミスイ」ヒロインと「同一人物か」とファンをうならせるほどの振れ幅で、「キミスイ」と同じ月川翔監督がメガホンをとり、同年に公開された映画「センセイ君主」でも、素直で一生懸命だが、告白7連敗中の女子高生・佐丸あゆはをユーモアたっぷりに演じ、コメディエンヌとしての素質も垣間見せた。特に、劇中で見せる変顔のバリエーションは豊富で、「キミスイ」で見せたはかなげなイメージを吹き飛ばすような威力だった。
 
 この時点で、純粋でみずみずしいパブリックイメージを一掃し、役柄の幅を大きく広げた印象がある浜辺さん。そのほか連続ドラマ「崖っぷちホテル!」(日本テレビ系、18年)では空気の読めない新人パティシエ役を務め、今年3月放送のスペシャルドラマ「大奥 最終章」(フジテレビ系)では権大納言(ごんだいなごん)・清閑寺熈定(せいかんじ・ひろさだ)の娘・竹姫として和服姿を披露するなど、常に大きな注目を集めている。どんな役柄でも手の内に入れる演技は、10代にして、すでに“演技派”という声も多く聞かれるが、「映画 賭ケグルイ」ではその評価を絶対的なものにする存在感を示している。

 ◇「映画 賭ケグルイ」で見せた、あえて「やらない」という選択

 前述したようにドラマ版「賭ケグルイ」や「センセイ君主」での浜辺さんは、清楚(せいそ)でおとなしめなルックスからは想像できない刺激的な“攻め”の演技で視聴者にインパクトを与えたが、今回の「映画 賭ケグルイ」では“キレキレ”の演技を見せる一方で、全体を支配するような重厚さが加わったようにも思える。

 本作は、ギャンブルの勝ち負けでヒエラルキーが決まる学園の生徒会、そんな学園に反旗を翻す集団「ヴィレッジ」、さらに謎の武装集団が、ギャンブルで覇権を争う構成で物語が進む。ドラマ版では、夢子自らが当事者となり物語を転がすストーリーテラー的な役割だったが、今回は個性的なキャラクターが好き勝手やっているのを、プレーヤーでありつつも全体を俯瞰(ふかん)で見る立ち位置として存在。浜辺さんも「今回は結構せりふが少なかった」とドラマ版との変化を述べていた。
 
 メガホンをとったのはドラマ版でも演出を務めた英勉(はなぶさ・つとむ)監督。以前から俳優の自由演技を尊重する監督で、濃いキャラクターが多数登場する本作でも、俳優たちのプランを面白がってくれていたという。浜辺さん自身も「遊べるところは遊びたい」という思いがあったが、作品の構成上、映画版ではあえて「やらない」という選択をしたことも多く、軸としてしっかり立つことを意識したと述懐していた。
 
 こうした浜辺さんの意識によって、他のキャラクターたちは、より際立った。物語のハイライトシーンともいえる福原遥さん演じるヴィレッジ幹部・歩火樹絵里(あるきび・じゅえり)と対峙(たいじ)するシーンでは、ひょう変し感情を爆発させる福原さんの“攻め”の演技に対して、にっこりとほほ笑みながら目線だけで相手を制し、圧倒する。浜辺さんは福原さんの演技を「すごい迫力だった」と話していたが、しっかり受けに回り、ためにためて、最後に“賭け狂って”一蹴する力強さは完全に物語を支配していた。

 ◇受けの芝居での存在感 若手の中では一歩先を進んでいる?

 感情を爆発させ、相手に向かっていく芝居は、受ける役者の技量によって印象が大きく変わる。その意味で、浜辺さんは本作で、受けの芝居での存在感を見せつけた。出来上がった作品を見た際「やらないという選択肢」の大切さを学んだという。自ら能動的に動き、流れを作る主人公というのは、分かりやすい。一方、個性豊かなキャラクターを自由に遊ばせつつも、最終的にすべてを持っていくというのは、相当な力量がないとバランスを崩してしまう。
 
 「映画 賭ケグルイ」は完全オリジナルストーリー。浜辺さんが、こうした難易度の高い立ち位置をしっかり演じ切れるだけの力があるからこその展開にも思えてくる本作。完成披露試写会の際「最も勝負強い人は?」という質問に英監督は「夢子(浜辺さん)」と即答。夢子と共闘する早乙女芽亜里(さおとめ・めあり)を演じる森川葵さんも「周りがどれだけの芝居をしても、最後はキレイに持っていく」と浜辺さんの女優としての存在感を絶賛していた。
 
 共演者からも賞賛される圧倒的な演技を見せているが、浜辺さんはこの春に高校を卒業したばかりの18歳。メインキャストの中では、最年少である。多くの若手俳優がひしめく映像界だが、本作で見せた浜辺さんの存在感と演技力は、一歩先を進んでいると強く実感させられた。次はどんな役柄でどんな演技を見せてくれるのか、興味は尽きない。(磯部正和/フリーライター)

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