直木賞作家・中島京子さんの実体験に基づいた小説の映画化「長いお別れ」(中野量太監督)が、31日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで公開される。認知症の父親と家族の7年間を描くヒューマン作。父親役を山崎努さん、娘たちを蒼井優さん、竹内結子さん、母親役を松原智恵子さんが演じている。変化する父親に戸惑いながらも受け入れて、時間を重ねていく家族の姿が温かい。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
2007年秋、東(ひがし)家の父親・昇平(山崎さん)の70歳の誕生日に、母親・曜子(松原さん)の呼び掛けで、久しぶりに一家4人が集まった。長女の麻里(竹内さん)は、夫の転勤先の米国で暮らしている。次女の芙美(蒼井さん)は、スーパーのお惣菜係として働きながらカフェ経営の夢を温めていた。帰省した娘2人に曜子から、中学校校長も務めた厳格な昇平が認知症になったと告げられ……。
気難しそうな父親が少しずつ変化していくさまを、山崎さんがユーモアも交えて、味わい深い芝居で魅せる。夫を支える松原さんは、時に頼もしく、時に可愛らしい演技で、献身的な愛情を表現している。蒼井さんと竹内さんは、まるで本当の姉妹のような会話劇をリズミカルに交わす。竹内さんの夫役で北村有起哉さん、蒼井さんの恋人役で中村倫也さんが出演している。
認知症を、アメリカでは「Long Goodbye(長いお別れ)」と表現するという。仲のいい家族が父親とお別れしていく長い長い時間がつづられていく。
父親の変化と共に、娘たちそれぞれが生き方に思い悩むエピソードも展開。麻里は米国になじめず、夫と距離ができている。芙美は、恋に仕事にと、自分の道を模索している。2人の人生がどう開けていくのかも見応えがある。
認知症になった昇平が、家族との関係を新たに作っていくさまに明るさもあり、孫に与える影響も見逃せない。家族間の愛情がしっかりと紡がれ、幸福と切なさの両方が垣間見えてくる。
宮沢りえさん主演作「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)で初めて長編映画を手がけ、日本アカデミー賞優秀監督賞などを受賞した中野監督が、初めて小説の映画化に挑み、脚本も手掛けた。主題歌は、石橋凌さんと原田美枝子さんの長女でシンガー・ソングライターの優河(ゆうが)さんの「めぐる」。(キョーコ/フリーライター)
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