ウィル・スミス:「アラジン」のジーニー役 「僕が青くなったと思ったら大成功」

映画「アラジン」にジーニー役で出演したウィル・スミスさん
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映画「アラジン」にジーニー役で出演したウィル・スミスさん

 ディズニーの人気長編アニメーションを実写化した「アラジン」(ガイ・リッチー監督)が、6月7日に公開される。作品のPRのためにこのほど、ランプの魔人・ジーニー役のウィル・スミスさんが15回目の来日を果たし、オンライン媒体の取材に応じた。

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 ◇「ナーバスになった」ジーニー役 

 会見前日に行われたイベントでは、日本のファンから熱烈な歓迎を受けた。スミスさんによると日本のファンの反応は、「世界のどのファンとも違う」といい、「すごくエキサイトして叫んでいたかと思うと、僕が話し始めるとシーンとして(聞き入って)、ものすごくリスペクトしてくれる。その落差がすごい」と驚きを禁じ得ない様子。

 これまでさまざまな役を演じ、多くの作品をヒットに導いてきた。そんなスミスさんでも今回のジーニー役には「ちょっとナーバスになった」と打ち明ける。なぜならジーニーといえば、オリジナル作の「アラジン」(1992年)で、今は亡きロビン・ウィリアムズさんが命を吹き込み、長く愛されてきたキャラクターだからだ。そのためスミスさんは、「ロビン・ウィリアムズが演じたジーニーに対してオマージュをささげる」ことを念頭に置き、その上で、「僕自身の新しいジーニー像を作り上げる」ことを意識したという。

 その「僕自身の新しいジーニー像」を作り上げるためには、「音楽が一番の助けになると分かっていた」とスミスさん。俳優デビューする前はラッパーとして活躍していたスミスさんらしいアプローチだ。そして、音楽を考えていったとき、「自分の中でジーニーというキャラクターが生き生きと存在し始めた」という。

 ◇ヒップホップ黎明期のラップを取り入れ…

 その音楽で真っ先に試したのは、ジーニーが歌う「フレンド・ライク・ミー」だった。魔法の洞窟(どうくつ)の中で、アラジンと初めて会う場面で流れる曲だ。なんでも、ジーニー役を受ける前にスタジオに行き、「ちょっとやってみたのがこの曲だった」そうで、いろいろ試す中で、ヒップホップ黎明(れいめい)期のラップのドラムのリズムを取り入れてみたところ、「まさに自分が望んでいた曲調になった」のだという。そのときレコーディングしたものが、今回の映画ではそのまま使われたそうで、スミスさん自身、お気に入りの曲として挙げていた。ちなみに、参考にしたのはハニードリッパーズによる「インピーチ・ザ・プレジデント」だそうだ。

 洞窟でのシーンには、アニメーション同様、青いジーニーが登場する。それも、巨大サイズのものや、“分身の術”で何人にも分かれたものなど、一体どうやって撮影したのだろうと目を見張るが、「実はあのジーニーは、100%CGなんだ。僕が青くなったと思っている人が多いけど、それだけCGがよくできているということだよね」と、スタッフを労いながら、種明かしもしてくれた。

 ◇アラジンとの化学反応

 アラジン役のメナ・マスードさんについては、「メナはとても真面目な俳優で、ものすごく準備をしてくるんだ。いわゆる、彼なりの“メソッド(方法)”があるんだけど、僕の役目は、もっと楽しもうよ、とそこから彼を解放させることだったよ(笑い)」と振り返る。

 そんなマスードさんとの間に「いい化学反応が起きた」のは、ジーニーとアラジンがアグラバー王国の宮殿を訪れ、国王とジャスミン王女に謁見(えっけん)し、手土産として持参したジャムの話をする場面。「あのシーンでメナは心を開いてくれたと思う。だいたい、こういうバディムービーは、相手がどう出るか、そのへんを探り合いながらやっていくものだけど、すべての俳優がそれをうまくできるわけじゃなく、特殊なスキルが必要なんだ。あのシーンでのメナは、(自分を売り込もうと)必死になっているアラジンをうまく表現していて、僕が演じるジーニーは、アラジンのやり方にフラストレーションを感じている。それがうまくかみ合ったシーンだと思うよ」と分析する。

 ちなみに、実写版になることで、「より深い感情を表現できると思った」ことから、「できるだけ人間っぽさも出す」ことも心掛けたというスミスさん。お陰で今回の「アラジン」は、ジーニーとアラジンの友情関係がより際立った作りになっている。

 ◇スミスさん自身の“かせ”は?

 今作ではまた、王女ジャスミンが、最近のディズニー映画で描かれるプリンセス以上に“強い女性”として描かれているのも特徴だ。そのジャスミン像については現場でもかなり話し合われたという。「今回初めて導入されたアイデアが、ジャスミン自身が父親の跡を継いで国王になり、国を治めたいというものなんだ。本当に強い女性像で、現代的になっていて」、昨今のジェンダー問題とも「うまくリンクしていると思う」とアピール。演じたナオミ・スコットさんもジャスミン像に対して「自分の意見をきちんと持っている女性」だったという。

 ところで、ジーニーは1000年もの間、魔法のランプに閉じこめられていた。いうなれば「囚人」だ。手首には腕輪のような“かせ”がはまっている。一方、演じるスミスさんはこれまでハリウッドスターとしてさまざまな作品をヒットに導いてきたが、そうしたキャリアのお陰で、実は「ウィル・スミスという存在自体」が、自由な振る舞いや言動を制限させ、結果的に「自分らしくできない“かせ”になっていた」と明かす。そしてここ数年は、「その“かせ”から自由になろうとしている」という。

 しかし、今回の会見では、そういった苦労をおくびにも出さず、「参考にしたのはこの曲だよ」と自身のスマホを取り出し曲の一部を聴かせてくれたり、自分のコメントが気に入ると、「今の答えよかったよね(笑い)。他の国の宣伝でも使うからちょっとメモっといて」とスタッフに頼んだりと、相変わらずのちゃめっ気を見せていたスミスさん。

 ジーニーの魅力を「とても献身的で、とにかくご主人様のためになることなら全エネルギーを注ぐ。ああいう人がそばにいてくれたらいいなと思わせてくれ、さらに、自分も彼のように誰かのためになりたいという理想像を抱かせてくれる。愛というものがこういうものだと思わせてくれるところ」と指摘していたが、かく言うスミスさんもまた、ジーニーに劣らず周囲の人に「愛」を与えてくれる人物だった。

 映画は、ダイヤモンドの心を持ちながら本当の自分の居場所を探す貧しい青年アラジン(マスードさん)と、自由に憧れる王女ジャスミン(スコットさん)、そして、三つの願いをかなえることができるランプの魔人ジーニー(スミスさん)が運命の出会いをし、それぞれの願いをかなえようとする姿が描かれていく。

 (取材・文・撮影/りんたいこ)

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