女優の宮崎あおいさんが日本語吹き替え版で声を担当した是枝裕和監督の最新映画「真実」が10月11日に公開される。映画はフランスの国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーブさん)の自伝本の出版をきっかけに、母と娘の間に隠された愛憎渦巻く“真実”があぶり出されていく様を描いた。宮崎さんはファビエンヌの娘リュミールの声を担当している。是枝監督と宮崎さんに、吹き替えの収録エピソードや女優という仕事について聞いた。
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映画は、国民的大女優ファビエンヌが「真実」というタイトルの自伝本を発表したことから、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く“真実”があぶり出されていく……という物語。是枝監督初の国際共同製作作品で、今年度のベネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、オープニング作品として上映された。
洋画の吹き替えに挑戦するのは今作が初めてとなる宮崎さん。作品に携わることには喜びを感じ、「うれしくて『やりたいです』とすぐに伝えました」と話すが、「吹き替えのお仕事はしたことがなかったので、何をどうしたらいいか分からないという……」と戸惑いもあったという。「監督をはじめ、スタッフやキャストの方が心を込めて作った映画に、こういう形で自分が参加して『どうなるんだろう』とプレッシャーはすごくありました」と明かしつつ、「分からないところからスタートするのは、今考えると楽しかったと思います」と振り返る。
細田守監督の劇場版アニメ「おおかみこどもの雨と雪」では主人公・花の声を生き生きと演じた宮崎さん。だが洋画の吹き替えはそれとは異なる感覚があった。「アニメーションの生身の人間ではないものに声を当てるのと、きちんと同じ呼吸をしている人間に声を当てるのでは、こんなに違うんだ、という発見もありました」といい、「ビノシュさんと息を合わせて演技するのが心地よくて、楽しかったです」と声を弾ませる。
そんな宮崎さんへのオファーの決め手は「声」だったという。是枝監督は、「(吹き替え版を)作るならこの人で、と思ったのが(ファビエンヌの声を担当した)宮本信子さんと、宮崎さん。なぜかと言われれば、声が好きだから(笑い)。『おおかみこどもの雨と雪』も見ていて『いいな』と思ったということもあります」と明かす。もちろんそれだけではなく、多彩な顔を持つリュミールの声を担当するには宮崎さんが適任だと思ったという。「リュミールは母の側面、娘の側面、妻の側面……といろんな表情を見せないといけなくて、ある種、ファビエンヌ以上にいろんな顔を見せる。宮崎さんの声なら全部できるな、と思ったんです」と語る。
さまざまな顔を持つリュミールの声を演じるにあたり、どのような準備をしたのか、と宮崎さんに尋ねると、「とにかく(作品を)見ました」という。「声を録(と)るときは、台本を見ながら演技する時間が長くなってしまう。だからビノシュさんがどういう表情をしていたのか、台本を読んでいてもここ(頭の中)にあるようにすることが大事になると思ったので、とにかく何度も見て、映画の空気感のようなものを取り入れるようにしました。できる準備は最善を尽くして挑もう、という気持ちでした」と振り返る。
そんな思いで臨んだ収録本番は、当初の予定より早く終わるほどスムーズに進んだ。是枝監督は「本当は翌日行こうと思っていたんですが『(スタッフに)今日中に終わっちゃいそうです』と言われて、慌ててお昼休みに抜けて、顔を見に行きました。スタッフがみんな『素晴らしい』という顔をしていて、実際に(宮崎さんの収録を)聞いて『すごいな』と思いました」と残りは現場に任せたという。宮崎さんは「気持ちは、自然にお母さんといるときは娘になるし、子供に話しかけるときはお母さんの気持ちになっていたのかな、と思います」と手応えを明かす。
徹底的にストイックでプライドの高いファビエンヌは、劇中の「私は女優なの」というせりふに代表されるように、たびたび「女優」としての矜持(きょうじ)をのぞかせる。「女優」という存在について、是枝監督、宮崎さんはそれぞれどのように考えているのか。女優に必要な、「持っているべきもの」とは? しばらく考えたのち、是枝監督は「“いい耳”を持っているといいのでは。相手のせりふをちゃんと聞ける耳が、大事な気はします」と自身の見解を語る。
宮崎さんは「こうあるべき、みたいなのものはまったく何もないんですが……」と前置きした上で、「自分のことで言うと、きちんと真っ当でいたいな、ということは思っています。人として、自分の思う“真っ当”でいたいと思います」と回答。「やっぱり、役者というのは変わった職業だと思うので。いろんな人に優しくしていただけるし(笑い)。でも、別に自分は何者でもないから……もうちょっと若いころは勘違いしちゃいけないなと思っていたんですが、今はもう自分も年を重ねて、勘違いすることが絶対にないはずなので」と笑顔で語る。
「自分がいて周りの人がいるのではなくて、周りの人がいて自分がいる、という思いがベースにあります」と女優として根底にある思いを吐露する宮崎さん。隣に座る是枝監督は、そんな宮崎さんの姿勢に共感し、「素晴らしい。でも、そういう人だと思っています。だから、また仕事がしたいなとも思うんです」とうれしそうにほほ笑んだ。
*宮崎あおいさんの「崎」は「たつさき」。
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