孤独のグルメ:松重豊“五郎”の一人飯 うまそうに見える三つの理由

松重豊さんの主演ドラマ「孤独のグルメ Season8」第2話の1シーン(C)テレビ東京
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松重豊さんの主演ドラマ「孤独のグルメ Season8」第2話の1シーン(C)テレビ東京

 大食漢の主人公・井之頭(いのがしら)五郎を演じる松重豊さんが、ただひたすら一人でおいしいものを食べ続ける姿を描く連続ドラマ「孤独のグルメ」(テレビ東京系)。シーズンを重ねるごとに好評を博し、現在はついに8シーズン目に突入した。番組に登場する料理は、湯気があがり、今にもおいしそうな匂いが漂ってきそうなものばかりで、視聴者は深夜に食欲を刺激されている。なぜこれほどまでに“うまそうに”見えるのか、ドラマを手がける小松幸敏プロデューサーに聞いた。

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 ◇至福の表情の松重豊

 「孤独のグルメ」は久住昌之さん原作、谷口ジローさん作画の同名グルメマンガをドラマ化。輸入雑貨商を営む五郎が営業先で見つけた食事処にふらりと立ち寄り、1人で食事する姿を描く。2012年1月期に第1弾が放送され、今回のシーズン8は、連続ドラマとしては約1年半ぶりとなる。

 10月4日放送の第1話「神奈川県 横浜中華街の中華釜飯と海老雲呑麺」では、「アヒルのパリパリ揚げ梅ソースつき」が登場した。料理を紹介する場面では、店内のテーブルの上で撮影された料理の映像とともに、「パリッと揚がった皮が絶妙! ダックの脂がしみじみ美味い」といったテロップ、松重さんの声で「食欲をかきむしりたくなる美しき飴色」と紹介された。

 その後、松重さんが「いただきます」とあいさつをして食べていく。松重さんが食べる姿には、「まずはそのまま」「うわ、これはやられた」「お手上げ」「これだけで本日の中華勝負ほぼ勝利確定」「皮がパリパリ。アヒルってことはつまり北京ダックってこと?」といった松重さんの“心の声”があてられていく。

 「今度はソースをつけて」「お。甘い。梅か~。う~んう~ん、なるほど。中華的、梅ジャム的、高級的ソースだな。これはいい」と続き……。至福の表情で松重さんが味わう様子が印象的だ。

 実はこの松重さんの表情は、撮影日の前日夜から、朝食、昼食を抜いて撮影に臨んでいる松重さんにとって、“初の食事”をとった顔なのだ。このときのうまそうに食べる松重さんの表情はリアルそのもの。この表情こそが、うまそうに見えるポイントのひとつといっていいだろう。

 ◇松重豊の“心の声”がさらに彩る

 松重さんのうまそうな表情に加えて、“心の声”にも秘密がある。シーズン5、7、8と参加してきたという小松プロデューサーは、「僕が参加して最初にびっくりしたのは、(撮影)現場に脚本家がいるということ。撮影時に食べた直の感想、プラスアルファ咀嚼(そしゃく)時間を加味して、(脚本家が)“心の声”(モノローグ)を変えていく。そして、食べた後に(その日のうちに)“心の声”を撮るので、こんなことやっているんだとびっくりした」と明かす。

 映像に音声をつける場合、通常であれば、ある程度編集された映像を見ながら、スタジオで音声を収録するというやり方が多いというが、「映像を見ないで、撮影が終わった流れでとるというのはなかなか珍しいスタイル」と話す。以前に松重さん自身も料理を食べる際に「(音声収録のことも考え)頭の中でセリフを言いながら(尺を考えながら)食べている」と語っていた。なかなかライブ感満載だ。

 また、“心の声”には、松重さん自身の感想も盛り込まれるといい、「『おいしかったからちょっと(セリフを)追加したい』とか、現場で話しながら。それも含めた“生感”“ドキュメンタリー感”が出ているのかな」と分析する。

 ◇撮影スタッフが「味」と「うまさ」を知っている

 最後に、番組で取り上げる料理を、撮影するスタッフが“実際に食べている”という点も大きい。「うちの番組でいうと、“現物”を食べている人間がスタッフの中にいっぱいいるので、その味とそのおいしさを知っている。『こうやって撮ってあげたほうがおいしそうに見えるんじゃないか』というアイデアが現場で出てくるからじゃないですかね」と分析。

 通常、バラエティー番組などで料理の撮影をする場合は、“ベッチン”と呼ばれる赤や黒の布を敷いて、小松プロデューサーいわく「『これです!』っていう感じで撮る」という。一方、「孤独のグルメ」では、お店で作ったできたての料理を、実際にお店で使用されている器にのせて、店内のテーブルの上で撮影する。小松プロデューサーは、「そういうの(雰囲気)も含めてうまそうに見えるのかな?」と話す。

 さらに、番組スタッフについて「アットホームな雰囲気がある」と話した小松プロデューサー。「長年のスタッフ、昔からやっている人もいるので、(ドラマ撮影では)年に1回集まる同窓会のような感じ」と表現。「たまに会うからいいみたいな(笑い)。だから仲がいいんでしょうね。そういうのも含めて、アットホームな雰囲気があって、見ていて楽しいとか、ゆったりしている時間なのかなあという気がします」と顔をほころばせた。

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