仮面ライダー:「ゼロワン」脚本家が語る「人工知能」「親と子」「令ジェネ」…AIに善意は宿るのか

映画「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」の脚本家・高橋悠也さん
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映画「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」の脚本家・高橋悠也さん

 特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズの映画最新作「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」が12月21日に公開された。キャッチコピーは「ジオウ。終幕の日。」「ゼロワン、誕生の日。」「決して、交わってはならない」。タイムジャッカーのフィーニス(生駒里奈さん)の歴史改変により、12年前に起きた爆発事故「デイブレイク」以降、ヒューマギア(AIロボ)が人間を支配する世界を舞台に、「仮面ライダーゼロワン」の主人公・或人(高橋文哉さん)は、父でヒューマギアの其雄(山本耕史さん)と出会い、ゼロワン誕生の秘密に迫っていく……というストーリーだ。「ゼロワン」テレビシリーズと同じく映画の脚本を手掛けた高橋悠也さんに話を聞いた。

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 9月に放送がスタートした「仮面ライダーゼロワン」は、“令和初の仮面ライダー”として高い注目を集めている。高橋さんと言えば平成仮面ライダー第18作「仮面ライダーエグゼイド」の脚本家としてファンの間ではおなじみだが、「ゼロワン」を描くにあたって何か特別に意識したことはあったのだろうか?

 「正直言って、僕は仮面ライダーという作品に『エグゼイド』でしか大きく関わってはいないので、そこまで詳しくはないですし、時代が平成から令和に変わったからといって特別、大きく意識をしたつもりはないんです」と明かす高橋さん。一方で「この『ゼロワン』が、この先『令和仮面ライダー』と呼ばれていくであろう作品群のトップバッターであるという意味では、『少し先の我々の未来を描く』ということを意識しました」と話す。

 「仮面ライダーゼロワン」のヒューマギアが人間と同じく(または「成り代わって」)、さまざまな職業に就く時代とは、「少し先の我々の未来」を予見してる。そういった意味でも作品のテーマである「人工知能」は避けて通れない話題だが、高橋さん自身、脚本の執筆にあたって、改めて「人工知能って何だろう?」と考えたといい、またそこには、今回の映画でも描かれている「親と子の関係」も内包されているという。

 「いろいろと学んでいく、ラーニングしていくのが『人工知能』だと思うんですけど、これって子供が大人へと成長していく過程と僕は捉えていて。いわゆる人間の心だとかなんだとかっていうことを生まれたばかりの赤ちゃんは知らないわけで。もちろん遺伝子レベルですり込まれてはいると思うんですけど、人間が人工知能と付き合うのは、親が子供を育てるのに近いのではないかっていう思いがありました」と高橋さん。

 「『ゼロワン』の主人公・或人の場合、祖父がヒューマギアの息子を作り、そのヒューマギアの息子が人間の或人を育てたといういびつな関係がある。そこから生まれるモノの考え、思想が『人工知能』を表現するいろいろなファクターになっていくんじゃないかっていう思いで、“種を蒔(ま)いて”はいます。何かこういうことを伝えたいという明確な意図を持って配置したというより、配置することによって今後、何か生まれるんじゃないかって期待を込めている部分もある。彼らの親子関係を追っていく中で、僕が新たに発見することもあるだろうし、それが個人的にも物語を旅する上での楽しみでもあるのかな」と語ってみせた。

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 古今東西、人工知能=AIロボをテーマにした作品は数々あったが、高橋さんが印象に残っているものに挙げてくれたのが、実は「ドラえもん」。「『人工知能』って言ってしまうと、ちょっと違うと思うんですけど……。ドラえもんってロボットで、しゃべるし、自我もある。『あれは何なんだ?』って(笑い)。ここまで科学が進歩していない時代にあんな猫型ロボットが(フィクションの世界で)生まれて、僕らはそれを普通に見て育ってきた。『ゼロワン』において、ハッキングされて暴走してしまうヒューマギアに悲しみを感じたり、感情移入してしまう人たちの根底には、ドラえもんのような存在を当たり前に見てきたというのがあるんじゃないかって思いますし、僕にとっても(人工知能)は『そばにいてくれる友達』というイメージが強いんです」と意外な影響を明かしてくれた。

 “令和初の仮面ライダー”「仮面ライダーゼロワン」と、映画「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」に話を戻すと、「令和において、原点の仮面ライダー1号を今の時代の文脈で作ってみたのが『ゼロワン』であり、また映画のタイトルが『ザ・ファースト・ジェネレーション』と“ズ”が付かない単数なので、これは『ゼロワン』の映画という意味が込められている」と話す高橋さん。

 また「平成仮面ライダーの『ジオウ』と『交わってはならない』というキャッチコピーは、映画のクライマックスに起因するんですけど、平成に縛られず、過去のしがらみやルールをあまり考えずに『自由に発信していきたい』という思いが僕の中にはあります」といい、「この映画に関して言うならば、いろいろな『1』が出てくる、『ゼロワン』はもちろん『アナザーゼロワン』や『001』、『1型』に『アナザー1号』と、とにかく『1』ぞろい。全て立場と考え方の違う、いろいろな『1』を楽しんでほしい」とアピールしていた。

 今後のテレビシリーズへの期待も込めて、高橋さんには最後に「AIに善意は宿るのか?」も聞いてみた。「僕もそれを『ゼロワン』で見つけたい」という高橋さんは、「僕自身は自分の考えをこの作品で表現しようというつもりは全然なくて。それは『エグゼイド』でもそうだったんですけど、それぞれのキャラクターと付き合っていきながら、見つけたい答えでもあります。人工知能にも善意、また悪意が宿るといったら、多分、宿るとは思うんですけど、しかしそれは誰にとっての、どの立場での善意なのかなって、結局はそこかなって気はしていますね」と結論づけていた。

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