伊藤沙莉:「映像研には手を出すな!」の「浅草氏に共感」 汗だくで効果音収録も

アニメ「映像研には手を出すな!」で浅草みどりの声優を務める伊藤沙莉さん
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アニメ「映像研には手を出すな!」で浅草みどりの声優を務める伊藤沙莉さん

 女子高生がアニメ制作に打ち込む姿を描いたマンガが原作のテレビアニメ「映像研には手を出すな!」が、1月5日深夜にNHK総合でスタートする。主人公の女子高生・浅草みどりの声優を務めるのが、女優の伊藤沙莉さんだ。伊藤さんは、浅草の「何か“衣”をかぶっていないと、勇気が出ない、思いが伝えられないところに共感できるし、寄り添うことができる」と思いを語る。収録現場の様子や、演じる上での思いを聞いた。

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 ◇声優の芝居は「足し算」 浅草氏は「常に何かを演じている」

 「映像研には手を出すな!」は、2016年からマンガ誌「月刊!スピリッツ」(小学館)で連載中の大童澄瞳(おおわら・すみと)さんのマンガ。自分の考えた“最強の世界”で大冒険することが夢の浅草みどり、とにかくお金を生み出す活動が好きな金森さやか、カリスマ読者モデルの水崎ツバメが映像研究同好会を立ち上げ、アニメ制作に打ち込む……というストーリー。アニメは、「夜明け告げるルーのうた」「四畳半神話大系」などの湯浅政明さんが監督を務め、「おそ松さん」などの浅野直之さんがキャラクターデザインを担当。サイエンスSARUが制作する。

 伊藤さんは、2019年に公開された劇場版アニメ「ペット2」の日本語吹き替え版で声優に初挑戦し、テレビアニメで声優を務めるのは、今回の「映像研には手を出すな!」が初めてとなる。声優としての出演が決まった時を「『本当にいいのかな』という感じでした。経験も全然ないですし、特にこの作品はファンの方がたくさんいらっしゃるので、そこを納得させられるのかという不安が常に毎日頭にあるような感覚でした」と振り返る。

 しかし、その不安な気持ちも、収録が始まってからは「とにかく楽しもう」という思いに変わった。

 「常に金森役の田村(睦心)さんと水崎役の松岡(美里)さんと3人で一緒にやらせていただいているんですけど、その2人がすごく優しく教えてくださる。生で近くで声を聞いて収録できているので、『一緒にやっているんだ』という感覚になってきて、作品の内容も含めて、すごく楽しい気持ちにどんどんなってきました。遠慮とか、3歩も5歩も引いている感じじゃないなと思って、今はとにかく楽しもうと思ってやっています」

 自身が演じる浅草に共感する部分も多く、「演じていて楽しい」と伊藤さん。

 「浅草氏は、マンガを読んでいても、映像を見ていても、とにかく可愛いなと思います。童心のまま仕事をしている方はたくさんいらっしゃいますが、その一人というか。そういう人たちは、プロ意識もすごい。浅草氏は、可愛い部分がありながら、お仕事(アニメのこと)になると、すごく格好よくて、熱い気持ち、情熱を持っている子なので、そのギャップは演じていて、すごく楽しいです」

 伊藤さんは、浅草を演じる上で「いつも何かを演じている」ようにとディレクションを受けるという。

 「コミュ障ということもあって、何かの“衣”をかぶっていないと、ちょっと勇気が出なかったり、思いが伝えられないという部分は、すごく共感するところ。自分の中でも普通に伝えると、強く聞こえてしまうから、ちょっと砕けた言い方をしたり、あえて変な言い方をすることがある。そういう部分では、浅草氏に寄り添うことができる」

 続けて伊藤さんは、女優としての芝居を「引き算」、アニメの声優の芝居を「足し算」と説明する。

 「いつもやっているお芝居に関しては、基本的には引き算でやらせていただいていて、最初に自分のプランをぶつけて、そこから削っていく方が監督が求めている正解への近道だったりするんです。アニメに関しては、本当に足し算だなと。『これは大げさだろう』と思っていることが、意外とOKが出るんです。出来上がった映像を見ても、それがすごくちょうどよかったりして。それはきっと伝えられるすべが声しかないから。浅草氏たちはすごくリアルを追求しているんですけど、アニメだからできる非現実を表現することに関しては、リアルだけじゃ伝わらない部分はきっとたくさんあって、私たちも常に声も張るし、自分が思っているより一個上でやったりしています」

 ◇SEにこだわり 「耳も楽しい」作品に

 「映像研には手を出すな!」には、映像研の面々が思い描くアニメの世界に実際に入り込むような空想のシーンが登場する。空想シーンでは、「タタタタッ……」という足音や「ガシャーン!」といった効果音(SE)は、声優陣の声で表現されている。

 「SEを全て私たちの声でやらせてくださっているからこそ、それが空想の世界だということが、見ている方も徐々に分かっていく。妄想だから、自分たちの中で鳴っている音だったり、自分たちがこういう音を付けたいという思いがあって、彼女たちの中では、絵を描きながら、すでにその絵が動き出している。マンガには、原作者の大童さんの独特の擬音がすごく書いてあって、それを音にするのが難しくもあり、毎回すごく楽しいです。SE入れている時が、毎回一番汗をかくんですよ。耳も楽しいという部分に注目していただきたいですね」

 SEについては、第1話の収録の際に、湯浅監督、原作者の大童さんがブースに立ち、実演をして見せたという。

 「大童さんは、かなり本格的な音を出されていて、風の音にしてもどこを使って音を出しているんだろうと思うぐらいで。最初は何が正解かも分からず、恐る恐るやっていました。でも、やっていくうちに、自分が小さい頃にお兄ちゃんとプラモデルで遊んでいた時に『ヒューン』『プシュー』となりきって音を出していたことを思い出して、そういうことでいいのかもと。そう思ったら楽しくなってきました」

 ◇映像研の3人の「グルーブがすごく心地いい」

 映像研の浅草、金森、水崎の3人の関係性について、伊藤さんは「ものづくりをする上で、すごくいいバランス」と表現する。アニメのPVでは、浅草が監督、金森がプロデューサー、水崎がアニメーターとして紹介されており、「本当にその役割をやっている」と説明する。

 「映像研は、部活とはいえ、お仕事みたいなことをやっているので、この関係性で、このキャラクターや性格だからこそ、前に前に進んでいけるんだなということは常に思います。このグルーブがすごく心地いいです」

 映像研の3人を演じる伊藤さんらキャストの絆も収録を通して深まっているという。台本では、専門用語も多いため、毎回収録前にイントネーションやアクセントについて話し合うことも多いそうだ。

 「収録の合間で、『今すっごい映像研だったな!』という時があるんです。冷静に田村さんが突っ込んでくれたりすると『金森氏!』みたいになったりしますね。アニメの中でものづくりをしていて、それを前にして私たちも、ものづくりをしているというこの世界が、毎回幸せだなと思います」

 浅草ら映像研が情熱を持ってアニメを作るように、スタッフ、キャストのこだわりや工夫が詰まったテレビアニメ「映像研には手を出すな!」。伊藤さんが演じる浅草たちの活躍に注目だ。

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