中国の三国時代を舞台に名将たちの人間ドラマを描いた「三国志」。日本でも昔から親しまれているが、普及のきっかけになったのがコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム「三國志」だろう。今年35周年を迎える人気シリーズだが、“生みの親”のシブサワ・コウさんは、守り続けてきたものがあると明かす。最新作「三國志14」の発売を前に、シブサワ・コウさんに、「三國志」誕生の裏側や二つの「守り続けてきたもの」を聞いた。
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「三國志」は、劉備や曹操、孫権、関羽や張飛といった英傑、武将たちを仲間にしながら天下統一を目指す歴史シミュレーションゲームだ。1985年の第1作発売以来、さまざまな要素を追加しながら新作を発売。1月16日には4年ぶりの新作となる「三國志14」が発売される。
「川中島の合戦」(1981年)、「信長の野望」(1983年制作)といった歴史シミュレーションゲームのヒットを受け、新作ゲームの舞台として採用されたのが中国の三国時代だった。吉川英治の小説や横山光輝のマンガに加え、NHKで放送された「人形劇 三国志」の存在も大きかったと明かす。
「『川中島~』は戦い、『信長~』は国盗(と)りがテーマでしたが、『三國志』がテーマにしたのは武将たちが織りなすドラマでした」と明かすシブサワさん。「信長の野望」までは配下武将が存在しなかったが、「三國志」では武力や知力などの能力が異なる武将を200人以上収録。「信長の野望」の開発期間は2人で2、3カ月だったが、「三國志」は、武将のステータスから顔のグラフィックまで制作したため、開発時間は1年以上、十数人のスタッフが関わったという。
「信長の野望」と並んで同社の看板タイトルとなった「三國志」だが、「信長の野望」にない「三國志」ならではの特徴について、シブサワさんは「ファンタジー要素」だと語る。「火計」や「計略」といった戦争でのコマンドや、武将の引き抜きや「駆虎呑狼の計」などの策略も「三國志」ならではのギミックだ。
35年もの長期にわたって新作をリリースしてきた。絶対に守っていることや心がけていることを聞いてみると、シブサワさんからは、「武将たちが織りなす三国志のストーリー」という答えとともに、もう一つちょっと意外な答えが返ってきた。「『武将の顔』ですね。武将のイメージを崩さないことを一番に考えています」。技術が進むにつれて、武将のグラフィックもより高精細なものになってきたが、CGに割くリソースが一番大きく、力も入れているという。「関羽や張飛といった、CG部がずっと作り上げてきた武将のイメージは今や世界共通のイメージになってきている。『三國志』には“(三国志)オフィシャル感”があるんです」
コーエーテクモゲームスは、これまでに「三國志」「信長の野望」以外にも、ジンギスカンを描いた「蒼き狼と白き牝鹿」、ナポレオン戦争の「ランペルール」など数多くの名作歴史ゲームをリリースしてきた。69歳となったシブサワさんだが、「信長の野望」シリーズや、アクションゲーム「仁王」など、現在も数々のプロジェクトに関わっている。記者が「三國志」「信長の野望」以外で「個人的に作りたい歴史ゲーム」を聞いてみると、幕末が舞台の「維新の嵐」の名前が飛び出した。一方、「三國志14」にも採用され、セールスポイントにもなっているAIにも強い魅力を感じているという。他社のゲームも含めて幅広く遊んでいるといい、すさまじいバイタリティーには脱帽の一言だ。
三国志での好きな武将は(諸葛亮)孔明だと明かすシブサワさん。「劉備に忠を尽くし、息子の劉禅に代替わりしてからも、裏切ることもなく、最後まで忠を尽くした。ヒーロー中のヒーローですよね」と話す。「でも最近は、(蜀の老将)黄忠も好きなんですよ」と話す69歳の現役ゲームクリエーターは、いたずらっぽい笑顔を見せていた。
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