東京ラブストーリー:令和版としてアップデート? 赤名リカの設定、“すれ違い”を平成版と比較 あのせりふは…

「東京ラブストーリー」のワンシーン(C)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン
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「東京ラブストーリー」のワンシーン(C)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン

 俳優の伊藤健太郎さんや女優の石橋静河さんらの出演で、約29年ぶりに再ドラマ化された「東京ラブストーリー」の配信がスタートした。SNSでは視聴者から「ちゃんと令和版にアップデートされている!」「令和版としてフィットしている!」「東京ラブストーリーは色あせない」といった声が上がっている。女優の鈴木保奈美さんと俳優の織田裕二さんが共演し、1991(平成3)年1月期にフジテレビの“月9”ドラマとして放送された“平成版”から、今回の“令和版”がどのようにアップデートされているのか探ってみた。

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 ◇赤名リカの設定が帰国子女から渋谷区出身“生粋の東京人”に

 原作は「家族の食卓」「あすなろ白書」を手掛けた柴門ふみさんのマンガ。自由気ままに生き、恋愛にまっすぐな赤名リカ、リカに好意を寄せられる永尾完治(カンチ)、完治の高校の同級生・三上健一、同じく完治の高校の同級生で完治が思いを寄せる関口さとみ、三上の大学の同級生・長崎尚子らが織りなすラブストーリーだ。

 いわゆる“平成版”は、リカを鈴木さん、完治を織田さん、三上を江口洋介さん、さとみを有森也実さん、尚子を千堂あきほさんが演じた。放送当時の期間平均視聴率は22.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、最終回には番組最高となる32.9%(同)の高視聴率をマークするなど、当時は「月曜の夜は街からOLが消える」と言われたほどの人気を博した。小田和正さんの歌う主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」も人気を集め、「月9の主題歌はヒットする」という代表例となった。

 一方の令和版では、リカを石橋さん、完治を伊藤さん、三上を清原翔さん、さとみを石井杏奈さん、尚子を高田里穂さんがそれぞれ演じている。

 平成版での完治とリカはスポーツ用品メーカーで働いているという設定だったが、令和版は原作と同様、広告代理店が舞台となっている。リカは、帰国子女という設定から、東京都渋谷区出身、幼稚園からエスカレーター式の私立校出身で大学まで進学した生粋の東京人に変わったのだが、興味を持った完治を振り回すなど自由気ままな姿は変わっていない。

 ◇大きく異なった完治とリカの出会い

 完治とリカが出会うシーンは平成版と令和版で大きく異なった。平成版は、愛媛から上京してきた完治が羽田空港(東京国際空港)に降り立つところから始まり、到着ロビーにはリカが迎えに来ていた。携帯電話が普及する前の時代ということもあり、リカは完治の名前が書かれた紙を両手で掲げ、周囲の目も気にせず「カンチ!ナガオカンチ!」と大声で叫んで、完治と出会う。一方の令和版では、そもそもリカが空港に来ない。空港からリムジンバスに乗った完治はリカに到着した旨を電話で伝えようとするが、リカは電話にも出ない。

 初対面の時の二人の会話の違いもユニークだ。平成版では、上京してきて不安そうな完治に、リカが「8月31日の小学生みたい。何か東京にいやなことでもあるの?」と突っ込む。「やっぱ不安ですよ。愛媛から一人で出てきて、東京で何があるか分からないし」と話す完治に「何が起きるか分からないから元気が出るんじゃない。大丈夫。笑って笑って」と話し「今、このときのために、今までのいろいろなことがあったんだって。そんなふうに思えるように。だからね、(胸に手を当てながら)バッジ付けて。その日その日の思い出をピカピカのバッジにして胸に貼って歩いて行くの。ね?」と、どこかロマンチックな言葉で完治を励ます。このリカの言葉に対して完治は「1学期の終業式の小学生みたい(笑い)」と軽妙な返しとともに元気を取り戻す。

 令和版は、羽田空港に到着すると、上司の指示通りリカに電話した生真面目な性格の完治に対し、リカは「白いご飯みたいって言われたことない? あと、電子レンジで何かを温めるとき、その場でじっと待っているタイプでしょ」と上から目線で言い放ち、完治はあっけにとられるのだ。

 ◇スマホ時代の“すれ違い”とは…

 「東京ラブストーリー」といえば、携帯電話がなく、連絡が取れない、会えないといった“すれ違い”がもどかしい恋愛模様をイメージする人が多いだろう。しかし、令和版はスマートフォンやLINEを駆使し、連絡をバンバン取り合うのだ。

 一方、スマホ時代の令和版ならではの“すれ違い”の差が面白く描かれたシーンが第1話にあった。さとみに「俺と付き合ってくれないかな」と告白した完治だが、後日、暗い表情のさとみを前にして「この前の話なんだけど。あれ、気にしないで。あの日、けっこう酔っ払ってたみたいでさ。変なこと言って悪かったなと思っていたんだよね」「関口のことも三上のことも大切な友達だと思っている。その関係をこれからも大切にしたいというか……。だから、困らせて本当にごめん」と先手を打つ形で告白をキャンセルするのだ。相手との距離感が変わったり、衝突したりすることを忌避するとも言われがちなスマホ時代ならではの“すれ違い”となっている。

 その後、完治はリカに「撃沈しました」というメッセージを送り、「土壇場でおじけづいて逃げた」「自分でも情けなくなりますよ」と告げる。一方のさとみは三上に「ふられちゃった。『告白したこと、なかったことにしてくれ』って」と伝え、三上との関係性を深めていく。

 平成版は、物理的な“すれ違い”が多くの視聴者をハラハラさせた。令和版では、“空気を読む”のが上手な現代の若者たちならではの“心のすれ違い”が繊細に描かれてる印象だ。また、平成版で大きな反響を呼んだ、リカの「セックスしよ」という名ぜりふも飛び出すなど、当時、夢中となった人も楽しめる構成になっている。SNSでも「令和版もめちゃめちゃキュンキュンする」「だんだんドハマりしてくる」といった声も上がっている。

 令和版の「東京ラブストーリー」はフジテレビの動画配信サービス「FOD」と「Amazon Prime Video」で配信されている。また、平成版も配信されているので、かつてのファンは当時を思い出しつつ、令和版と見比べることもできる。

 5月6日午前0時に配信される令和版の第3話では、完治とリカは一夜を共にしたが、朝起きるとリカの姿はなかった。どんな顔をしてリカに会えばいいのか分からず出社する完治だったが、無神経な一言でリカを怒らせてしまう……という展開。今後も令和版ならではの“すれ違い”が描かれていく「東京ラブストーリー」に注目だ。

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