織田裕二:カンチ、青島俊作、甲斐正午…当たり役で振り返るキャリア33年 唯一無二の魅力に迫る

織田裕二さん
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織田裕二さん

 フジテレビ系“月9”ドラマ「SUITS/スーツ2」(月曜午後9時)で負け知らずの敏腕弁護士・甲斐正午を好演している織田裕二さん。織田さんといえば、1991年1月期放送の「東京ラブストーリー」の永尾完治(カンチ)、大ヒットシリーズ「踊る大捜査線」(同系)の青島俊作、そして今作の甲斐など、どこか愛嬌(あいきょう)がにじみ出ているキャラクターを演じ、唯一無二の存在感を放っている。キャリア33年となった織田さんの魅力を探ってみる。

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 ◇東京ラブストーリーで大ブレーク 「湘南爆走族」で3色メッシュのヤンキーも

 織田さんは1967年12月13日生まれ、52歳。神奈川県出身。1987年に映画デビュー作となる「湘南爆走族」で、金、赤、黒という3色メッシュが特徴的なヘアスタイルの湘南爆走族親衛隊長・石川晃を熱演し、“ヤンキーブーム”の当時の若者たちを熱狂させた。その後、1989年に放送されたTBS系の連続ドラマ「ママハハ・ブギ」、翌年に同系で放送された「予備校ブギ」などにも出演した。

 23歳のときに「東京ラブストーリー」で赤名リカ役の鈴木保奈美さんと共に主演を務めた。織田さんはインタビューで、当時について「女性が主役のドラマが多かった。若い男が主人公のドラマなんて『はあ?』って言われる時代でした」と振り返っていた。しかし、同級生の関口さとみ(有森也実さん)に恋心を抱きつつ、同僚のリカに振り回されるという恋愛に不慣れな完治を演じきり大ブレーク。同作は期間平均視聴率22.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、第11話では同作の最高視聴率32.3%をマーク。「月曜の夜は街からOLが消える」と言われたほどの人気作となった。同じインタビューで織田さんは「ああいう成績(視聴率)を収められた」ことに胸をなで下ろしたと語っていた。

 ◇「踊る大捜査線」で不動の人気を獲得

 その後、織田さんはフジテレビ系で放送された「振り返れば奴がいる」「素晴らしきかな人生」「お金がない!」「正義は勝つ」、TBS系の「真昼の月」などに出演。そして、30歳を迎えた織田さんにまた一つ大きな転機が訪れた。それが、1997年1月期放送の「踊る大捜査線」で演じた青島だ。

 “脱サラ”して警察官に転職し、交番勤務を経て念願の刑事課勤務となった青島が、湾岸署の和久平八郎(いかりや長介さん)、恩田すみれ(深津絵里さん)ら個性豊かな仲間たちと身近な事件から凶悪犯罪までを解決する姿を軸にしたストーリーが展開。警察を会社組織に置き換えた作風で、署内の権力争いや「本店(警視庁)」と「支店(所轄署)」との駆け引きを浮き彫りにした演出などが功を奏し、スペシャルドラマや劇場版のほか、数々のスピンオフ作品が誕生。さらに青島が着たモスグリーンのロングコートが流行するなど社会現象も起こした作品となった。

 テレビドラマで見かけるような理想の刑事像を胸に抱きつつも、理想とは大きくかけ離れたさえない仕事をしつつ、上司となる和久や室井慎次(柳葉敏郎さん)にすり寄ったり、たてついたりするなど青島の“青臭い”部分を、織田さんは時にユニークに、時に熱い演技で表現して視聴者を夢中にさせた。青島が発した「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!」などの名ぜりふと共に、青島はいまでも多くのファンに愛されるキャラクターで、織田さんの人気は不動のものとなった。

 ◇「世界陸上」メインキャスターでは少年のよう 共通点を感じる役も

 そんな織田さんだが、俳優と並行して、1997年からTBS系の「世界陸上」のメインキャスターを12大会連続で務めている。選手に関するデータや知識はとても豊富で、目を輝かせながら選手たちの活躍に一喜一憂して興奮を伝える織田さんは、ドラマで見せる姿とは違い、まるで少年のようだ。また、バラエティー番組でクイズなどに挑戦する織田さんの姿からは、常に真剣で真面目な性格がうかがえる。

 そんな織田さん自身のキャラクターと共通点を感じる役が近年では2作品ある。一つは2016年に主演したTBS系の「IQ246~華麗なる事件簿~」で難事件を解決するのが生きがいのIQ246の天才貴族・法門寺沙羅駆(ほうもんじ・しゃらく)だ。高い頭脳で多額のお金を稼ぎ、裕福な生活をしているが、そのことに退屈して自分が「解くに値する謎」を求めているという、偏屈ながら事件の解明に没頭するひたむきな姿には、どこか織田さんの純粋さがにじみ出ているように見えた。

 もう一つが、2018年から放送されている「SUITS/スーツ」シリーズの甲斐だ。同作は米人気ドラマ「SUITS」が原作で、織田さんにとって地上波主演連続ドラマで初めて続編シリーズが制作された作品でもある。大人の男として“完全記憶能力”を持つ鈴木大輔(大貴、中島裕翔さん)に接する甲斐だが、節々で見せる負けず嫌いな性格や勝利にこだわる姿は少年のように真っすぐだ。

 もちろん、織田さんのキャリアの中には、1993年にフジテレビ系で放送された人気ドラマ「振り返れば奴がいる」で演じた“ダークヒーロー”司馬江太郎や、2011年に同局で放送の連続ドラマ「外交官 黒田康作」で演じた黒田康作など、視聴者に大きなインパクトを与えた役がたくさんある。さらに、“骨太ドラマ”として定評があるWOWOWの連続ドラマ枠で放送された「株価暴落」、「野崎修平」シリーズ、また、余命半年の主人公を演じた映画「ボクの妻と結婚してください。」など、40代に突入してからの織田さんは、重厚なテーマを持つ作品で幅広いキャラクターを演じてきた。

 その中でも、恋愛に不慣れなカンチ、青臭い部分がある青島、少年のように真っすぐな甲斐といった織田さんが演じてきたキャラクターたちには格別の魅力を感じる。どのキャラクターも、かっこいいだけでも、コミカルだけでもない重層的かつ親しみやすい役どころだ。織田さん自身の真面目な性格と、好きなことに夢中になる部分が役に投影されており、それが視聴者を楽しませ、また視聴者からも愛されているのかもしれない。

 「SUITS/スーツ2」は現在、第2話まで放送され、新型コロナウイルス感染拡大の影響で撮影や編集スケジュールに影響が出ているため、放送が延期されているが再開が待ち遠しいところ。また、フジテレビの動画配信サービス「FOD」と「Amazon Prime Video」では、織田さんが出演した「東京ラブストーリー」が配信中。“カンチ時代”の織田さんのみずみずしい演技を見直してみるのもいいかもしれない。

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