海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
声優の梶裕貴さんが、5月18日にスタートするWOWOWオリジナルドラマ「ぴぷる~AIと結婚生活はじめました~」で実写の連続ドラマで初主演を果たす。近未来を舞台に人間とAI(人工知能)の結婚生活を描く同ドラマで梶さんが演じるのは、AIと結婚する摘木(つみき)健一だ。“イキリオタク”気質で生身の人間とのコミュニケーションが苦手なアラサー男子という役どころ。今作の撮影を終え、「声優という仕事が自分にとってどういったものなのか、改めて感じる機会になった」と“ホームグラウンド”への思いを明かす梶さんに、連ドラ初主演の感想や声優への思いを聞いた。
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ドラマは原田まりるさんの小説「ぴぷる」が原作。「ぴぷる」は、雑誌「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)2018年11月号~2019年3月号で連載された。人間とAIが結婚できるようになった近未来を舞台に、サラリーマンの摘木と、その妻となった人型AIのぴぷるの恋愛や結婚生活を描く。小説と連動したウェブドラマ「耳で楽しむ小説『ぴぷる』」も連載と同時に展開され、アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「君の名は。」などの田中将賀さんがキャラクターデザインを手掛け、梶さんが摘木の声優を務めたことも話題となった。
今作が、初の実写連続ドラマ主演となる梶さんは「映像におけるお芝居の経験値が(共演者より)圧倒的に少ない中で、役どころとして、作品の軸にならなくてはいけないことへのハードルは感じていました」と撮影前の心境を吐露しつつ、「でも、実際にクランクインしてみれば、本当にいいチームで。助ける、助けられる、という感覚ではなく、みんなが常に同じ方向を向いて作品づくりをさせていただけていたなと思います」と振り返る。
演じる摘木は、“イキリオタク”気質で生身の人間とのコミュニケーションが苦手なアラサー男子。副業として、アプリで登録すれば誰でも持てるラジオ番組のパーソナリティーをしているという人物だ。梶さんは思わず強がってしまったり、男性としての自信が持てなくなったりしてしまう摘木について「情けなかったり醜くすら見えてしまう部分もあるかもしれない、恥ずかしいヤツだなという第一印象のキャラクターではありますが……(笑い)、実はほとんどの男性が、どこかしら共感できる部分を持っている人物だと思います」と説明し、「そういう人間らしい部分がある人ほど、演じていて楽しい」と役への思いを明かす。
実写での演技とアニメなどでの声の演技の違いについて、今回、改めて感じたこともあったという。「たとえばアニメであれば、画面の中ですでに絵がお芝居をしてくれている中で、自分のお芝居をどこまでデフォルメするか、といった専門的なテクニックが必要とされるわけですが……そんな声優のお芝居と違い、今回はすべて自分で演じられる。声を発さずとも、目線だったり少しの表情変化だったりで感情を伝えることができる。そういった意味では、まったく別物だなとも感じましたね」と語る。
また、普段は武器にしている“声”の芝居だが、今回はその個性をできるだけ削ることを意識した。「自分にとって声のお芝居は、今まで必死に積み上げてきたものであり、武器だと思いますが、摘木が声優という職業ではない以上、視聴者にとって余計な情報として引っかかる部分になってほしくはないな、という思いがありました。消そうと思っても個性として残ってしまう部分でしょうから、ある程度は仕方ないとして、それをどこまで削って、それ以外の部分で役を表現できるかな、と。見ていて違和感のない自然さは意識はしました」と明かす。
実写の連ドラ初主演を果たした今回、声優業と同時進行での撮影を終え、改めて実感したことがあるという。「声の現場は、自分にとってのホームですし、経験値やネットワークもあるので、すごく安心します。映像や舞台の現場から帰ってくると、『自由だな、ここでだったらなんでもできる』という感覚にすらなりました(笑い)。声優という仕事が自分にとってどういったものなのか、改めて感じる機会にもなりました」と声優業への思いを明かす。
「アフレコスタジオにマイクが立っていて、そこに声優が集まり、みんなで一緒に収録する、という環境で育ってきたんです。『こんな場面では、こういうテクニックを使って、こういった表現をすれば、完成したときにはこう聞こえるはずだ』ということが分かっているので、そういう面での安心感や、声優としての表現への愛みたいなものがあるんだなと気づきました」
実写での俳優業を含め、すべての活動は、声優としてのステップアップにつながる、と梶さんは考えている。「どんな仕事にも、『どれだけ声のお仕事にフィードバックできるか』を考えて向き合っています。ありがたいことに、最近いろいろなことに挑戦させていただける機会があります。そこで感じたことや得たことのすべてを、声優としてのステップアップにつなげていけたら。普段はなかなか経験できないことにトライさせていただけている中で、『もっと自分の武器を増やしていけたら』という思いがありますね」と語る。
現在34歳。今作の舞台となる2030年には、44歳になっている。大人気声優として活躍する梶さんは、10年後、どんな自分の姿を思い描いているのか。「14歳のときに声優を目指し始め、そこからの10年は、いわゆる下積み期間。悔しく歯がゆい思いをしたり、役者としての居場所すらなかったり。そういった時間の中で、少しずつ認知していただいて、役をつかんで……、一つ一つ階段を上ってきたなと感じています」としみじみ語る。
そして10年前、24歳からの歳月を振り返り、「24歳から34歳の10年は、本当に大きかったですね。とにかくがむしゃらにやってきました。でも、そんな濃さがあるからこそ、この10年間で起こった変化を、プラスなこととして受け入れられているんです。同じように、34歳から44歳の10年間も、自分にとってプラスだったな、と思えるような時間にしたいですね」と前向きに思いを語った。
「ぴぷる~AIと結婚生活はじめました~」は、5月18日から毎週月曜深夜0時に放送。全8話で初回は2話連続放送(第1話のみ無料放送)。
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