ゲゲゲの鬼太郎:朝から「攻めた」第6期 ギャラクシー賞で評価された原点回帰、普遍性

アニメ マンガ
「ゲゲゲの鬼太郎」第6期の一場面(C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

 水木しげるさんのマンガが原作のテレビアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(フジテレビ)第6期が、放送文化の向上に貢献した番組や個人・団体を表彰する「第57回ギャラクシー賞」(放送批評懇談会)のテレビ部門特別賞に選ばれたことが話題になっている。ギャラクシー賞は、放送批評懇談会が日本の放送文化の質的な向上を願い、優秀番組・個人・団体を表彰するために1963年に創設。テレビアニメがテレビ部門特別賞に選ばれるのは初めてだ。「ゲゲゲの鬼太郎」第6期は、2018年4月~2020年3月の毎週日曜午前9時に放送され、ブラック企業、SNS依存、移民問題など現代ならではの問題をシニカルに描いた。アニメを手がけたフジテレビの狩野雄太プロデューサー、東映アニメーションの永富大地プロデューサーに第6期の挑戦を振り返ってもらった。

 ◇水木イズム、人生哲学を意識

 「ゲゲゲの鬼太郎」は、主人公の鬼太郎が、ねずみ男、砂かけばばあら個性的な仲間の妖怪たちとさまざまな事件に立ち向かうマンガ。1968~69年にテレビアニメ第1期が放送され、以後半世紀以上にわたって愛され続けてきた人気作だ。第6期は、沢城みゆきさんが鬼太郎、第1期などで鬼太郎を演じた野沢雅子さんが、父の目玉おやじの声優を務め、モデル体形の美女となったねこ娘も人気を集めた。

 放送批評懇談会が発表したギャラクシー賞の受賞理由の中に「新たなサブキャラクターの登場や、主人公たちの設定の見直しなど、原作を現代社会に合わせる表現上のさまざまな工夫も素晴らしく、なによりも登場する妖怪たちの基本設定は原作そのまま。社会や時代は変わっても、人間社会が抱えている闇や怖さは、水木しげる原作時代と同じ、普遍的なのだということを教えてくれました」とあった。第6期は、スレンダーなねこ娘など新しさ、現代ならではのテーマが注目されがちではあるが、水木作品の普遍的な魅力を再認識させられるところもあった。永富プロデューサーは「原点回帰を目指していた」と話す。

 「水木イズム、人生哲学を意識していました。第6期は、原作にある鬼太郎の人間に対するシニカルな目線、愛情に寄せようとしたところもあります。原作や1968~69年放送のテレビアニメ第1期を知っている世代からすると、見た目は新しいけど、原作や第1期に近いと感じるかもしれません」

 水木さんは著書「水木サンの幸福論」で「幸福の7か条」という言葉を残している。「成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない」「目に見えない世界を信じる」などの言葉は時代が変わっても色あせない。

 「幸福の7か条、のんのんばあの見えない世界の話、それに戦争体験、とんでもない貧乏な経験……、その経験に醸成された言葉は含蓄があります。第6期は、そこを意識したし、シリーズディレクターの小川孝治もシナリオに反映しようとしました。そこが評価されたのかもしれません」

 ◇時間帯に合わせた内容より原作の作品性を大切に

 放送批評懇談会が発表した受賞理由の中には「日曜の朝にターゲットである子供たちに向けて丁寧にメッセージを送ることに徹底して作られています。それが多くの人たちの共感を呼ぶ。テレビアニメのあるべき仕事だといえます」ともあった。第6期は、ブラック企業、SNS依存、移民問題などをテーマに人間のエゴを生々しく描いたエピソードもあり、子供だけでなく大人も楽しめる内容だった。狩野プロデューサーは「子供は、逆に子供っぽいものをあまり見ない」という思いがあった。

 「お子さんも5歳くらいになると、背伸びをしたくなりますし、ターゲットに合わせて子供っぽいものを作ろうとは思っていなかった。働き方改革を話題にしたりして、お子さんがあまり分からなくても、親子で会話するきっかけになったり、誰かと話したり、議論するストーリーにしたかった」

 あまりにも生々しく「日曜の朝のアニメにしては攻めすぎ」「重い」と感じることもあったが、狩野プロデューサーは「日曜の朝だから明るく快活にではなく、怖くて震え上がるような内容を意識していました。また、時間帯に合わせた内容よりも、原作の作品性を大事にしたかった」と話す。視聴者にもその気概が伝わったのか「お叱りの声はあまりなかったですよ。朝で日の光が入るから、黒いと画面が反射して見えづらい……くらいでしょうか」と明かす。

 永富プロデューサーも「フルスイングができた」と自信を見せる。

 「狩野さんから最初に『守りに入って中途半端なものをしないでほしい』というお話をしていただけた。テレビでアニメを制作、放送するのは、そのテレビ局の姿勢が大きく影響しますが、第6期は狩野さんに地ならしをしていただけた。いろいろなところで戦っていて、大変だったと思います。ありがたかったですね。東映アニメーションとしても中途半端に作るのではなく、最初からフルスイングできました。鬼太郎の魅力を伝えるために。これをやると怒られる……と勝手に幅を縮めるのではなく、表現の幅や物語を攻めることができた。子供が見ても大人が見ても面白いのが最高のエンターテインメント。そういうものになったと思います」

 ◇第7期は? これまでは10年スパンだったが…

 第6期は2007~09年に放送された第5期以来、約9年ぶりの新作となった。第6期が終わったばかりで、気が早いかもしれないが、「また鬼太郎を見たい」という声もある。

 狩野プロデューサー「おそらく、これまでも決まっていたわけではないのですが、なぜか10年スパンくらいで新作が放送されてきました。10年後……、どうなんでしょうね。世の中が鬼太郎を必要とする流れの中で放送されるのかもしれません。第6期の放送終了後も既に社会ではいろいろなことが起きて、こんなことが起きるんだ!と驚くことがあります。ねずみ男がいたら、笑われるだろうな……」と話す。

 永富プロデューサーも「ここ数カ月は人間の悪い部分、愚かさが見えることもありました。鬼太郎なら……と考えることもありました。新作については何も決まっていないんですけどね」とうなずく。

 いつの時代も人間の心の闇、社会のひずみが無くなるわけではない。第6期は終わったが、またカランコロンと鬼太郎のゲタの音が聞こえてくるかもしれない。

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