名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
中国で人気の劇場版アニメ「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」の日本語吹き替え版「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」が11月7日に公開される。日本語吹き替え版で植物を操る妖精・フーシーを演じたのが、人気声優の櫻井孝宏さんだ。人間と妖精が生きている世界で、人間を嫌い、妖精たちの世界を取り戻そうと暗躍するフーシーに対し、櫻井さんは「彼を悪だとは思わないし、悪者に見えるようにはしたくなかった」と思いを語る。さらに、本作が「初心にかえるきっかけになった」と感じているという。フーシーへの思い、演技のこだわりを聞いた。
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「羅小黒戦記」は、中国のアニメーターでアニメ監督のMTJJさん、寒木春華(HMCH)スタジオが制作。2011年3月にウェブアニメシリーズが動画サイトで公開されて、人気を集め、その後、劇場版も公開。劇場版の中国国内での興行収入は約3億1500万人民元(約49億円)を記録するなどヒットした。日本でも字幕版が2019年10月に公開された。自然破壊によって森を追われた黒猫の妖精・シャオヘイが、妖精のフーシー、人間で最強の執行人のムゲンと出会い、人間と妖精の関係を揺るがす大事件に巻き込まれていく。
櫻井さんは、作品を見て「新鮮さ」を感じたという。
「話は王道、テーマも普遍的で、アニメーションのクオリティーもすごかった。もしかしたら、日本のアニメーションの影響もあって、そこから自国の文化が融合され、昇華されて、日本人が見て新鮮に思うような部分もあり、相互にいい関係だなと思いました。すごくすてきなアニメーションでしたね」
同作で櫻井さんが演じたフーシーは、森を追われたシャオヘイを助け、優しく接するが、人間に奪われた居場所を取り戻すべく画策するダークな一面も持っている。心の奥底に譲れない思いを秘め、仲間と共にある計画を実行しようとし、人間側の最強の執行人・ムゲンと敵対する。
櫻井さんはフーシーを「信念の人」といい、「共感できる」と話す。
「フーシーは覚悟を持って生きている。人間に対していい感情を抱いていない妖精で、単純に敵か味方かと考えた時にはダークなほうにいってしまうキャラクターではあるのですが、彼が望んだ未来、信じた未来は決して悪いものではないと僕は思いました。だからことさら悪ぶろうとか、嫌な感じにしようとは思いたくない。どちらかというと、僕はフーシーのほうが共感できる」
「彼を悪だとは思わない」と続ける。
「彼が望んだ未来が正解かどうかは難しいですよ。でも、導き出した答えが彼の中にあって、そこに向かって突き進む。きれいごとだけでは済まないからグレーなこともやる。ただ、それは表現としてのアニメーションの方向性なだけであって、彼が悪だとは僕は思わないし、そうしたくなかったんです」
「羅小黒戦記」は、フーシーやムゲンら超人的な力を持つキャラクターたちのアクションシーンも魅力だ。櫻井さんは、アクションシーンを演じていて「楽しかった」と話し、ムゲンとフーシーが戦うシーンでは「勝つつもりでやりました。最後に立っているのはフーシーだと。それぐらいの気持ちで僕はやりました」と振り返る。
「バトルが格好よくて、表現する上でも格好よくしたいなと思いました。ちゃんとそこにはドラマがあるんですよ。苦さもあるし、優勢、劣勢のシーソーめいたものがバトルでも描かれていくので、ただ『格好いい』でやっちゃだめなんですけど、バトルシーンのあまりの格好よさにジャッキー・チェンさんを見ているような、男の子的な気分になってしまって(笑い)。自分的に納得がいかないところは何度かトライさせてもらって、こだわっちゃいましたね」
アクションシーンで「見ている人に熱くなってもらいたい」という思いもあった。
「結構長くアクションが続くので、リアルな話、息切れするんですよね。フーシーは超人的な動きをしているので、生身の僕は途中でハーハーしちゃったりする(笑い)。一番大きなアクションがほしいところで、自分の声がそのレベルに届かなかったりすると、『すみません、もう一回やらせてください』とトライさせてもらうことがありました。満足がいかないというか。アニメーションがめちゃくちゃ格好いいので、絶対にダサくしたくないなと思って」
中国の作品である「羅小黒戦記」で、日本の作品のアクションシーンとの違いも感じたという。
「カンフー文化の国なので、アクションもちゃんと重心が乗っかっているというか、足腰がちゃんと入っているパンチが絵で表現されている。ちゃんと質量があるというか。原作の中国語も『フッ!』『ハッ!』と歯切れがよくて、呼吸がアクションに伴っている印象でした。そうした原音にリスペクトを持ちつつも、アクションはこちらのやり方に寄せていますね。原音が割とサバサバしているところを、『うぁー!』というアニメーションぽい見せ方にしたというか。原音のよさを損なわないように吹き替えで味わいを乗っける、重ねる感覚で演じました」
櫻井さんは、「羅小黒戦記」を通じて「童心にかえれた」といい、声優としても「初心を思い出した」と話す。
「大人になると、知識や経験を持っているので、アニメを分析したり、読むような感じで見てしまう。でも、子供の時は無心で見ていたじゃないですか。設定やディティールに縛られず、シンプルな気持ちで見ていた。『羅小黒戦記』は、その頃の感覚がふっとよみがえるような体験が味わえました。それが、自分的にはすごくありがたかったし、大きかった。初心にかえるきっかけになるような作品になりました」
そうした「作品体験は演じる上でも重要」と続ける。
「作品体験って、そこから演技ががらっと変わりはしないけど、今後絶対消えないようなエッセンスになっていく。この経験が一個の引き出しになるというか。だから、別の作品でも、今までの僕だったら『このシーン、このせりふ、このカットだったらこう思うだろう。こう表現するだろうな』と思いがちなところに、『いや、待てよ』となる。この作品に出たことによって違うアイデアが生まれる。明確に伝えたいものがある作品でストレートにアプローチできて、やりきった感もありますし、本当にこういう体験って大事だなと思いました」
フーシーが見せる信念の強さは、見るものを圧倒する。櫻井さん演じるフーシーの熱い戦いに注目したい。
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