上田麗奈:話題作「日本沈没2020」 アフレコは「常に臨戦態勢」 生々しい演技を

「日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-」に出演する上田麗奈さん(C)“JAPAN SINKS:2020”Project Partners
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「日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-」に出演する上田麗奈さん(C)“JAPAN SINKS:2020”Project Partners

 小松京さんのSF小説「日本沈没」が原作のアニメ「日本沈没2020」の劇場編集版「日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-」(湯浅政明監督)が公開された。「日本沈没2020」はNetflixで配信中のアニメで、湯浅監督が全10話を劇場編集版として再構築した。日本列島が沈んでいくという絶望的な状況の中で、人々は感傷的になる時間もないまま、パニックに巻き込まれてしまう。武藤家の長女で中学3年生の歩を演じた上田麗奈さんは、アフレコの様子を「常に臨戦態勢で、挑んでいく気持ちでした」と明かす。

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 ◇自分の生き方を考え直す作品

 「日本沈没」は1973年に発表された小松さんの小説。「日本沈没2020」は、「夜明け告げるルーのうた」「四畳半神話大系」「映像研には手を出すな!」などで知られる湯浅さんが監督を務めた。2020年、日本で突然、大地震が起き、大混乱の中、東京都内に住むごく普通の家族、武藤家と近隣の2人を合わせた6人は東京からの脱出を始めるが、沈みゆく日本列島は、容赦なく彼らを追い詰める。極限状態で突きつけられる生と死、出会いと別れなどが描かれる。

 「日本沈没2020」は、衝撃的な作品だ。「国って何だろう?」という大きなテーマに挑み、Netflixで配信がスタートすると、賛否両論、さまざまな意見がネットにあふれた。上田さんもまた衝撃を受けた。

 「一般的な家庭の普通の人たちを丁寧に描いていて、共感できる部分、逆に分からなくて悩むところがありました。身近な問題ばかりで、普段、自分が通り過ぎていて、気付いていたけど意識していなかった問題にきちんと向き合うきっかけになりました。自分の生き方を考え直したり、何に目を向けていくのか?と考えさせられました。そこが魅力の作品です」

 上田さんは、11月15日に開催された劇場編集版の公開記念舞台あいさつで「今の年齢の私から見える部分もありますし、10、20年後に見たらまた違う感想を持つかもしれません」とも話していた。

 「収録の時、歩に対して共感できないところもあったんです。なんでこんなに怒りが生まれるんだろ? (歩の母の)マリさんもどうしてこんなに明るく前に進めるのかな?と。ショックから怒りが生まれることがありますし、生きるために踏ん張らないといけなくて、涙よりも先に足が動くこともあります。段々、分かってきたところもありました。収録から1年ちょっとたちましたが、そんな短期間でも作品の見え方が変わりました。10年後だったら、これまでとは違うところで共感するかもしれません」

 ◇先が読めず不安も 挑戦的な芝居

 上田さんら声優陣は、ストーリーの詳細を説明されないまま、アフレコに臨んだ。登場人物は極限状態で、次に何が起こらないか分からない。声優陣もまた、予測不能な展開に驚かされながら、演技することになった。上田さんは最初、歩に共感できないところもあり、苦戦した。

 「大変でした。序盤、歩が怒りをあらわにするシーンが多く、最後までこの感じなのかな?と不安でした。先が読めないですし、悩んだり、不安が募るところもありました。いっぱいいっぱいになるまで一生懸命考えて、余裕がなくなっていたところもあったかもしれません。歩はちょっとずつ変化していきますし、歩の感情、心が理解できるようになってからは、やりやすかったのですが」

 「日本沈没2020」のキャラクターの演技は生々しくもある。上田さんにとって同作のアフレコは挑戦となった。

 「生々しい作品ですし、生っぽさを意識していました。ここまで生っぽい息づかいも珍しいです。手探りで演じたところがあります。常に臨戦態勢で、挑んでいく気持ちでした。監督が『人間って本当に分かりづらい生き物だから』とおっしゃっていましたが、本当にそうなんですよね。だからこそ挑戦的なお芝居になったと思います」

 劇場編集版については「よりドキュメンタリー感、リアル感が増しています」と語る。

 「武藤家にフォーカスしたことで、ストーリーがより分かりやすくなったと感じました。映画館で見ると、絵の迫力も増し増しになるので、よりリアルに感じますし、そこにいるような目線で見えてくるはずです。聞こえなかった音も聞こえてきて、より生々しいんです」

 劇場編集版は、上田さんら声優陣の生々しい演技も劇場ならではのリッチな音響で堪能できる。「日本沈没2020」の新たな魅力を発見できそうだ。

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