ドラゴンボールDAIMA
第9話 トウゾク
12月9日(月)放送分
上映中にもスクリーンのキャラクターに声を出して応援することで話題となった劇場版アニメの「応援上映」。コロナ禍によって発声を伴う応援上映も変化を余儀なくされた。しかし、応援上映の草分け的存在でもあるアニメ「KING OF PRISM(キンプリ)」シリーズで、「オンライン応援上映」という新たな楽しみ方が生まれている。応援上映に造詣が深く、オンライン応援上映も楽しんだアニメコラムニストの小新井涼さんが、単なる代替手段にとどまらないオンライン応援上映ならではの魅力を解説する。
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「上映中はお静かに」という映画館のお約束を覆し、客席での声援、サイリウムの使用、コスプレなどを許可した特別興行“応援上映”。その応援上映が広まるきっかけとなったアニメ「KING OF PRISM(キンプリ)」シリーズが、新たに“オンライン応援上映会”なるイベントを開催しました。
実は本シリーズの応援上映は、新型コロナウィルスの飛沫感染防止のため、現在映画館では発声が禁止された無声応援上映となっています。しかし、そんな中開催されたこのオンライン応援上映会は、自宅などからネットを介して個別に参加をするため、久々に“声を出しての応援も可能”だというのです。
とはいえ、応援上映は劇場の雰囲気やライブ感あってのイベントでもあります。それをオンラインでバラバラの場所から参加したところで果たして楽しめるものなのか、そもそも応援上映をどうやってオンラインで行うのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
今回のオンライン応援上映会は、ウェブ会議システム「zoom」を使って開催されました。それも、登壇者以外は音声チャットができない、いわゆるウェビナー形式でも、参加者全員が同時に配信や映像ソフトを各自再生し、チャットや通話などで会話や応援をしながら一緒に視聴を楽しむ「同時視聴」でもなく、“通常のzoomミーティング”を使っての開催です。
開催中主催者は、作品本編が中央で流れるカスタマイズ画面をメインで共有し、参加者はそれを見ながら、各自ビデオや音声をオンオフして自由に応援ができるようになっています。つまり上記イラストのように、普段映画館では見えない他の参加者の応援時の様子や、設定によっては部屋の様子まで、本編の映像と共にばっちり正面から目視することもできてしまうのです。
そのため参加者にはあらかじめバーチャル背景や顔を隠すためのフェースシールドなども配布されましたが、それでも当日までは「恥ずかしがって誰も声を出さなかったらどうしよう」「そんな状態で応援上映を楽しめるのか」という心配も、正直あったかと思います。
しかし蓋をあけてみると、そうした心配は杞憂に終わりました。ハウリングなど環境面での問題はあったものの、一旦始まってみれば、サイリウムでの応援やコスプレ参加者、そして久々の声援も健在で、オンラインでもしっかりと応援上映は成立していたのです。
それどころか、ネットを介して全国各地から参加者が集まるため、普段地元の映画館では聞いたことがない別地域の応援が聞けるといったオンラインならではの体験もできました。また、次第に慣れてきた参加者は、なんと「セリフに出てくる料理を実際に食べる」「筋トレをしながら応援する」「劇中シーンに合わせてバーチャル背景を切り替える」など、逆にリアルの映画館ではできない新しい応援(?)方法までをも、次々と編み出してきたのです。他にも、zoomのチャット機能を使って文字でも応援したり、ファン発案のハッシュタグ“#キンプリzoom応援上映会”を使って、上映会に参加していない人までが、オンライン応援上映会の盛り上がりを、Twitterを介してリアルタイムで共有するといった場面もありました。
現在、コロナ禍によってさまざまなイベントがオンラインで代替されていることもあり、このオンライン応援上映会も、最初は映画館での応援上映の“代わり”と思われていたところもあるかもしれません。しかし実際は上記のように、オンラインならではの新しい楽しみ方が次々と編み出されたことで、代替どころか、むしろリアルな映画館では体験できない“新たな応援上映の形”となっていったのです。
今回これだけ盛り上がったのには、本作が映画館での応援上映に何度も参加したり、シーンを詳細に覚えるほど繰り返し鑑賞している、いわゆる“鍛えられたファン”が多い作品であったことも大きいと思います。そのため、映画館での応援上映のように、すぐに他の映画でも同じようなことができるかというと、それはまだ難しいかもしれません。
それでもこのオンライン応援上映会は間違いなく、単なるオフラインの代替ではないオンラインでの新たなアニメの楽しみ方を提供してくれた、コロナ禍でのブレークスルー的なイベントであったと私は思います。
こあらい・りょう 埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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