FM999 999WOMEN’S SONGS:話題のミュージカルドラマ 湯川ひな&長久允監督に聞く魅力

ミュージカルドラマ「FM999 999WOMEN’S SONGS」に主演した湯川ひなさん(左)と長久允監督
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ミュージカルドラマ「FM999 999WOMEN’S SONGS」に主演した湯川ひなさん(左)と長久允監督

 女優の湯川ひなさんが主演するミュージカルドラマ「FM999 999WOMEN’S SONGS」(全10話)が、3月29日からWOWOWプライムで放送される(3月26日からWOWOWオンデマンドで配信)。脚本・総監督を務めるのは、湯川さんが主演し、米サンダンス映画祭ショートフィルム部門でグランプリを獲得した短編映画「そうして私たちはプールに金魚を、」(2016年)の長久允(ながひさ・まこと)監督だ。今回の長久監督との再会を「恥ずかしかった」という湯川さんと、その湯川さんを「いい意味で変わっていない」と評する長久監督に、今作の見どころや今後の抱負を聞いた。

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 ◇長久監督「覚悟と責任を持って作ったつもり」

 ドラマは、湯川さん演じる16歳になりたての高校生・小池清美の“脳内ラジオ”「FM999」を舞台に展開する。清美が問題にぶつかり「女って何?」とつぶやくたびに、各話3人の女が現れ、歌を披露しながら清美に生き方のヒントを与えていく。宮沢りえさんや八代亜紀さん、ゆりやんレトリィバァさんら超多彩かつ、長久監督いわく「それぞれの歌に合うベストな方々」が毎回3人ずつ登場し、監督自身が作詞したオリジナル曲を歌い上げる。

 そもそも今作が生まれたのは、長久監督の奥さんがジェンダー(社会的・文化的な男女の差)やセクソロジー(性科学)に関わる仕事をしており、監督自身、「普段から性差についてや、性別によってカテゴライズするべきではないものについて、考える機会が多かった」からだ。「僕は男ですけれど、そういうことを定義したり、問題を掲げたりするコンテンツが世の中にあまりないので、描くべきではないかと思ったのです」と明かす。

 「妻にアドバイスをもらいながら一緒に作った」という物語には、「女とは?」という根源的な問いにはじまり、労働やルッキズム(容姿による差別)、セックスなど、男女格差を浮き彫りにする事象が盛り込まれている。長久監督は、「細かいポイントで批判はあるかもしれない」としつつ、「いろいろ考えたうえで、自分として正しいと思うことをていねいに、そして、ひとつひとつご説明できるような覚悟と責任を持って作ったつもりです」と語る。

 ◇「湯川さんはいい意味で変わっていない」

 その本作で清美を演じるのが湯川さんだ。オーディションで射止めた今回の清美役だったが、「そうして私たちはプールに金魚を、」で主演したのは約5年前。「長久さんは、15歳の頃の私を知っていて、それからちょっとたって自分自身変化があったうえでお会いするので、すごく恥ずかしかったし緊張しました」と、今回のオーディションを振り返る。

 そんな湯川さんを見て長久監督は、「いい意味で変わっていない」と感じたという。「もちろん演技的に成長していますけど、演技って成長すればするほど根幹となる、人間の大事なピュアな部分が失われたりするのですが、そこが失われていないたたずまいだったので、ああよかった」と安堵(あんど)したと明かす。

 湯川さんを起用した理由に、長久監督は「声のよさ」を挙げる。「せりふを発するリズム感やキー(音の高さ)がとてもいい。それに、僕の脚本の主人公は、無表情であったり不機嫌な表情をしたりするタイプ。そういう感情表現を湯川さんはちょうどよく演じてくれます」。

 今回も、「せりふを読むスピードや表情の加減をお伝えしただけで、僕の演出は、湯川さんに(清美役を)お願いしたことでほぼ終わっています」と信頼は厚い。実際に清美を演じる湯川さんを見て、「脚本の(清美の)イメージを、より具体化してくれた」と自信を深めたという。

 ◇湯川さん「清美は新しい試み」

 清美について、湯川さんは「子供から大人になっていく過程にいて混乱している。発するエネルギーは強いけれど、それをコントロールできていないところがあります。それから、ほかの人と並んだときに、特別何かが目立つわけではない女の子」と分析する。清美を演じるうえで、「普段とは違う動きでしゃべったりする場面は難しかった」というが、ストレートに感情が見える演技は「新しい試みでした」とにっこり。そして、映像の中の自分を見て、「もうちょっとこうしたかったな、こうもできるな」と反省しながらも、「(長久監督は)変わった角度から撮ってくださるので、面白いと思いました」と笑顔を見せた。

 ちなみに、湯川さんは2月26日に二十歳になったばかり。清美の、「強く言いたいことはあるけれど、言葉が少なくてうまく説明できないところ」に共感したという。半面、「私は、(清美のように)可愛くないと言われたことに反応したりはしなかったです。もうちょっと達観していました。それに、先輩に恋をしたりすることもなかったです」と、自身の16歳を振り返った。

◇湯川さん「哲学的な言葉感じて」 長久監督「歌番組としてでも」

 今後は、「日本に限らず海外も視野に入れて活動していきたい」と話す長久監督。そして「映画に限らずアニメーションだったり舞台だったり、表現の枠を気にせずに、伝えたいメッセージを適切なものに変換していけたらと思っています」と意気込む。

 一方、湯川さんは、「自分が想像できるものってたかが知れているので、いま、自分が想像できていない役と出会いたいです」と目を輝かせる。憧れている女優を聞くと、映画「アデル、ブルーは熱い色」(2013年)や、「007 スペクター」(2015年)でボンドガールを演じたフランス人女優レア・セドゥさんだと教えてくれた。

 湯川さんは「長久さんの、いろいろなものを削った、ミニマムなんだけれど哲学的な言葉がたくさんあるので、そういうところを感じ取っていただきたいです。それから、音楽は、言葉がある以前に人が繋がるものであったり、人の心を動かすものであったりするので、それを楽しんでいただきたいです」と今作の魅力をアピール。

 長久監督も、「新しいジャンルとして、普通のドラマではない形なので、歌番組としてでも受け取ってもらえたら。いろんな感想が生まれると思いますが、見た方それぞれがさまざまなことを受け取っていただければうれしいです」とメッセージを送った。

 「FM999 999WOMEN’S SONGS」は、3月26日よりWOWOWオンデマンドで毎週金曜日配信。3月29日よりWOWOWプライムで毎週月曜日21時30分より放送。全10話。

 <長久允監督プロフィル>

 ながひさ・まこと。1984年8月2日生まれ。東京都出身。大学卒業後、広告代理店・電通に入社。CMプランナーとして働く傍ら、脚本・監督を務めた短編映画「そうして私たちはプールに金魚を、」(2016年)が、第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門グランプリを獲得。脚本・監督した長編デビュー作「WE ARE LITTLE ZOMBIES」(2019年)は、第35回サンダンス映画祭審査員特別賞・オリジナリティ賞を受賞。2020年には、演劇「MISHIMA2020 『(死なない)憂国』」で初めて舞台演出に挑戦。2021年4月に作・演出するミュージカル「消えちゃう病とタイムバンカー」の公演を控える。

 

 ゆかわ・ひな。2001年2月26日生まれ。東京都出身。2014年、テレビCM「ミサワホーム」を経て、2015年、映画「あえかなる部屋-内藤礼と、光たち-」で女優としてデビュー。ほかの出演作に、テレビドラマ「受験ゾンビ」(2019年)、映画に「バースデーカード」(2016年)、「そうして私たちはプールに金魚を、」(2016年)、「WE ARE LITTLE ZOMBIES」(2019年)、公開予定作品に「子供はわかってあげない」がある。

 スタイリング:岡本さなみ ヘアメイク:山下亜由美

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