UFC264:ダスティン・ポワリエ選手VSコナー・マクレガー選手 “世界のTK”高阪剛が見どころ語る

「UFC264」に出場するダスティン・ポワリエ選手(左)とコナー・マクレガー選手 Getty Images
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「UFC264」に出場するダスティン・ポワリエ選手(左)とコナー・マクレガー選手 Getty Images

 世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC264」が、7月11日(日本時間)、米ネバダ州ラスベガスで開催される。メインイベントはライト級のダスティン・ポワリエ選手とコナー・マクレガー選手の一戦。両者は2014年7月と2021年1月に2度対戦し、1勝1敗。今回が決着戦だ。同試合の見どころを、WOWOWの「UFC -究極格闘技-」解説者で、“世界のTK”こと高阪剛さんが語った。

ウナギノボリ

 --高阪さんは、今回の試合をどう見ていますか?

 過去2回の映像を改めて見返してみたんですけど、とくに前回、ポワリエがTKOで勝った試合は、戦略および対策が勝敗を分けた気がしましたね。ポワリエは、ストライカーであるマクレガーに対して、カーフキックでダメージを与えることを戦略に組み込んだ上で試合をやっていたと思うんですよ。それに対してマクレガーは、カーフキックという技術は当然知っていたと思いますけど、ポワリエがそれを戦略としてくるとは思ってなかった節がある。

 --ポワリエ選手がカーフキックを軸にした戦略でくるとは予想していなかったと。

 というのも、試合開始15秒くらいのところで、ポワリエが1回カーフキックを出しているんですよ。その時は、おそらくマクレガーの反応をうかがうように、様子見で蹴ったような感じだった。そして1ラウンド残り38秒のところで、今度はけっこう強く蹴っているんです。これは頭からカーフで組み立てようという戦略がないと、できない動きだと思うので。

 --試合序盤、マクレガー選手はポワリエ選手のカーフキックをカットしていましたが、途中からカーフキックをもらうようになりました。どういった理由が考えられますか?

 一つはポワリエが、“意識づけ”としてインローを蹴ったんですよ。インローを蹴られたことでマクレガーが脚を内側に向けるようになると、ポワリエはしっかりとカーフを蹴ることができる。だから、これも戦略ですよね。また、1ラウンドはマクレガーがパンチで押して優勢だったじゃないですか。それによってマクレガーは「パンチでいける」と思ったからこそ、前重心で強いパンチを打っていきましたよね。でも、重心が前脚にあるというのは、相手からするとカーフキックを蹴れる状態でもある。そこが狙われたんだと思います。

 --1ラウンドで打撃優勢だったため、逆にカーフの餌食になりやすい状態になってしまった、と。

 その辺が、勝負の“アヤ”なんですよ。1ラウンドが終わった時点で、マクレガーは「パンチでいける」と思っただろうし、ポワリエの方も、1ラウンドは劣勢ながらも「これはカーフキックが当たるな」って、認識したと思うんですよね。だからこそ、2ラウンドはどんどんカーフを蹴っていって、5発目でマクレガーが崩れたところにパンチをラッシュして結果的にKOで倒すことができたんだと思います。戦略の勝利ですね。

 --マクレガー選手の動きは決して悪くなかったと思います。

 かなり仕上がりは良かったと思いますよ。おそらくマクレガーの方は、まずテークダウンされないことを考えて、もし倒されてもすぐに立ってスタンドに戻す、それを繰り返すことで、テークダウンにきたポワリエの体力を削っていこうという頭があったんじゃないかと思うんですよね。1ラウンドのところで、倒されてから立ち上がるまでの動きがすごくよくなっていたので、相当練習してきたことがうかがえました。

 --マクレガー選手は、テークダウンディフェンスを強化してきたため、テークダウンの攻防でポワリエ選手の体力を削っていこうとしていたのではないか、と。

 マクレガーは明らかにフィジカルが強くなっていましたからね。四つに組んだ状態でケージレスリングの攻防もけっこう長い時間やっていたんですけど、それは組んで削っていこうという戦略の現れだったと自分は思います。

 --前回、敗れたマクレガー選手も、実は以前よりトータルで強くなっていたけれど、その死角がカーフキックだったわけですね。

 そうですね。だからマクレガーサイドからしたら、ケージレスリングの攻防でもほぼ主導権を握っていたし、1ラウンドはパンチもかなり当てていたので、思い通りの展開ができていたはずなんですよ。だからこそ、カーフキックを効かされた時、「まさか」「こう来たか!」っていう思いがあったでしょうね。

 --今回は、カーフキック対策をしっかりとやってきたマクレガー選手を相手に、ポワリエ選手がどんな戦略を練ってくるかがポイントになりそうですね。

 今回も戦略が非常に重要な試合になると思います。マクレガーは敗れているので、まず前回と同じ“テツ”は踏まないということを徹底するのは当然。それにプラスアルファ、余計なことをあまり考えず勝つためのものをのせていく、という正しい手順を踏めるか。一方、ポワリエは作戦が的中して勝ったので、今度は相手がカーフ対策をやってくることを前提に、新たな勝つための戦略を練らなきゃいけない。

 --前回はカーフキックという切り札を隠し持っていたわけですが、今回はおそらく、それが通用しなくなるからですね。

 だから、前回勝ったポワリエの方が、今回は難しい戦いを強いられる気がしますね。マクレガーは前回、カーフの対策をしていなかったことで敗れましたけど、“たら・れば”の話で言えば、カーフキックという戦略をポワリエが持っていなかったとしたら、下手したら早いラウンドでマクレガーが勝っていたんじゃないかと思うんですよ。それぐらい状態が良かったので。

 --打撃が強いのはもちろん、パワーもアップしていたし、テークダウンディフェンスも向上していたましたからね。

 そしてポワリエは実際に試合をした当人なので、マクレガーのあの打撃を当てる感覚や、伸びてくる左ストレート、パンチの種類、コンビネーションの使い分けなど、あれを全面的にやられたらきついなと絶対に思っているはずなので。今回、そのマクレガーを倒すために何を持ってくるかですよね。

 --(ポワリエ選手の)名参謀マイク・ブラウンにさらなる秘策があるのかどうか。

 そうですね。マイク・ブラウンをはじめとしたATT(アメリカン・トップチーム)軍団が、今度はどんな戦略を練ってくるか。そこが非常に楽しみだし、一体どんな展開になるのか予想がつかないところが、興味深いですね。

 --3度目の対戦にして、一番展開が読めませんね。

 こういう試合も珍しいですよ。また両者にとって、今後を大きく左右する大事な試合ですしね。ポワリエが、マクレガーを2度も破ったとなれば、それは最強のチャレンジャーとして、ライト級王者のシャールズ・オリヴェイラに挑戦することになるだろうし。マクレガーが、ここでポワリエに完勝したら、もう達人の域に達するんじゃないかと思います。タイトルマッチではないのに、ラスベガスのビッグマッチのメインイベントを飾るにふさわしい試合と言えるでしょうね。

 試合の模様は、「生中継!UFC-究極格闘技- UFC264 in ラスベガス ダスティン・ポワリエVSコナー・マクレガーIII」と題し、7月11日午前11時からWOWOWライブで生中継、同月16日午後10時からWOWOWライブでリピート放送。両日とも、WOWOWオンデマンドで同時配信される。

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