全領域異常解決室
第7話 すべてお話します 物語はここから始まった
11月20日(水)放送分
9月17日にスタートし、話題となっている連続ドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」(NHK総合、全3回)で、脚本・演出を手掛けた俳優のオダギリジョーさん。同作はオリジナル連ドラで、警察犬係の主人公と相棒の警察犬が事件に挑む姿とともに、 謎めいた町で繰り広げられるさまざまな人間模様が描かれる、“可笑(おか)しくもサスペンスフルな物語”となっている。「俳優を演出するという面で言うと、(自分も)俳優なのですごくやりやすいんですよ」と自身の監督ぶりの一端を語るオダギリさんに、ドラマ制作の日々を振り返ってもらった。
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長編映画デビュー作で、海外でも評価された「ある船頭の話」(2019年)をはじめ、監督業は過去にいくつか経験してきたオダギリさんだが、連続テレビドラマの脚本・演出を手掛けるの今回が初。その分、大きな挑戦にもなった。オダギリさんは「俳優が映画を作ることはあっても、連ドラを作るなんて聞いたこともないですからね。それこそめちゃくちゃ挑戦でした。コンプライアンスや自主規制があるのがテレビで、映画の自由さとは違う箱の中で闘うのですごく難しかったですし、その分もやりがいもあって。映画の醍醐味(だいごみ)とテレビの醍醐味の差を大きく感じました」と振り返る。
脚本を執筆する段階から映画とテレビの「媒体の差」は大いに意識。「映画とテレビとでは見てもらう環境も違うし、お客さんのタイプも違う。映画では書かないけど、テレビでは書いておいたほうがいいものもあって。今まで映画の脚本を書いてきましたけど、今までの感覚とは全く違う意識で挑んだ気はします」と明かす。
「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」は全3回の連続ドラマで「構成は長く時間をかけて考えました」と話す。
さらには、「今はやっていること、社会で起こっていることは、テレビドラマのほうが入れやすい」といい、「映画は撮影から1年、2年たってからの公開となるので、どうしてもタイムラグができる。しかも映画って息が長いものは長いじゃないですか。その時代をいじるようなことは映画より、テレビの方が向いていると思います。テレビは今、社会で起こっていることをうまく取り入れれば面白くできる媒体だと思っているんです」と持論を披露。ドラマには佐藤浩市さん演じる“スーパーボランティア”の男性が登場するが、「映画では登場させないキャラクターだと思いますし、あれはテレビだから面白いんじゃないのかな」と結論づけた。
今年6月にドラマの制作が明らかにされた際、 「1年前の緊急事態宣言の中、巣ごもりと言われる生活を送りつつ、この時代に描くべき作品は何か?と繰り返し自問しながら書いた作品です」「賛否の大波紋を広げるであろう、世に『挑む』作品が生まれました」などとコメントを寄せていたオダギリさん。
今回の作品は思った以上に“笑い”の要素が多いことも特徴に挙げられる。「世界が落ち込んでいる中、少しでも心を軽くしてくれるのが、笑い。ただ単純に楽しみたい、笑いたいって気持ちが当時の自分にもあって、素直に楽しんでもらいたいなって気持ちで書いた結果です。それもテレビならではで、生活に根付いたテレビはやっぱりエンターテインメントであるべきだって気持ちが強いので」と理由を語る。
そういった“笑い”に加え、どこかサスペンス調で進むストーリー展開は、オダギリさんが三木聡監督とタッグを組んだ「時効警察」や「熱海の捜査官」をほうふつとさせる部分もある。
オダギリさんは「三木さんとはもう15、6年の付き合いで『コメディー』というものを教わった監督でもあるので当然、影響は受けているし、それは過去に組んだ他の監督さんもそうです。あとはデビッド・リンチとかも。自分が影響を受けたものや、好きなものが意識的にも無意識的にも詰まっているんだと思います。好きなものなんで、やっぱり漏れ出ちゃうものなんでしょうね」とほほ笑んだ。
そんなオダギリさんの元に集結した豪華キャスト陣が早くも話題に。主演の池松壮亮さんをはじめ、麻生久美子さん、永瀬正敏さん、永山瑛太さん、仲野太賀さん、松重豊さん、柄本明さん、橋爪功さん、國村隼さん、佐藤さんら日本を代表する名優たちが集結した。
「脚本を書いている段階から、この人に演じてほしいっていうのが出てきて、それぞれお願いしたのですが。この間までオリンピック・パラリンピックがやっていましたが、僕にとっての今の“日本代表”だと思うんですね。自分が考える『オリバーな犬』という作品における日本代表ですね」
演出するにあたっては、決して型にはめ込まず、“人に合わせて”変えていった。オダギリ監督の印象について、先日公開されたPR動画の中で麻生さんは「(オダギリさんが)役者をやっているから、役者がどういうふうに言われたら通じるとか、こういうことを言われたら嫌だろうとか、そういうことは多分かなり気を使ってくれているなっていうのはすごく伝わってくる」とコメントしていたが……。
「俳優を演出するという面で言うと、俳優なのですごくやりやすいんですよ。俳優の気持ちも分かるし、どう言われたらどう感じるのか、普段から分かっているので。新人の子に対しても、どう持っていってあげたらやりやすいか、気持ちの作り方とかも、自分が俳優だからこそ、導いてあげられるものってすごくいっぱいあるので。(自分のように)俳優が演出をつけるのは向いていると思います」
そのほかカット割りやカメラの寄り引き、テンポ感や音楽と、映画とはまた違うテレビドラマというエンターテインメントを念頭に、「全てにおいてこだわって作り上げました」と話すオダギリさん。一方で、「言葉だと乱暴に聞こえるでしょうが、もうテレビドラマ(の演出)はやらないでしょうね。十分にやり切った感は自分の中にはあるので」と笑う。
映画を含めた今後の監督業はまったくの未定で、「モノを作るって、本当に自分をさらけ出して、世界と勝負するってことだと思っています。よっぽどのことなので、その気持ちになれるかどうか。早々と簡単に『また作りたいです』とは言えない。それなりの覚悟を持って、何か新しいモノを作りたいとなったときに、また(脚本を執筆する)ペンをとるのかなって、それくらいのことしか言えないです」と説明する。
続けて「お願いされたり、やらされてやるべきじゃないと思うんです、モノを作ることや表現するってことは。やっぱり自分から出すべきものなので。そこに悩んだり、ネガティブな気持ちがあるとしたら、それはやるべきじゃない、やめたほうがいい。その気持ちは変わらず持ち続けていきたいです」とモノ作りへの真摯(しんし)な思いをのぞかせていた。
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