大森美香:「あさが来た」「青天を衝け」脚本家 五代友厚への思い 「もうちょっと書きたかった」

NHK大河ドラマ「青天を衝け」の脚本を手掛けた大森美香さん
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NHK大河ドラマ「青天を衝け」の脚本を手掛けた大森美香さん

 俳優の吉沢亮さん主演のNHKの大河ドラマ「青天を衝(つ)け」(総合、日曜午後8時ほか)。12月26日放送の最終回に向けて、物語は佳境を迎えており、11月28日放送の第37回「栄一、あがく」では、主人公・渋沢栄一(吉沢さん)と並び、近代日本の礎を築いた2人の実業家がこの世を去った。一人は、中村芝翫さん扮(ふん)する岩崎弥太郎で、もう一人がディーン・フジオカさん演じる五代友厚。特に五代友厚は、2015年度後期の連続テレビ小説「あさが来た」に続く、ディーン・フジオカさんによる再演ということでドラマファンから高い注目を集めたキャラクターだ。「あさが来た」「青天を衝け」の両作の脚本を手掛けた大森美香さんが取材に応じ、五代友厚への思いを明かした。

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 ◇機会があればもう一回、書きたいとずっと思っていた

 約6年前の「あさが来た」の五代友厚について、大森さんは「あささん(波瑠さんが演じたヒロイン)から見た五代さん」と位置づける。二人(五代とあさ)の関係性は、いわば「人生の先輩と後輩、または師と生徒」で、劇中でも、五代友厚がその立ち位置から大きくはみ出すようなことはなかったようにも思える。

 一方、「青天を衝け」の五代友厚は、ディーン・フジオカさんが「ワイルド」と表現したように、当初、幕末の志士としての顔ものぞかせるなど、「あさが来た」に比べてより多面的な描かれ方をした。

 大森さんは「五代さん自身がすごく面白くて不思議な人生を送っていて、『あさが来た』の後も、機会があればもう一回、書きたいとずっと思っていた」といい、「栄一さん目線で調べてみると、パリでは相反する活躍を五代さんはしていたことが分かって。後年、『東の渋沢、西の五代』と言われる以前からの二人の闘いの部分や、栄一さんのよきライバルであり、生涯の友であるという五代さんを書きたいなって思っていました」と明かす。

 ディーン・フジオカさんの再演ぶりについては「甘い顔だけじゃない顔が魅力で、ちょっと大人になった五代さんを見たかのような、クールな五代さんが見られました」と満足げ。「私はこういう姿の五代さんが見たかったんだと思って、『ディーンさん、ありがとう』と思いました」と感謝しつつ、「でも、もうちょっと書きたかったです」と本音をもらした。

 ◇五代、栄一、あさ…明治に活躍した実業家の魅力

 また「あさが来た」と比べて、「青天を衝け」の方が、「より書きたかった、五代友厚の人としての魅力は多いかもしれないと思っている」という大森さん。

 そんな五代友厚ら、明治に活躍した実業家たちの魅力を聞くと、「今、令和という時代、『こういうことをしたら危ない』とか、『こういうことをしたら叩かれる』と思ってしまう風潮があるような気がします。栄一さんもあささんも、岩崎弥太郎さんもみんなそうなのですが、人にどう思われようが気にせず突っ走り、自分で何かを作り上げようとする思いが強かった人たちの話は惹(ひ)かれるものがあります。それこそが明治の面白さだと思っていて。今回は主役が栄一さんということで経済の面からでしたが、この時代の政治、教育、文学、どの面から見ても何かを変えてやろうっていう気概があるから、楽しい時代です」と語る。

 さらに大森さんは、「例えば五代さんは、薩摩から長崎に行って、長崎海軍伝習所の話とかも面白いですし、そこから薩摩に戻って、捕虜になったり、薩英戦争でイギリスの捕虜になったり、本当に興味深い面がある人です。実は五代さんのみならず、(江戸幕府・勘定奉行の)小栗忠順さんなどなど主役で書いてみたい人がたくさんいて困っています(笑い)」と秘めたる思いを口にしていた。

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