12月11日から大阪松竹座(大阪市中央区)で上演される舞台「大阪環状線 大正駅編 ~愛のエイサー プロポーズ大作戦~」でヒロイン役を務める女優の阿部純子さん。NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「とと姉ちゃん」(2016年度前期)や「おちょやん」(2020年度後期)、TBS系日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」(2019年)、映画「孤狼の血」(2018年)などに出演してきた阿部さんだが、「初舞台で、初めて歌を歌って、ダンスも踊ることになっている」と“初めて尽くし”であることを明かす。自身も大阪出身で、「私も何度も足を運び、歌舞伎を見てきた大阪松竹座という伝統のある場所で、その舞台に立てるチャンスをいただけるなんて夢にも思っていなかったので、今しかないと飛び込ませていただきました」という阿部さんに話を聞いた。
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阿部さん演じるヒロインの美咲は「人気女優」という設定だ。
「美咲は一人の女性としてはとても芯がある。女優としても、自分があるべき姿を追い求めていて、曲がったことができない。私自身は自分が女優であるという感覚をあまり持っていないのですが、こうと思ったら突き進むところは似ているのかなって感じています」
女優が女優を演じるやりにくさは当然あるというが、「そこの見え方はコメディータッチなのですが、そういった『女優らしい女優』という部分は、楽しんでやっています」と笑顔を見せる。
舞台は吹奏楽、エイサーの要素も取り入れたミュージカル仕立てで、歌や踊りは欠かせないものになっているとか。その分、けいこに入る前からボイストレーニングを重ね、備えてきた。
「歌はまだ経験はないのですが、それでも自信を持って歌うってことはすごく大事なんだなって。それこそ、しゃべっている途中で急に歌い出したりするので、そこの違和感を埋めるという意味でも堂々としていないといけない。1曲丸々ソロで歌うシーンもあるので、もう役になりきるしかないのかなって思っています」
映像作品とは違って、舞台の“生もの”ゆえの怖さにも初めて挑む阿部さん。
「今回はありがいことに喜劇なので、見た方がどれだけ楽しんでくださるのかを一番に考えたいなって思っています。映像の場合、演じているときは、自分のお芝居がどう届くのか、そもそもとちゃんと届いているのかってことが分からないまま進んでいくのですが、舞台はダイレクトに反応があるので、演じている“向こう側”にあるものをしっかりと受け止めて楽しみたいなって」と意気込んでいた。
来年に目を向ければ、舞台同様、ヒロインを演じた映画「リング・ワンダリング」(金子雅和監督、2022年2月19日公開)などが控えている。「リング・ワンダリング」は主演は笠松将さんで、東京・下町を舞台に、過去と現在が織り交ざる、切なく幻想的な物語。阿部さんは「映像表現が絵画的で『こんな風景はまだ日本にもあったんだ』というところが見どころの一つになっています」とアピールしている。
映画では一人二役を務め、見事な演じ分けを披露している阿部さんだが、女優としてはまだまだ試行錯誤の日々。「常に大丈夫かな、無理かもしれないなって感じながらやっているのが正直なところなんですけど……」と偽りない本心をのぞかせる。
また「この役のために自分は何ができるのだろうか、考えすぎてしまって、他のことがどうでもよくなってしまって、自分を省みないところもある」といい、「自分自身が苦しむのはいいのですが、そういうときに実生活で周りに迷惑をかけてしまうのは、ちょっと考えものだなって思います」と反省を口にする。
それでも「役にまい進したいなって。身を粉にしてでも、作品に向き合っていきたいんです」と思いの強さを見せ、「作品や役を私に与えてくださるってことは、本当にありがたいことで、次はどんなことができるのかってワクワクしてしまう。この仕事が自分に合っているのか、悩みながらではあるのですが、手を差し伸べてくださる方のために私ができることをやり続けることが大事なことなのかな」と結論づけていた。