平手友梨奈:自身の“居場所”「まださまよい中」 中村蒼と主演ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」撮影エピソード語る

NHK土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」で主演を務める平手友梨奈さん(左)と共演の中村蒼さん
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NHK土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」で主演を務める平手友梨奈さん(左)と共演の中村蒼さん

 NHK土曜ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」(総合)で主演を務める平手友梨奈さんと共演の中村蒼さん。平手さんはNHKドラマ初出演で、女性騎手役に初めて挑戦した。撮影ではできるだけ馬のそばにいることを大事にしていたといい、「ほかではなかなか経験できないような現場だったと思います」と充実感をにじませる。中村さんも馬との触れ合いが「何よりの癒やしで、貴重な撮影期間でした」と楽しげに振り返る。平手さんと中村さんに撮影エピソードや初共演の印象などを聞いた。

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 ◇女性騎手役で「ずっと馬のそばにいた」

 ドラマは古内一絵さんの同名小説(小学館)が原作。平手さん演じる主人公の女性騎手・芦原瑞穂のひたむきな情熱が、人生を諦めていた人々の心に火をつけ、廃業寸前の厩舎(きゅうしゃ)が桜花賞に挑んでいく物語。同局の連続テレビ小説(朝ドラ)「なつぞら」などで知られる大森寿美男さんが脚本を手掛けた。

 今作で女性騎手役に初挑戦した平手さん。瑞穂を演じるうえで大事にしたのは馬との距離。「瑞穂は、幼いころからお馬さんと一緒に暮らしてきた女の子。私もすごく大好きだったので、自分から隙(すき)があれば、ずっとお馬さんのそばにいました」と明かす。

 そもそも馬に乗ること自体が初めての経験だったといい、練習はクランクインの2カ月前から行われていたという。乗馬だけでなく、木馬でも練習を重ね、平手さんは「最初からうまくいったわけではなく、回数を重ねるごとに(できるようになっていきました)。競馬学校の先生が来てくださって、じきじきに教えてくださった日もあったので、動画を撮って、それを見ながら。見て学ぶこともあれば、言葉で学ぶこともたくさんありました」と充実感をにじませる。

 調教師役で共演する中村さんとは練習時に初めて対面したといい、「2人で木馬で練習したときに、中村さんが木馬から降りた後、足ががくがくで『絶対、筋肉痛になる』とおっしゃっていたのが、すごく印象的でした」と笑いながらエピソードを語る平手さん。

 中村さんも、馬に乗る練習を重ねて調教師の光司役を作っていった。「僕もひたすら馬の練習させてもらって、馬との関係を築いていく感じでした。多少乗るシーンがあったので、それに向けて練習して。馬と自然とその場にいられる空気感を出せるようにと思いました」と振り返る。

 馬との撮影は未経験だったが、平手さんは馬と接すること自体は「全然、怖くはなかった」といい、「お馬さん(との撮影)自体は本当に大変だったと思うんですけど、現場にお馬さんがいる方が安心していました。だからお馬さんがいない日や、スタジオでの撮影の日は、すごく不安でした」と当時の心境を語る。

 中村さんはそんな撮影について、「瑞穂が乗ろうとして振り落とされ、何とか乗る、というシーンを、一連で撮っていて。目の前で、平手さんがだんだんドロドロになっていって『大丈夫?』と心配になりましたが、カメラは止めずに撮影していました」と回顧。平手さんについても「馬との距離感が、誰よりも一番近いなと感じました。物心ついたときから馬と過ごしている、という設定で、撮影中は騎手そのものに見えました」と絶賛し、自身は「調教師で過去には馬に乗っていた設定だから怖がってはいけないけれど、内心はびくびくしながら」と苦笑いを浮かべた。

 撮影前は「競馬自体、ほとんど知識がない状態でした」という平手さんだが、撮影を経て、「この作品をきっかけにたくさん知ることもありましたし、私はジョッキーの役だったので、騎手の方の大変さなどを実際に少しでも感じられたのかな、と思います」と得るものも大きかった様子。同じく、競馬はテレビ中継でときどき見ていたぐらいだったという中村さんも「この作品に関わって、こんなにもいろいろな役割があって、騎手、馬を育てる厩務員、調教師……いろいろな人が関わってレースがあるんだ、ということを実感しました。現場でJRAの方、騎手の方、競馬学校の方とお話しさせてもらう機会があったのですが、自分の子供のように馬を育てていて。すごく愛にあふれた現場でした」と語る。

 ◇初共演の印象は…

 平手さんと中村さんは今作が初共演。平手さんは、中村さんとはクランクイン前の乗馬練習で初めて会い、「人柄や人間性は穏やかで、クランクインしてからもそのままだったんですけど、やっぱりお芝居では見た目もだいぶ変わられていたので、『あ、光司さんだ』とすごく思いました」と当時の印象を思い返す。

 一方、中村さんは平手さんを「人見知りで物静かな感じ」と捉えつつ、「現場では監督といろいろなアイデアを提案しあっていて、実際に平手さんのアイデアで生まれたシーンもありました。僕は性格的にいろいろな人とディスカッションするのが得意ではないけど、平手さんはやるべきところで監督と向き合って話し合うところが素晴らしいと思いました」と平手さんの姿勢を称賛。さらに「『この人のために厩舎を再生させなければならない』という気持ちにさせてもらった。内からくるものがしっかり届きました」と共演に手応えを感じていたようだ。

 撮影中は先輩俳優たちから「いじられていた」と笑う平手さん。「この現場は大人の方、大先輩の方ばかりだからなのか分からないけど、すごくいじられていました(笑い)。いじられている現場でした」と楽しげに語っていた。

 ◇自身の居場所は「まだ、さまよい中」

 作中で、瑞穂はプロデビューしたものの、成績が上がらず苦しみ、社会のあぶれ者たちのたまり場だった緑川厩舎で再起をかける。光司も、挫折しても挑戦し続ける瑞穂と共に夢をかなえようとする役どころだ。そんな瑞穂と光司を演じる2人の、挫折からの立ち直り方、気持ちの切り替え方とは何か。

 「切り替え、という感覚はないですけど、とことん落ち込んで反省して……という繰り返しです」と平手さん。中村さんは自身の挫折した経験に重ねて「一生懸命頑張っているけど、思い通りにいかないときに『もういいや』となる気持ちは分かります。やってもだめだったら仕方がないとなる気持ちは分からなくはないな、と思います」と光司に共感し、「(俳優業は)毎回現場が違うので、経験を積んでいるようで積んでいない気持ちになることもある。過去の自分がどうだったかは一切捨てて、今自分に何ができるかを考え、もがきながらも進むしかない」と自分なりの挫折の乗り越え方を語る。

 今作のテーマの一つは“居場所”。最後に、それぞれの“居場所”とは何かと聞かれると、平手さんは「私は……まださまよい中です」と率直な心境を吐露。中村さんは「この先もこのお芝居の世界に何があってもしがみついていく、と思っているので、この世界が“居場所”なのかな」と赤裸々な思いを語っていた。

 ドラマはNHK総合で12月18、25日午後9時~同10時13分に放送される。

 ※クレジット(敬称略)

 平手友梨奈=スタイリスト:清原愛花▽ヘアメイク:Mao

 中村蒼=スタイリスト:Takanori Akiyama▽ヘアメイク:Kazuya Matsumoto▽
 

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