YOASOBI:2年連続紅白出場 10年後は「国民的なユニットに」 武道館での初の有観客ライブを振り返る

音楽ユニット「YOASOBI」のikuraさん(左)とAyaseさん
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音楽ユニット「YOASOBI」のikuraさん(左)とAyaseさん

 ボーカルのikuraさんとコンポーザーのAyaseさんによるユニット「YOASOBI」が2021年12月4日に日本武道館(東京都千代田区)で開催した初の有観客ライブ「YOASOBI『NICE TO MEET YOU』」の模様が、1月22日にWOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信される。また、昨年2月と7月に行われた無観客配信ライブから厳選したライブ映像とインタビューで構成されたスペシャル番組「YOASOBI Live Selection」も放送。ソロとして個々でも活躍する2人に、ユニットの成り立ちやライブに込めた思い、今後の抱負などについて聞いた。

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 ◇ソロの活動が昼の顔ならYOASOBIは夜の顔

 小説・イラスト投稿サイト「monogatary.com」から誕生し、「小説を音楽にするユニット」として2019年10月に活動を開始したYOASOBI。デビュー曲「夜に駆ける」が話題を呼び、2020、2021年には「NHK紅白歌合戦」に出場した。

 小説を原作とするその音楽の魅力や特性について、Ayaseさんは「曲を聴いてから小説を読む、小説を読んでから曲を聴く……という行き来の中で、両方の関連やつながりの答え合わせができる瞬間がある。一つの物語をいろんな形で取り入れることで、その世界観を多角的かつ立体的に楽しめるし、“没入度”みたいなものもすごく高くなっていると思います」と説明する。

 ikuraさんも「楽曲、ミュージックビデオ、小説と、聴いてくれる人がいろんな入口から物語を体験できるし、さまざまな要素から自分の解釈で余白を埋めていく面白さがある。そうやって(リスナーが)作品に参加していただけるのは大きいですね。私たち自身も、小説から音楽を作って、そこに歌を乗せて……という過程の中で、一人一人の思いが加わって、濃密なものが出来上がっている気がしています」と話す。

 ikuraさんはシンガー・ソングライター「幾田りら」としての顔を持ち、AyaseさんはボカロPとしての活動やさまざまなアーティストへの楽曲提供も手がけている。Ayaseさんは、「2人がソロでやっていく延長線上で、交わるところがYOASOBIという感覚。ソロの活動がお昼の顔なら、YOASOBIは夜の顔という感じで。そういった合流地点だからこそ、いろんなチャレンジや試みができる、という意味での“遊び心”とも掛けて、YOASOBIにしました」とユニット名の由来を明かす。

 ◇夢の場所、武道館に立ち「感無量」

 活動をスタートさせて2年余りたった2021年12月4、5日に日本武道館での初の有観客ライブ「NICE TO MEET YOU」(はじめましての意)が実現した。Ayaseさんは「武道館のステージにはいつか絶対に立ちたいと思っていた」といい、ikuraさんにとっても「歌手を志した小さな頃から武道館はずっと夢の場所だった」と感慨深げに語る。

 憧れの舞台に立ち、Ayaseさんは「最初は緊張もしていたんですけど、すごく楽しかったです。やっている最中でさえ、曲が進んでいけば終わってしまう、という名残惜しさを感じるほどでした。しかも初の有観客ライブで2DAYSという、自分たちにとっての“初”があって、目標であり、夢が同時にかなった。感無量です」と喜びをかみしめる。ikuraさんも「ずっと待ち焦がれていた『初めまして』だったので本当にうれしかったです。拍手をいただいたり、いろんな瞬間で、この空間が一つになって音楽を奏でているんだなと感じられて……。この2年間の歩みを振り返る瞬間もあって、すごく感動的な時間でした」としみじみ語る。

 印象的だった場面として2人が挙げたのは、11曲目「優しい彗星」での一幕。間奏部分で、客席中に携帯電話のバックライトが点灯した光景を見た瞬間だという。Ayaseさんは「事前に言っていたことでもないのに、みんながあの空間を作り上げてくれた。武道館全体が一体となっているのが視覚的に分かって、すごく感動しました」と語る。ikuraさんも「今回のライブは、感謝を音楽で届けるというのが、目標だったんです。それが、みんなからサプライズみたいな形で返してもらって、プレゼントをもらったような気持ちでした。心の中でうれし泣きしてました」と振り返る。

 ◇セット&演出のテーマは観客との距離の近さ

 演出面には「メチャメチャこだわった」とAyaseさんは力を込める。「360度、客席のどこからでもステージを見られるようにして、かつアリーナ席をつぶして、全部ステージにしました。そうすることで、お客さんの近いところまで行くことができる。あと、ステージをLEDパネルにして、そこに映像を映し出すことで、2階席の奥の人も演出を楽しむことができるようにしました。誰一人として置いていかないライブが実現できたんじゃないかと思います」と充実感をにじませる。

 ikuraさんは、「『ハルカ』『たぶん』という曲でステージの外周を回ったんですけど、そうやってお客さんの一番近くに行けるのはボーカルだけなので、『大きな会場だけど、一人のあなたに向けて歌ってます』と伝えるために、一人残らず全員見るぞ!というつもりで歌っていました」とうれしそうに語る。

 着用した衣裳はバンダナをモチーフにしたもので、そのデザインの意図についてAyaseさんは「ステージのセットが、すごくデジタルで最新鋭の技術を詰め込んだものだったので、その中でも、YOASOBIという存在が、人間としてパフォーマンスしてるということで、温かみや親しみやすさを入れたいと思ったんです。バンダナをパッチワークみたいにつないで、手作り感を意識しました」と明かす。

 今回の番組の楽しみ方を聞くと、Ayaseさんは「ステージ上のセット、曲ごとに変わっていくリフト式のステージ、映像、ライティング……。武道館自体が衣装チェンジしているかのように変わっていくさまを、くまなくしっかり見てもらえたらうれしいです」とアピールする。ikuraさんは「演出の全貌や一番いい部分が見られるのは、映像の良さだと思うので、存分に堪能してもらいたいなと思います」と語った。

 ◇無観客配信ライブならではの特殊な演出も

 武道館ライブの放送に合わせて、2021年2月に東京・新宿ミラノ座跡地の工事現場で、7月にユニクロ有明本部・UNIQLO CITY TOKYO(東京都江東区)内で行われた無観客生配信ライブから厳選したライブ映像に本人たちのインタビューを交えた特別番組「YOASOBI Live Selection」も放送される。Ayaseさんは「配信ライブだからこそできる特殊な演出や、通常では見られないアングルからのカットもあって、映像作品として楽しんでもらえるものを意識しました」と見どころを語る。

 生の配信(オンライン)ライブは、鳴らした音がそのままクリアに視聴者へ伝わるだけに、独特の緊張感もあるといい、ikuraさんは「オンラインライブは難しいことがたくさんありました。その大変さを経験して肝もすわって、そこから有観客ライブに臨めてよかったです。オンラインでのメリットが、武道館にも生かされたんじゃないかなと思います」と話す。

 ◇2022年、そして10年後は?

 Ayaseさんは、武道館での有観客ライブの成功を一つのステップに、2022年は「ツアーやフェスなど、活動の幅を広げていきたい」と意欲を見せる。ikuraさんも「お客さんとのコミュニケーションをとることができるライブを、もっと進化させてやっていきたいです。楽曲も、小説を音楽にするということに真摯(しんし)に向き合いながら、歌を乗せて、『YOASOBIにはまだまだこんな一面があるんだよ』と見せていけるように頑張りたいなと思います」と意気込む。

 さらに、「10年後の展望」を尋ねると、ikuraさんは「音楽と自分は切り離せないということは実感しているので、10年後も歌を歌っていたいし、長く愛されるアーティストでいられたらいいなと。YOASOBIという活動があるからこそ、ソロも頑張れるし、一人で曲を書いて歌うという活動をやっているからこそ、YOASOBIで自分ができることがある。その関係は続いていたらいいなと思います」と将来を見据える。

 Ayaseさんは「個人的にはスタジオ付きの一軒家に住んで、大きな犬を3匹飼っているような生活になっていてほしい」と笑顔でコメントしつつ、「音楽に触れている時間がやっぱり一番幸せなので、音楽は絶対に続けていると思います。ユニットとしても一人のミュージシャンとしても、圧倒的な存在になっていたいなと思うし、YOASOBIとしては、国民的ユニットになっていたいです」と熱く語った。

 「YOASOBI Live Selection」は1月22日午後7時から、「YOASOBI『NICE TO MEET YOU』」は同日午後8時から、共にWOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信。放送終了後から1週間はアーカイブ配信もされる。

 (取材・文・撮影/水白京)

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