水曜日のダウンタウン
名探偵津田 第3話
12月11日(水)放送分
世界最高峰の映画の祭典「第94回アカデミー賞」の授賞式が2022年3月27日(現地時間)に米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。生中継するWOWOWの番組「生中継!第94回アカデミー賞授賞式」で今回が15回目の出演となるジョン・カビラさんと、昨年に続き2回目の案内役を務めるフリーアナウンサーの宇垣美里さんに、今回の注目作品や、日本映画として初めて作品賞と脚色賞にノミネートされた濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」などについて聞いた。
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宇垣さん 昨年がとても楽しかったので、今年ももう、案内役を務めさせていただけるものだと思ってずっと準備をしておりました(笑い)。無事お声をかけていただいてとてもうれしく思っています。今年は授賞式の前に劇場や配信で見ることのできる作品がすごく多くて、事前の準備がしやすいので、「知らない作品を知らない人たちがお祝いしている」のではなく「これも見たあれも見た、その中でこれが選ばれたんだ」と見ることができるのでは。特に「ドライブ・マイ・カー」もありますから、より人ごとではなく、自分も参加しているような気持ちで楽しめるのではないかと思いますし、そういった視聴者のみなさんのお手伝いができたらと思います。
カビラさん 心待ちにしていました。その理由が「ドライブ・マイ・カー」の画期的な歴史に残るノミネート。候補になるだけでも歴史的な作品賞へのノミネートで、歴史的な時間をみなさんと共有できる幸せを感じています。コロナ禍で通常のセレモニーではなかった前回と違い、やっとドルビー・シアターからお届けできて……残念ながら僕らは東京ですけど(笑い)。宇垣さんは本当にこちらがうなるほどの洞察と観察と進行で、またご一緒できることにも幸せを感じています。
宇垣さん もうカビラさんがいてくださるだけで「安心、安心」です。思思わぬところから飛び出すトリビアが素晴らしくて、すごくて。それを知るとより面白くなる、という知識もご存じなので、みなさまのお話を聞きつつ、私も勉強させてもらっているような気持ちで挑もうと思っています。
カビラさん いやいやいや、「脱線」が僕のミドルネームなので……「ジョン・脱線・カビラ」なので、軌道修正を愛のムチでよろしくお願いします(笑い)。
カビラさん 日本のエンターテインメントを愛する者であれば、何といっても注目は「ドライブ・マイ・カー」。監督賞では日本人3人目のノミネート、作品賞では初、脚色賞も初。そして国際長編映画賞は「おくりびと」(2008年)以来の受賞は間違いないんじゃないかと思います。今回は“史上初”というポイントがいろいろあって、まずステージを飾る(「ドリームプラン」で歌曲賞ノミネートの)ビヨンセと(「「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」で歌曲賞ノミネートの)ビリー・アイリッシュ。ビヨンセもオスカーは初なので喜びのスピーチを聞くことができるかもしれません。ビリー・アイリッシュは、アデルとサム・スミス以来のボンドソングが受賞なるか、と。
宇垣さん 注目作というと、もちろん「ドライブ・マイ・カー」ですね。「どれぐらいの歴史を残してくれるのか?」と。いくつ受賞するのかがすごく楽しみです。あと、受賞したときにどのようなスピーチをなさるのかな、ということや、それをアカデミー賞のみなさんがどういうふうに受け止めるのかということも、同胞の一人として楽しみに思っております。
宇垣さん あれだけ繊細で丁寧で静かな作品が海外でも受け入れられたということが、とてもうれしいと同時にびっくりしています。じっくり考えるのが好きな人が、好きなタイプの作品と思いきや、万人に響いているということは、それだけ土壌もできているということでしょうし……作品に観客が追いついた部分もあるのかなと思っています。村上春樹っぽさは残しつつも、そこに対する批評性のようなものを感じる作りでしたし、内容は、実は結構「パワー・オブ・ザ・ドッグ」に似ていると思いました。自分の心の声に耳を傾けないとどうなるのかをすごく時間をかけて描いていて。ここまで時間をかけないとキャラクターは動き出さないんだよ、ということを丁寧に描いているので時間がかかるのも当然だけど、一切飽きず、ぜいたくな時間を過ごしました。
カビラさん 3時間見た後に、つい妻の顔をじっと……見入ってしまって(笑い)。別に秘密を僕らが抱えているわけではないんですけど、実際にどれだけ愛する人と向き合えているのかな、という部分を考えさせられる作品ですよね。「こんなにせりふのない心のロードムービーがあるのか」という展開ですし、フラッシュバックによって理解してもらうという展開をほぼとっていない。基本的にタイムラインはリニアだし、大きな出来事はあるけど、感情の起伏をここまで抑えていながらまったく退屈させない。かといって、ハラハラドキドキするわけでもない。淡々と染み込んでいく。見終わった後に「これはすごい映画だな」と感じさせます。
宇垣さん 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のベネディクト・カンバーバッチがすごく好きでした。(役は)とにかく本当に、めちゃくちゃ嫌なやつなんですよ。本当に信じられないぐらい高圧的で威圧的で、人を見下した嫌な感じの男なんですけれど……。ただ、「彼がなぜこうなってしまったのか」をせりふではない部分で表現していて、彼の孤独感や悲哀、なぜこうならなければならなかったのかということが、歴史背景を含めて非常に丁寧に演技によって表現されていると思いました。だからこそ嫌いになれないし、彼の男性に対する哀れさみたいなものも感じてしまう。ただ断罪するだけではない作品になっているのは、彼の演技の賜物(たまもの)といってもいいのではないかと。「好き!」と思いました。
カビラさん ひょっとしたら歴史的な初オスカーなのか、という(「ドリームプラン」の)ウィル・スミスですかね。予想サイトでもかなりトップランナーとして走っています。「幸せのちから」以来のノミネートで、三度目の正直で取ることができるか注目しています。ただ、個人的に素晴らしかったと思うのは、カンバーバッチだったり、アンドリュー・ガーフィールドだったり。ガーフィールドは「スパイダーマンがこんなに歌って踊れるんだ!」と(笑い)。
カビラさん 「パワー・オブ・ザ・ドッグ」がフロントランナーかなと思っています。ただ個人的に見て心温まる作品は「ウエスト・サイド・ストーリー」。また、コロナ禍にあって、家族の大切さや絆などいろんな思いが交錯する中、根底に流れる愛と信頼を感じられる作品は「コーダ あいのうた」が挙がります。賞の行方ということになると、ついそれ(本命)が耳目を集めることになってしまうんですが、ノミネートされた10作品は「なんて時間の浪費をしてしまったんだ」と思うわけがない作品ばかりで、全部お勧めです。宇垣さんがおっしゃったように、今回は記録的に作品を事前に見られる環境が整った。“壮大な予告編”ではなく、実際に見て授賞式が楽しめる稀有(けう)な状況なので、ぜひ見ていただきたいですね。
宇垣さん どれくらいほかの賞にもノミネートされているか、という視点でいえば、やっぱり「パワー・オブ・ザ・ドッグ」かなと思いつつ、私は「ベルファスト」がすごく好きでした。子供の目から見た大好きな街がどんどん崩れていくさまを、すごく真っすぐに描いていて……だからこそ、その中にすっと入っていけるし、紛争を経験したことのない私でも「あっ、こういうふうに日常って崩れていくんだ」と心を寄せることができる。子どものやんちゃさや愚かさ、おじいちゃんとおばあちゃんに教えられたことなどがすごく優しいまなざしで描かれていて、「コーダ あいのうた」と同じようにきっとみんなが好きな作品だと思います。
カビラさん 賞の行方は当然注目なんですけれども、ショーとしての価値がものすごく高いと思うんですよね。オープニングがどのくらいのものになるのか。作品賞や演じ手のみなさんをコラージュした内容になるのか、それともスタンドアップのコメディアンが一人で場を仕切るのか、もしくは複数の人たちが出てきて仕切っていくのか。どういった人がどういう反応をするのか、自分の目で見ないともったいない。そして「あのときの、あのシーンを覚えている?」と、みんなで共有できるシーンがちりばめられるから、特に若い世代のみなさんにはこれが宝物になっていくと思います。
授賞式の模様は、「生中継!第94回アカデミー賞授賞式」と題し、3月28日午前7時半からWOWOWプライムで生放送、WOWOWオンデマンドでライブ配信される。カビラさん、宇垣さんが案内役を務め、俳優の斎藤工さんと「Sexy Zone」の中島健人さんがスペシャルゲストとして登場するほか、タレントの河北麻友子さん、映画評論家の町山智浩さんがスタジオゲスト、映画ライターの小西未来さんがレッドカーペットリポーターとして出演する。
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2024年12月19日 06:00時点
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