ニジゲンノモリ:淡路島を「世界に向けた観光地に」 「ゴジラ」「ドラクエ」「鬼滅の刃」純日本産コンテンツのテーマパークができるまで

兵庫県立淡路島公園アニメパーク「ニジゲンノモリ」にあるアトラクション「ゴジラ迎撃作戦」 TM & (C)TOHO CO.,LTD.
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兵庫県立淡路島公園アニメパーク「ニジゲンノモリ」にあるアトラクション「ゴジラ迎撃作戦」 TM & (C)TOHO CO.,LTD.

 兵庫県立淡路島公園(兵庫県淡路市)内のテーマパーク「ニジゲンノモリ」が7月に開園5周年を迎える。東京ドーム28個分という134.8ヘクタールの広さに、「クレヨンしんちゃん」「NARUTO&BORUTO」「ゴジラ」「ドラゴンクエスト」とコラボレーションしたアトラクションが設置されているほか、9月30日まで「鬼滅の刃」とのコラボイベントも開催されている。どうして淡路島に日本のアニメ、マンガ、ゲームなどのサブカルの人気コンテンツが集まった巨大レジャー施設が誕生したのか。そしてニジゲンノモリが目指すところは? 運営するパソナグループに聞いた。

ウナギノボリ

 ◇淡路島で地方創生を

 同社と淡路島との関係は、2008年にさかのぼる。同社は当時、農水省からの委託事業として、地方の担い手不足の農家と首都圏の若者をマッチングさせる事業を展開していた。そのためには農地を貸してくれる自治体が必要だったが、名乗りを上げたのが兵庫県淡路市だった。

 その後も、廃校を改装した複合観光施設をオープンさせるなど同所で地方創生事業を展開。兵庫県は2013年に「県立淡路島公園における民間事業の企画提案」を公募し、同社の「淡路マンガ・アニメアイランド事業」が採用された。2017年には「都市公園法」が改正され、行政が行っていた公園施設の運営に、民間企業が参画できるようになり、同年7月、ニジゲンノモリが誕生した。

 ◇純日本産コンテンツへのこだわり

 同社が目指すのは「淡路島を世界に向けた観光地にすること」だ。ニジゲンノモリが誕生した2017年は、訪日外国人が2800万人を超えて過去最多を記録、2020年の東京五輪に向けてインバウンドが活気づいていた時期だ。どうすれば淡路島に外国人が訪れてくれるかを模索し、「クールジャパン」として海外から注目されていた、純日本産のサブカルコンテンツに目をつけた。

 2017年に手塚治虫の名作「火の鳥」と、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」を題材とした二つのアトラクションがオープン(「火の鳥」は2022年2月に終了)。その後も、2019年に「NARUTO&BORUTO」、2020年に「ゴジラ」、2021年に「ドラゴンクエスト」、2022年に「鬼滅の刃」(同年9月30日までの期間限定)のアトラクションが設置された。

 「火の鳥」からスタートした理由について、同社の広報は「日本のマンガ文化の生みの親である手塚治虫先生の作品からスタートしたかったこと。また、手塚先生が兵庫県の出身だったこと」と語る。手塚作品の中でも「“火の鳥”というキャラクターが、兵庫県が阪神淡路大震災からの復興を象徴するキャラクターだったこと」も理由の一つだった。

 そのほか、「クレヨンしんちゃん」は台湾・香港を中心とした東南アジア、「NARUTO&BORUTO」は欧州、「ゴジラ」は北米で人気があり、インバウンドを意識した純日本産コンテンツとしてアトラクションに採用された。

 国内で人気の「ドラゴンクエスト」は、シリーズ生みの親である堀井雄二さんが、淡路島の洲本市出身であり、「ぜひかなえたいコラボレーション」だったという。大型の体験型アトラクションを作るのは、発売元のスクエア・エニックスとしても初めてのことだったというが、「(その前に)火の鳥、しんちゃん、NARUTO、ゴジラといったコンテンツと連携し、お客様に満足いただけるコンテンツを作り上げられたからこそ、実現することができました」と充実感をにじませる。

 さらに、「『ドラゴンクエストアイランド』の完成で、一つの区切りとなりましたが、その後、さらなるアトラクション展開を目指す中で、社会現象にもなった『鬼滅の刃』とコラボレーションすることができました」という。

 ◇都市型レジャー施設にはない自然と一体感のある体験

 ニジゲンノモリのもう一つのこだわりは、淡路島という立地を最大限生かし、豊かな自然の中に、屋外の体験型のアトラクションが設置されていることだ。

 例えば「ドラゴンクエストアイランド 大魔王ゾーマとはじまりの島」では、参加者は雄大な自然に囲まれた城下町やダンジョン、森の中を歩き回って“冒険の旅”を楽しむといった、都市型レジャー施設にはない自然と一体感のある体験を提供している。

 「鬼滅の刃」を題材とした「ナイトウォーク『那田蜘蛛山』」では、森の中の道、木、岩などにプロジェクションマッピングし、「季節によって自然の表情も移り変わりますので、何度見ても新たな見え方が楽しめます。設計の中には、夜の道を歩きながらも自然に聞こえてくる音(スピーカー位置)の調整には、時間をかけてこだわっております」と明かす。

 ◇「集客もだが地方の新たな可能性を伝えたい」

 6月10日から、政府は外国人観光客の入国を再開したため、ニジゲンノモリもさらなる来場者増につなげたい考えだ。広報は「これからは、インバウンドが観光の大きな柱として戻ってくると思うので、海外に魅力が伝わるアトラクションの運営や、サービスを行っていきたい」と語る。

 コロナ禍前の2016年のデータだが、年間約3000万人が来場する東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)、年間来場者数1400万人突破のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市此花区)などと比較すると、ニジゲンノモリは、開園した2017年7月から2019年9月末までの約2年間の来場者数が230万人と規模は小さく、まだまだ知名度が低いのが実情だ。

 だが、「私たちとしては、単にお客様を集めるだけでなく、淡路島の地方創生事業として、日本のこれからの未来を支える地方の新たな可能性を社会全体に伝えるために貢献できればと考えております。県立公園と連携させていただいていること、純日本産のニジゲンコンテンツのみとコラボすること、自然を生かした“ニジゲンノモリらしさ”を保ったまま、日本国内やインバウンドの観光客の方々に楽しんでいただければ」と前を見据えていた。

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