小野憲史のゲーム時評:ゲーム事業で増すマイクロソフトの存在感 日本市場でのXbox市場は

Xbox事業を統括するフィル・スペンサー氏
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Xbox事業を統括するフィル・スペンサー氏

 超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発・産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、マイクロソフトのゲーム事業について語ります。

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 モバイルゲームの成長におされて、いまや世界の家庭用ゲーム市場は全体の4分の1程度に留まっている。もっとも、家庭用ゲームには熱心なゲームファンが多く、メディアの注目も集めやすいため、業界のショーケース的な役割を担い続けている。

 こうした中、日本で静かな注目を集めているのがXbox Series X/Sだ。発売から1年半が経過し、市場に製品が出回り始めている。マイクロソフトのサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」の利便性も手伝い、ユーザーの評価も上々だ。

 マイクロソフトが6月13日(日本時間)に行ったオンラインカンファレンス「Xbox & Bethesda Games Showcase 2022」でも、独自戦略が目立った。ポイントは3点で、サードパーティーのゲームを絞り込み、マイクロソフトグループのゲーム紹介に注力したこと。今後12カ月内に発売されるタイトルの紹介に絞り込んだこと。「Xbox Game Pass」対応を前面に押し出したことだ。いずれも、これまでにはなかったスタイルだ。

 背景にあるのがデジタル流通におけるゲームビジネスの変化だ。今や「Xbox Game Pass」対応ゲームは、Xbox Series X/Sだけでなく、Windows PCやスマートフォンでも楽しめる。鍵を握るのが同社のクラウドサービス「アジュール」で、マイクロソフトは2010年代後半にOSや統合ソフトを売るのではなく、アジュールの利用額徴収を柱としたビジネスモデルに転換した。ゲーム事業もまた、その流れの中に位置づけられているのだ。

 それではマイクロソフトの課題は何だろうか。それは「Xbox Game Pass」の魅力を高めるために、大作ソフトを定期的に投入し続けることだ。同社でXbox事業を統括するフィル・スペンサー氏は、カンファレンスで「毎月1本大作ソフトを投入し続ける」と明言した。クリスマス商戦に売上が集中するパッケージゲームと違い、サブスクではラインアップが常に話題性を帯び続けることが求められる。今回のカンファレンスはその覚悟と体力をアピールするものになった。

 もっとも、マイクロソフトは本年1月にアクティビジョン・ブリザードの買収意向を発表しており、買収が認められれば、これらの人気タイトルも「Xbox Game Pass」に投入される可能性が高い。買収額は約7.8兆円と報じられており、その元を取るためにも、同社は「Xbox Game Pass」への注力を続けるだろう。自他ともに認めるゲーマーとして知られるスペンサー氏だけに、「コール オブ デューティ」などの人気IPを投入しない理由がないからだ。

 こうした姿勢は日本のユーザーにも受け入れられつつある。カンファレンスではコーエーテクモゲームスの新作ゲーム「WOLONG」発表と、アトラスの「ペルソナ3 ポータブル」「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」のXbox Series X/S、XboxOne、PC、クラウド向けリリースと、Xbox Game Pass対応などが発表され、ファンを驚かせた。これまで不本意な販売台数が続いてきたXboxが日本市場でも成長を見せるか、引き続き注目していきたい。

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 おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーランスで活躍。2011からNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)の中核メンバー、2020年から東京国際工科専門職大学講師として人材育成に尽力している。

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