名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
興行収入100億円を突破するシリーズ最高のヒットを記録している劇場版アニメ「ONE PIECE FILM RED」(谷口悟朗監督)。どうしてここまでのヒットを記録しているのか。アニメコラムニストの小新井涼さんが独自の視点で分析する。
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早くも興行収入100億円を突破し、ますます話題の「ONE PIECE FILM RED」。27日からは新たな入場者プレゼントも始まり、興収100億円突破の緊急特番も放送されるなど、まだまだ夏休みシーズン後もこの勢いは続いていくことが予想されます。
しかし、中には気になってはいるものの、しばらく原作もアニメもみていないし楽しめないのではないかと、鑑賞をためらってしまっている人もいるかもしれません。
本作は、そうしたしばらく「ONE PIECE」を離れていた人や、そもそもこれまでマンガもアニメもあまり見たことのない「作品は知っている」くらいの人たちにとっては、楽しむことが難しい作品なのでしょうか。
結論から言ってしまうと、むしろその逆で、本作は上記のような人たちでも十分に楽しむことができる作品だと思います。ポイントとなるのは、本作がそれ自体で一旦完結するオリジナルエピソードの劇場版作品であるということです。
もちろん、今回の登場キャラを全員知っていて、キャラ同士の関係性や物語の背景が分かった方が“より一層楽しめる”ことは間違いありません。しかし本作は、ルフィたちの長い旅の途中のひと幕であると同時に、「ウタ」という初登場のキャラクターを中心とした約2時間の独立した物語としてもみることができます。そして、その物語を楽しむための用語や世界観、人物の関係性は、最低限映画内できちんと説明もされるため、多少知らないキャラや展開があったとしても、置いてけぼりになることもないでしょう。
極端な話、「ルフィが海賊王を目指して冒険する作品」「ルフィとチョッパーくらいは分かる」くらいの知識があれば、これまでのルフィたちの冒険を全部は知っていなくとも十分に楽しめる作品だと思います。
上記に加えて、特に今回の劇場版ならではのポイントとなるのが、本作の重要な要素である“歌”の存在です。
本作では、前述のウタによる歌唱シーンが、これまでの劇場版ではみたこともないくらい随所に登場します。そしてライブ会場でのパフォーマンスはもちろん、お馴染みのアクションや回想シーンなどでも度々流れるそうした歌の存在が、本作の鑑賞を、シンプルな映画鑑賞としてだけでなく、まるで“ウタのライブへの参加体験”のようにもしてくれるのです。
このことは本作を、「ONE PIECE」の映画であると同時に、映画館の音響と大画面で迫力の歌と映像表現を堪能できる極上のライブエンターテイメントたらしめてもいます。それもあって本作は、これまであまり「ONE PIECE」をみたことがないけれど歌やアーティスト、MV等をきっかけに興味を持ったという人が、そこを入り口に飛び入り参加しても楽しめるような、かなり間口の広い作品にもなっていると思うのです。
今や誰もが知っている「ONE PIECE」ですが、それほど有名で長寿作品であるがゆえに、少し作品から離れていたり、あまりよく知らないという人にとっては、いきなり映画に行くのは少しハードルが高いかも、と敬遠してしまうこともあるかもしれません。しかし、それ単体で一旦完結する、作品の魅力が凝縮された約2時間の劇場版というのは、実はそうした人たちにとって、いきなり原作マンガ100巻以上やアニメ1000話以上に挑むよりは作品への入り口としてむしろ手を出しやすい存在なのではないでしょうか。
加えて今回の「ONE PIECE FILM RED」は、これまでの作品とは一風変わって、ライブエンターテイメントとしての体験も楽しめるものとなっています。難しいことを考えず、まずはライブ参戦してみる感覚で本作を味わい、映画鑑賞後に気になったところから原作マンガやアニメをチェックしてみて、作品への理解を深めた後でもう一度映画を鑑賞してみるといった楽しみ方だってできるはずです。
その意味でも、本作はハードルが高いどころか、むしろしばらく作品を離れていた人や、マンガもアニメもあまりみたことのない人たちが躊躇するにはもったいない、これから改めて「ONE PIECE」の世界へ飛び込んでいくための絶好の機会でもあると思います。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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