最愛:民放連テレビドラマ最優秀賞受賞で祝福相次ぐ 放送終了後も根強い人気

連続ドラマ「最愛」に出演した(左から)井浦新さん、吉高由里子さん、松下洸平さん(C)TBS
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連続ドラマ「最愛」に出演した(左から)井浦新さん、吉高由里子さん、松下洸平さん(C)TBS

 女優の吉高由里子さん主演で、2021年10月期に放送された連続ドラマ「最愛」(TBS系、金曜午後10時)がこのほど、2022年の「日本民間放送連盟賞」のテレビドラマ最優秀賞を受賞。放送終了から9カ月近くがたっているが、SNSなどで祝福のコメントが数多く寄せられ、根強い人気をうかがわせている。改めて昨年を代表する名作となった「最愛」の魅力を、ほぼネタバレなしで振り返りたい。

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 「最愛」は、吉高さん演じる、殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央と、松下洸平さん演じる、梨央の初恋相手で事件の真相を追う刑事・宮崎大輝、そして井浦新さん演じるあらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎の3人を中心に、さまざまな人々の思いや生きざまを切なく描いたラブサスペンスだ。

 反響も大きく、視聴率TVerの再生回数が初の2000万回超えを記録したほか、2021年12月度のギャラクシー賞月間賞、第38回 ATP賞テレビグランプリのドラマ部門最優秀賞など数々の賞を受賞した。

 ここまでの人気と評価を得たのは、ストーリー、キャスト、音楽を含めた演出の三つの要素が高いレベルで融合したことが大きい。

 物語のテーマとなっているのが、タイトルでもある“最愛”だ。愛といっても捜査される側と捜査する側に分かたれた梨央と大輝の恋愛模様だけではなく、親子愛、きょうだい愛、献身的な愛と、さまざまな愛の形がない交ぜになって横糸となり、そこに15年前の“ある事件”に端を発した連続殺人事件の真相を追うミステリー要素が縦糸となって、ストーリーが丁寧に紡がれているのだ。

 中でも最終回での真犯人の独白とその後の展開は驚くべきものだった。昨今のドラマではSNSなどを中心にした考察もさかんだが、本作でも考察ブームが過熱。ストーリーが進むごとに謎が解決するかと思いきや、“シロ”だと思っていた人物が怪しく見えてきたりと、最終回まで犯人が分からないようになっているのは当然だが、真犯人の意図にも“最愛”が大きく関わり、そしてその後も余韻を持たせるいいラストだった。特に“考察もの”は、真相が判明した後の展開がおざなりになってしまいがちなだけに、「最愛」のラストはすがすがしく、その後の展開も期待してしまうようなものだった。

 こうした完成度の高いストーリーに血を通わせたのが吉高さんをはじめとしたキャスト陣だった。舞台が15年前と現在の2部に分かれていたこともあり、キャスト陣は高いレベルの演技を要求されたはずだ。吉高さんが演じた梨央は、天真爛漫(らんまん)な高校生だったが、後にある思いから若き経営者へと変貌を遂げ、さらに殺人事件の重要参考人でもあるという“要素”の多い難役。松下さんが演じた大輝も、事件を追う刑事としての職務と梨央への思いに揺れる役どころで、視聴者の共感を得た。

 さらに、井浦さん演じる加瀬は、真田グループの“番犬”として真田家と会社を守る弁護士だが、次第に梨央に思いを寄せ、警察や世間から疑惑の目を向けられる梨央を全力で守り抜こうとするという大人の魅力あふれるキャラクターだった。

 他のキャスト陣も梨央の母で真田ホールディングスの社長・真田梓役の薬師丸ひろ子さん、梨央の父、朝宮達雄役の光石研さんといったベテラン勢はもちろんのこと、若手キャストも存在感を発揮。特に高橋文哉さんの好演が光った。

 スタッフには、プロデュースを新井順子さん、脚本を奥寺佐渡子さんと清水友佳子さん、演出を塚原あゆ子監督と2017年4月期に放送され話題を呼んだ「リバース」の制作陣が集結。さらに宇多田ヒカルさんの主題歌「君に夢中」が毎話印象的なシーンで物語を切なく彩った。

 全ての要素がうまくかみ合い、最初から最後まで丁寧に作り上げられたことで、根強いファンを生んだ「最愛」。放送後も劇中の衣装や小道具などを展示した「最愛展」が行われたり、ロケ地となった白川郷(岐阜県)などを巡るバスツアーが実施されるなど、歴史に残る珠玉の名作になったといえそうだ。

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