女優の前田敦子さんが主演する映画「もっと超越した所へ。」(山岸聖太監督)が10月14日に公開される。クズ男を引き寄せてしまう4人の女性たちの恋愛模様を描いた本作で、前田さん演じるデザイナー・岡崎真知子の相手役を務めるのが、人気グループ「Sexy Zone」の菊池風磨さんだ。菊池さんは、甘え上手でヒモ体質のストリーマー・朝井怜人役で、「逆に分かるところを知りたい」と思うほど“共感ゼロ”だったという。グループとしての活動だけでなく、バラエティーからドラマ、舞台など幅広いジャンルで活躍している菊池さんに、役作りから真知子と怜人の関係性といった本作の魅力や、少しずつ広がりを実感してきたと語る自身の活動について聞いた。
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映画では、真知子と怜人をはじめ、4組のカップルを描く。可愛い男の子に目がない真知子は、部屋に転がり込んできた怜人をつい養ってしまい、強く束縛する怜人から抜け出せなくなっていく。
元カノから金を振り込んでもらうなど、怜人については「男としてダメなところが多すぎて」と話す菊池さん。「逆に分かるところを知りたい」といい、共感できる部分はなかったものの「クズ男なんだと割り切って演じていました。ある意味、自分と真逆のことをすればいいというか、役とすり合わせる必要もなかったので、考えずにできたような気がします」と振り返る。
演じる上では、「甘えられるだけ甘えてみよう」という思いも。「僕は甘えるタイプではないので、普段絶対できないことをやっていく面白さはありました。ここまで自分の全てをさらけ出して、甘えることに全振りするのはできませんが、できたらすごく楽なんだろうなと思ったり。まあ、僕は嫌ですけどね」と笑ってみせた。
山岸監督は、そんな怜人について「どうしようもない男だけど可愛げは残したい」とこだわりがあったという。菊池さんは「弱さを見せたり、ダメな男なのにどこかで許してしまうとか、女心をくすぐる可愛さについては監督がよくお話しされていました。なので、どうすれば怜人という人物が可愛く見えるのか、相談しながら作っていきました」と明かす。
そうして演じた怜人を完成作で見て、「ツッコミどころが多いですよね(笑い)。真面目に理不尽なことを言っていたり、そんな格好でそんなこと言う?みたいな面白さが結構あって、僕はツボでした」と菊池さん。「やっぱりそこまで突き抜けちゃうと、ちょっと可愛いなって思えてくる。クズだけど、クズだな~って言える愛嬌(あいきょう)というか。どこかで憎めないキャラクターにはなれているかなと」と語っていた。
映画全体の感想については、「きっとどこかで分かってしまう自分がいる。表には出さないけど、こういう自分もどこかにいるよなと思う部分があって、自分の嫌なところを見せられているような感じがしましたね」と話す。
「弱いところをグッと引っ張り出されるけど、それも肯定してもらえている気がする。ツッコみたくはなりますが、嫌な気持ちで終わるような映画ではないと思います。人は他人のことに口を出してしまいがちですが、2人がよければそれでいい、それも一つの愛の形だよね、と着地できる見せ方がうまいなと感じました」
菊池さんから見た真知子と怜人は「沼にハマっている」関係で、「傷をなめ合っているようですが、真知子は怜人のおかしさに気づいて、少しずつ成長していくんですよね。でも、その中には『大人にならなきゃ』という責任感がありつつ、成長してしまうことで生まれる怜人との溝や差にさみしさを感じているような気がする」と分析。「真知子のほうが自分自身をより理解できているからこそ、怜人の子供な部分も愛したくて、結局全部分かった上で愛しちゃうズブズブな2人だと感じました」と明かす。
役と同様に、2人の関係に共感はできないものの「真知子と怜人にとっては理想郷だから、ある意味幸せだなとは思いますね」と分析。
「端から見ると、クズ男につかまった女性かもしれませんが、“その世界”で生きている2人からすると、お互いに感じている良さがちゃんとあって。例えば、経済的に支えてくれるだけじゃない真知子の魅力だったり、実は真知子も怜人に精神的に支えてもらっていたり。“内側”でしか見られない、得られない幸福感があるんだと思います。ものすごく閉ざされた世界ではあるけど、2人にとっては幸せなんですよね。外から見ると決して美しくなくても、内から見ると実はすごく幸せ。恋愛だと、こういうことが“超越する”ことなんだろうなと」
菊池さんは、ドラマでコンスタントな活躍を見せる一方、映画への出演は今作が8年ぶり。近年は舞台にも挑戦し、バラエティー番組ではMCを務める機会も増えた。フィールドがぐっと広がった印象だが、本人はどう感じているのだろうか。
「少しずつ、いろいろなことをやっている実感が芽生えてきています。僕の場合、バラエティーを見て役のオファーをいただいたり、逆に舞台を見てバラエティーのレギュラーに選んでいただいたりと、特殊なつながり方をしているんですよ。改めて面白い世界だなと思います。そうしてオファーをいただけることで、それだけ多岐にわたるジャンルでお仕事させていただいているんだなと感じますね」
しかし、手応えはまだまだ得られていない、と謙虚な姿勢だ。特に演技では手応えを感じたことがないといい、「バラエティーだと、スタジオでの発言に対してダイレクトに反応が返ってきますが、映像作品は監督の要望に応えられているかというリアクションしかないので、フワフワしている感じ。だから、今回もすごく怖かったですね。結構ぶっ飛んだ役ですし、そもそも受け入れにくいキャラクターなのに、芝居までできていないとなると、目も当てられない役だと思っていたので。自分の中ではうまくできたのかな?というのが正直な感想ですし、なんなら今も怖いです。見てくださった方からのリアクションがまだないのでドキドキしています」と打ち明ける。
「お芝居は全然正解が分からないですし、できたなって思ったこともないんですよ。『これだ』っていう感覚があるんですかね。僕にはまだ分かりませんが、手応えを感じられるようになりたいなと」と菊池さん。さまざまなジャンルで培われた経験によって、“超越した”姿を見せてくれる日も近いはずだ。
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