エルピス:「信じられない」冤罪テーマの連ドラ企画 脚本家・渡辺あやの問題意識

連続ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」の脚本を担当する渡辺あやさん
1 / 2
連続ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」の脚本を担当する渡辺あやさん

 女優の長澤まさみさん主演で10月24日にスタートする連続ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」(カンテレ・フジテレビ系、月曜午後10時)。スキャンダルによってエースから転落したアナウンサー・浅川恵那(長澤さん)が連続殺人事件の冤罪(えんざい)疑惑を追う物語だ。脚本を担当する渡辺あやさんは、冤罪をテーマとした企画のドラマ化に「信じられないというのが正直なところ」と語る。渡辺さんに今作の着想、現代社会への問題意識などを聞いた。

ウナギノボリ

 ◇「冤罪が多いのかもしれないという不安と恐怖」

 ドラマは、実在の複数の事件から着想を得て制作された社会派エンターテインメント。恵那とその仲間たちが、犯人とされる男の死刑が確定した連続殺人事件の冤罪疑惑を追う中で、失意の底からはい上がる姿を描く。

 渡辺さんは、2003年公開の映画「ジョゼと虎と魚たち」(犬童一心監督)でデビュー。2011年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「カーネーション」などを経て、今作で初めて民放連ドラを手がける。

 渡辺さんは2016年春、プロデューサーの佐野亜裕美さんに「一緒にラブコメのドラマを考えましょう」と持ちかけられたが、話は盛り上がらなかった。その後、佐野さんが日本の冤罪事件や裁判制度に詳しいと知った渡辺さんは、冤罪事件のルポルタージュを佐野さんに見せてもらったことを機に問題意識を持ち始め、企画が始動したという。

 ドラマ化に至るまでには多くのハードルが存在し、テレビ局に断られることもあったという。ようやくドラマ化にこぎつけ、渡辺さんは「信じられないというのが正直なところです」と打ち明けるが、扱うテーマがテーマだけに批判は覚悟の上だ。それでも「現代社会では、差し障りを恐れて何も言わないがための息苦しさが生じていると日々感じています。表現者として、一つ言ってみる、表現してみるということは必要なことなんじゃないかと思っています」と語る。

 ◇「正しさ」は一言では表せない

 今作は、エースアナウンサーから転落した恵那の“復活”の物語でもある。渡辺さんは実は、企画の始動時に思い浮かべていた主演が長澤さんだったと明かす。

 「直接お会いしたことはありませんでしたが、長澤さんは表情が豊かで、落ち込んだ時と元気な時の振り幅が大きい方なのではと思っていました。役者として魅力がありますし、恵那が復活していく時の伸び幅を表現できる方です」

 いわゆる「当て書き」となり、実際に長澤さん主演でドラマ化。映像を見た渡辺さんは「長澤さんのこれまで聞いたことがない声が聞けたり、見たことがない表情が見られたり、すごく良かったです」と手応えを語る。

 渡辺さんは、今作で訴えたいこととして「正しいと思ってやっていることが本当は正しいことばかりではなかったり、良かれと思ってやっていることが実は誰かを傷つけることだったり。何が正しくて正しくないかは一言では言えないということは、私たちの現実社会にもあると思います。その危うさのようなものを伝えたいです」と話す。

 「この物語では破壊と再生が繰り返されます」と表現する渡辺さん。視聴者に対して「つい私たちは現実で壁を破ることを本能的に怖がって、自分を守ろうとしてしまいます。しかし、壁を破った先に希望の光が差すこともあることを、ドラマを通じて体感してもらいたいです」と思いを語った。

写真を見る全 2 枚

テレビ 最新記事