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11月21日(木)放送分
女優の吉岡里帆さんが出演する柳楽優弥さん主演のドラマシリーズ「ガンニバル」が、動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の“スター”で世界独占配信がスタートした。吉岡さんが演じるのは、柳楽さん演じる夫の阿川大悟と共に、都会から遠く離れた供花村(くげむら)で生活を始める妻・有希。作中では、有希は不気味な村人たちの狂気に巻き込まれていく。無力感を味わい続ける有希を演じる中で、吉岡さんは「家族を思う気持ちだけでなんとか立っている、という感覚を初めて味わった」と振り返る。吉岡さんに本作の魅力や撮影エピソードなどを聞いた。
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「ガンニバル」は、「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で連載された二宮正明さんの同名マンガが原作。さまざまな謎が渦巻く村を舞台にしたビレッジ・サイコスリラーだ。ある事件をきっかけに左遷され、都会から遠く離れた山間の“供花村”に家族と共に駐在として赴任した阿川大悟(柳楽さん)は、この村にある「人が喰われているらしい」という噂について、警察官として真相を探ろうとする。だが、やがて村の穏やかな日常がおそろしい顔を見せ始め、大悟は狂気の淵へ追いつめられてゆく……というストーリー。映画「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允さんが脚本、映画「さがす」などの片山慎三監督がメガホンをとる。
原作マンガを読み、特に印象的だったのは「村の人たちの表情」だったと吉岡さん。実写化の際にも、その部分を片山監督が大事にしていると感じたという。「村の人たちの表情が、笑っているけどその笑顔の奥が一番怖いというか……何を考えているか分からなくて、だんだん全員を疑ってしまうんです。その人間の心の描写が面白いなと思いました。中村梅雀さんが演じられていたリーダーの“さぶ”さんとか、ずっと怖いんですよ。陽気で優しくて気のいいおじちゃんなんですけど、実はずっと監視されている……みたいな。『誰を信じればいいのか』と疑心暗鬼になっていく感じが一番印象的でした」と語る。
そんな本作は、片山監督らしさが感じられる内容になっていると吉岡さん。「人間の感情や心情に寄り添って撮ってらっしゃるのを感じていたので、ストーリー的にちょっとファンタジー寄りというか、この世にはない話と捉えられそうですけど、片山さんが演出されたことでより生々しくなって。“人間の業”のようなものが描かれていて、『確かにこの状況なら、人間はここまでひどいことができちゃうのかも』と納得させられる。なぜこの村がそうなってしまったのか、なぜ大悟がここまで追い込まれるのか、その理由にすごく説得力がある演出で、それはやっぱり片山さんだからなんだろうな、と思いました」と感想を明かす。
吉岡さんが演じるのは、左遷された大悟やある事件をきっかけに口がきけなくなってしまった娘・ましろ(志水心音さん)と共に、村での生活を始める有希。原作では強さや明るさが際立っていたが、実写化するうえでは不安を抱える弱さも大事にしていたという。
「有希は娘のことで真剣に悩んでいる孤独な女性でもある。主人公の大悟が単独行動をするタイプの旦那さんなので、もう少しリアルに考えると、そこまで明るくはいられないのかな、と。いろいろなことを気遣うし、不安でいっぱいだから、ギリギリで弱い方がいいのかな、と思っていました。その方が、村の人たちの強さや狂気に巻き込まれていく感じが出るのかなと思ったので、そうした部分は演じる時に大事にしたいなと思いました。だから、強いけどやっぱり弱い。たぶん1人で子育てしているような感覚も持っているので、家族で乗り越えたいのに、いまいちまとまりが生まれないもどかしさを抱えているのかな、と」
そんな有希を演じるために意識していたのは、突然口がきけなくなった娘のことを考える、親としての感情だった。「『子供が話さなくなるって、どういうことなんだろう』ということは、すごく考えました。愛する子が突然言葉を発さなくなる。それってどれくらい不安なのかな、という感情を、一番大事に考えて過ごしていました」と振り返る。
撮影中は、有希と村人たちのテンションの差を表現するため、周囲を“見ること”も欠かせなかったという。
「大悟はどんどん外に出ていって有希が知らない世界を村で構築していくけど、有希は子供と2人でずっと孤立している。閉塞感の中にいて、どこかアウェイ、部外者な感じ。村になじもうとするけど、微妙になじみきれていないことを意識していて、テンションがちょっと違う。だから村人たちのテンションは、すごく見ていました。『村人たちの熱量がこれぐらいだったら、真逆の状態にいた方がいいのかな』と。(村で絶大な力を持つ)後藤家の人たちとお芝居することも多かったんですが、みんな強くて、個性的で、威圧的で、怖くて不思議……という要素が強い人たちなので、より普通でいよう、という感覚で。意識して見るようにしていました」
村の狂気に巻き込まれていく普通の主婦・有希役を演じることで、得られた感覚もある。撮影中は、常に無力感を味わっているような役どころのため、つらさを感じることもあったという吉岡さん。家族を思う気持ちで踏んばる感覚も初めてのものだった。
「本編を通して、私はすごく無力感をおぼえる役だったんです。こんなに何もできない役ってつらいな、と思うぐらい。家族を思う気持ちだけでなんとか立っている、そんな感覚を初めて味わった現場でした。ずっと『(娘の)ましろがいるから踏ん張ろう』という気持ちの連続なんですよね。どんどん『なんでここにいなきゃいけないんだ』という気持ちになっていくので、『子供がいるから踏ん張れる』という感覚は、この作品ならではだったなと思います」
そんな撮影を経て、完成した今作を見て「衝撃を受けました」と手応えを明かす吉岡さん。ディズニープラスというプラットフォームのもと、世界に独占配信される今作が「世界で戦えるクオリティ」を備えていることに、誇りも感じているという。
「日本のドラマで『世界で戦えるクオリティを作り上げたんだ』という、チームの一員としての誇りももちろんあります。なかなか民放だと挑戦しづらい内容だと思うので、配信で出来てよかったな、と。初めて山の中で撮影した時に、(ホラー映画の)『ミッドサマー』を感じて。村の人たちが白装束でお葬式に向かうシーンや、山から霧が立ち込めて、でも爽やかな森の香りがして……そのギャップと、シチュエーションを大事にしているところとか、日本的だけど海外の人にもちゃんと分かってもらえる部分があると思う。そこが一番、作品としての強みだなと感じています」と熱く作品の魅力を語ってくれた。
※クレジット(敬称略)
ヘアメイク:信沢 Hitoshi/スタイリスト:圓子槙生
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