木村拓哉さんが織田信長役を務めることで話題の映画「レジェンド&バタフライ」(大友啓史監督、1月27日公開)。脚本を担当したのは、NHK大河ドラマ「どうする家康」(総合、日曜午後8時ほか)を手掛けている古沢良太さんだ。同じ戦国時代を舞台にした両作だが、古沢さんは「レジェンド&バタフライ」執筆中に得た“気付き”を胸に、「どうする家康」に臨んでいるという。公開迫る映画の見どころと共に話を聞いた。
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「レジェンド&バタフライ」は、“最悪の出会い”から始まった信長と濃姫が、次第に心を通わせ、共に天下統一へと突き進んでいく夫婦の愛の物語。連続ドラマ「リーガルハイ」「コンフィデンスマンJP」などの古沢さんと、映画「るろうに剣心」シリーズなどの大友啓史監督がタッグを組み、二人の生涯を新たな視点で描く。
「東映創立70周年記念映画」と銘打ち、総製作費20億円の大作。多忙を極める中で今作のオファーを受けた理由について切り出すと、「もともと戦国時代の政略結婚に興味がありました。国のために好きでもない相手と結婚するなんて今では考えられないし、ラブストーリーにぴったりの題材だなと(笑い)。ずっと名もなき武将でやりたいなと考えていたのですが、今作のオファーがあり、信長と濃姫という日本一有名な政略結婚カップルでラブストーリーを描くことができるのであれば面白いものになるのではと思い、『夫婦の物語』にしてもいいならやらせていただきたい、とお受けしました」と話す。
「個人的にも木村さんが演じるラブストーリーが好きだったので、信長という役を通して木村さんのラブストーリーをまた見たかった」という古沢さん。木村さんにも「夫婦の物語」に込める思いを伝え、快諾を得て執筆を始めた。
もともと描きたかった題材だけに「(本格的に)書き始めてからは1カ月くらいで完成しました」といい、出来も大友監督がプロデューサーに「初稿で撮れる作品は初めて!」と伝えるほどだったという。
「押さえなければいけない史実はあったので、勉強することはあったのですが、それは僕が“必要だと思った部分”だけ。歴史ものとしてのリアリズムは、大友監督にお任せしました。僕はあくまで夫婦の物語として、歴史をまったく知らない方にも楽しんでいただけるようこだわりました。外国の方にも、ある国のキングとクイーンの話として楽しんでいただけるお話になっているのではないかな」
信長の物語ではなく、信長と濃姫の物語として描いたという今作。クライマックスの「本能寺の変」も、古沢さんは「今までに見たことのないような、新しい本能寺の変になったと思います」と話し、「クライマックスは僕自身も描いていて楽しかったし、新たな“信長像”を描けたと思うので楽しみにしていただけたら」とアピールする。
主演の木村さんについては、「序盤は、みんなが見たかった“やんちゃな木村さん”を存分にやってくださっていて、それがとてもうれしかった(笑い)! 終盤にかけては人の心を失っていく信長をすさまじい集中力で演じていただいています。見たことがない木村さんの表情もあって、常に新境地に挑んでいる姿に感動しました」と感謝の気持ちを述べた。
「レジェンド&バタフライ」で、初めて信長を描いた古沢さん。今作で信長について何か発見があったか聞くと、「強烈なイメージを持っているスーパースターでありながら、自由に創作できる余地がすごくある人物だと思いました」と話す。
「万人に知られている人物だからこそ、多少自由に描いてもキャラがブレないというか。これまでの信長像ではありえないことも、それが成立してしまう説得力を持っている。描いていて、意外と何をやっても大丈夫だぞと思いました(笑い)。これまで数多くのクリエーターに愛されてきた理由が分かった気がします」
今作の執筆の中で「時代劇はもっと自由な発想で描いてもいいのでは」と気付きもあった。「その人物を描く上で絶対押さえなければいけない史実さえ押さえれば、もっと自由に描いていいのではないか。外国のクリエーターも日本の“歴史もの”は好きで、さまざまな創作をしていると思いますが、彼らの方が自由に解釈して作っている気がします。日本のクリエーターは、自国の歴史ということもあって、先人たちの作品や定説にとらわれすぎている気がします。特に、女性に関しては資料があまりないのだから、もっと自由に描けるんじゃないかと思いました」
「レジェンド&バタフライ」を経て、現在「どうする家康」に臨んでいる古沢さん。「大河は(歴史)考証の先生がたくさんついているので、いろいろかいくぐりながら、自由に描かせてもらっています」と笑う。
心がけていることは「自分が描きたいもの」。「こちらに明確に描きたいことがしっかりあって、『ここはこういう解釈にします』と説明すると、考証の先生方も納得してくれる。描きたいものがしっかりあることが一番大事だと思います」と強調した。
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