吉谷彩子:「どんな役でもできると思われたい」 ドロドロした作風「新鮮で楽しかった」

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 女優の吉谷彩子さんと石井杏奈さんがダブル主演を務めるオリジナルドラマ悪魔はそこに居る」が、動画配信サービス「Paravi」で2月9日から配信がスタート。主人公の今西詩役を演じる吉谷さんに、作品の見どころや石井さんの印象、役者業との向き合い方などを聞いた。

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 ◇ドロドロだからこそ「リアリティー持って演じたい」

 原作は、小説投稿サイト「エブリスタ」で人気を博し、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」でコミカライズもされた、清水セイカさん原作、でじおとでじこレッドさん作画の同名マンガ。アルバイトをしながらフリーライターを目指す今西詩(吉谷さん)と、誰からも愛される甘え上手な九条美園(石井さん)という、一つ屋根の下に暮らすいとこの女性2人の愛憎劇が描かれる。

 本作の印象を、吉谷さんは、「かなりドロドロとしていて強烈で面白い」と切り出し、「ただ演じ方によっては、面白くなくなってしまうこともあるし、すごく面白いものにもなると思った。相手の方とのコミュニケーションやキャラクターをどのぐらい作り上げるかといった部分を照らし合わせつつ慎重にやっていかなきゃいけない。ちょっとした緊張感みたいなのもありました」と難しさも感じたことを明かす。

 その理由を、「リアリティーや生っぽさみたいなものがないと、きっと見ている方もやり過ぎてしまうと伝わりづらいというか、面白さに欠けてしまう」と説明し、「ちょっとドロドロした感じのものこそ、リアリティーを持って演じたいと思っていました」と思い描いていた演技プランを語る。

 撮影ではあえてテストなしで本番に臨むケースがあったが、「スケジュール的な意味もあったのですけど」と前置きし、「感情の起伏が激しいようなシーンが多いからこそ、あまりテストをせず本番で撮った方が、素のリアクションや生っぽさがうまく表現できた部分もある。ドロドロした感じの作品や役どころも今回が初めてで、すべてが新鮮で演じていて楽しかった」と笑顔を見せる。

 ◇石井杏奈の“攻め”の芝居に感謝

 吉谷さんは、自身が演じた詩と「詩は結構自分と似ている部分がある。美園はさすがにないですけど(笑い)」と話す。「詩には自分の言いたいことを少し我慢してしまう部分があり、私ももっとこう言いたいのにと思うことをあまり言えない。基本的にためてしまうところは『わかるな』と、詩に共感するところはありますね」

 演じる際には、美園役を演じる石井さんの存在が大きかったといい「杏奈ちゃんのおかげで受けの芝居がいい感じにできました」と感謝し、「衝撃的なシーンが多いので、受けたときの表情も、いつも驚くだけではつまらない。杏奈ちゃんの芝居をしっかり見て受けて、という感じでやらせてもらいました」と手応えを口にする。

 石井さんの印象を聞くと、「笑顔の絶えない、目が合ったらほほ笑んでくれるような優しい方。サバサバしていてしゃべりやすい。芝居中も気を抜くと目が合っただけでも笑っちゃう(笑い)。とても仲良くなりました」とにっこり。「お互い集中しているのですけど、ふっと一回役が抜けたとき、何も面白くないのに笑いが止まらなくなって。笑いのツボも一緒で、撮影の合間2人のときもバシバシ床をたたくぐらい笑っていました」と撮影を振り返る。

 ところが仲を深めたことで苦労した面もあったという。「仲良くなったからこそ、美園に言われた言葉がつらくなって。役のオンオフはできるタイプなのですが、今回は家の玄関3歩ぐらい前までは少し引きずりました。衝撃的なシーンも多く、杏奈ちゃん演じる美園を受ける側でも『うっ』とくるものがあったので、『すごかったな……』みたいな余韻はありましたね」

 ◇役作りは自分との共通点探し

 吉谷さんは、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「舞いあがれ!」ではヒロインの良き先輩、由良冬子役、菜々緒さんが主演を務める連続ドラマ「忍者に結婚は難しい」(フジテレビ系)では、主人公の初恋相手、風富小夜役などさまざまなキャラクターを演じ、その都度注目を集めている。

 性格や特徴の異なるキャラクターを演じ分ける軸について、吉谷さんは、「自分の中に少しでもあるものからどんどん広げていくこと」だという。

 「役作りは、自分と何か共通点を探さないとだめ。朝ドラの由良先輩もどこか似ている部分があるし、『忍者に結婚は難しい』の小夜も自分の中に少しあるもの。自分とは違うと感じても、何か似ている部分を一つでも必ず見つけ出します。そこから『ここがわかるのだったら、きっとこういう感情につながるので』とヒントを得て、広げていきます」

 やってみたい役柄について「美園みたいな、めちゃくちゃ悪い役はやったことがないので興味がある」と口にするも、「杏奈ちゃんを見ていたら、ニコニコしたと思ったら急に真顔になって、また笑顔に戻るとか大変だろうなって。すごいなと思いつつ『私はいいかな』って(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話す。

 ◇感謝を忘れず丁寧に役者業と向き合っていきたい

 本作は、コンプレックスや競争心、承認欲求など人間の内面もテーマになっているが、吉谷さん自身も「20代のときは可愛く見られたいとかメークはもっとこういうふうにとか、外見的なことに対して『もっとこうだったらいいのに』みたいなことはたくさんありました」と明かす。

 現在は「自分に興味がないと言ったらうそですけど。プロの方にメークも衣装もきちんとしていただいているので、自分がこうという思いはなくなりました。自分へのこだわりとかコンプレックスとか、今はないかもしれません」と明かし、「こだわりすぎると狭まっちゃうというか。全部をのみ込めるぐらいの方が気持ちも楽ですしね」と持論を語る。

 そんな吉谷さんに今後の方向性や目標を尋ねると「ないわけではありませんが、こういうふうにしたいとか変わりたいというのがあまりない」という答えが返ってきた。

 「母から『地道に頑張って生きなさい』とよく言われていて、すてきな言葉だなと思う。『もっとこうしたい』よりも一個一個すべてにおいて丁寧に、周りの人への感謝を忘れずに、ということを大切にしたい。40代も50代もずっとその気持ちを忘れず、芯の部分は崩さず、変わらずにやっていきたいですね」

 今作の見どころを、「詩と美園のドロドロとしたところが一番見ていて面白いと思います」と切り出し、「詩は追い詰められて迷走していく中で、成長し自分の正解を探し出していきます。皆さんにぜひ詩の成長を見ていただければ」と呼びかけた。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

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