ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
上映中にスクリーンのキャラクターに声を出して応援する“応援上映”。アニメ「KING OF PRISM(キンプリ)」シリーズで広く知られるようになったが、声出しを禁じられたコロナ禍を経てどのように変わっていったのか。黎明期から応援上映を見守ってきたアニメコラムニストの小新井涼さんが変遷を語る。
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1月末からの各種イベントでの声出し解禁を受けて、映画上映中の発声やサイリウムの使用等を可能とする特別興行・応援上映のパイオニア的存在であるアニメ「KING OF PRISM(キンプリ)」シリーズでも、約3年ぶりに発声OKのイベント上映が行われました。
しかし3年ぶりとはいいますが、そもそも応援の中でも重要な“発声”が禁止されたコロナ禍に応援上映は行われていたのか、行われていたとしてもどのように?と、疑問に思う人もいることでしょう。また、今ではすっかり定着した応援上映ですが、参加したことがない人にとっては、それが一体どんなものなのか、分からないことも多いかもしれません。
今回はそんな応援上映が、これまでどんな変遷をたどって今に至るのかを、大きくコロナ以前・コロナ後に分けて改めて振り返ると共に、それらを経て、先週末久々に開催された発声OK応援上映がどんな様子だったのかを、合わせて紹介していきます。
まずはコロナ以前の応援上映を、ざっくりと黎明期・安定期・成熟期に分けて、その変遷をたどっていきます。
「プリキュア」シリーズや「アナと雪の女王」など、それ以前にも類似の形態は存在しましたが、今の形での応援上映が定着したのは、「キンプリ」シリーズ1作目「KING OF PRISM by PrettyRhythm」が公開された2016年のことでした。“上映中はお静かに”がお約束のシアター内が、声援・サイリウム・コスプレが許可された応援上映では見たことのない景色に染まり、その様子がテレビ等で紹介されるや、作品を知らない人までが劇場に足を運んで、やがては他作品でも実施されるようになっていきます。
最初は上映前に流れる注意事項の映像などもなく、時折応援の域を超えた言葉の無法地帯ぶりがファンの間で問題視されたりもしましたが、そうした点も含め、誰も正解を知らない中でどう楽しんでいけるのか、皆が手探りでその土壌を作り上げていた黎明期でした。
その後、シリーズは「KING OF PRISM -PRIDE the HERO-」「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」と続き、それぞれで実施されてきた応援上映も安定期、成熟期を迎えていきます。公式から伝えられた応援上映を楽しむための“四つの約束(要約すると、心ないコメント禁止、迷惑なアイテムの持ち込み禁止、上映中暴れるの禁止、せりふや歌もしっかり聞くこと…といった内容)”も浸透し、参加するファンも鍛えられた精鋭が多くなっていくにつれ、次第に黎明期のような議論も少なくなっていきました。
代わりに、そんな安定期を経た成熟期では、ファンも製作側も映画館側も、応援上映という与えられたフィールドでのさらなる楽しみ方を、とことんまで極めようと試み始めていきます。ファンは新作ごとに上がる応援のハードルを飛び越えて新たな応援を生み出し続け、製作側も特製の応援キットを使ったプリズムシャワー上映といった新たな応援形態を提供し、映画館でも再上映や館内装飾、応援グッズのレンタルまで行われました。
そんな中迎えた2020年、コロナ感染防止のため応援上映での発声が禁止となったのは、最新作「KING OF PRISM ALL STARS -プリズムショー☆ベストテン-」の上映真っただ中のことでした。しかし、それまで何年も鍛え上げられてきたファンがそこで応援の手を緩めることはなく、声は出せなくても言葉を届けるために、“手話”や拍手を駆使した応援が生み出されていきます。
想定以上に長引く発声禁止期間中には、自宅からなら声が出せると、オンラインプラットフォームやメタバース空間を使ったオンラインでの応援上映も登場しました。中でもZoomを使った応援上映では、普段映画館では真正面から見えない他の参加者の応援が見える環境を活かして、映画の内容に合わせて自身が踊る、料理をする、筋トレをする……といった“見せる応援”や、バーチャル背景を駆使した新たな応援方法も誕生します。
劇場休止期間を経て再び開催されるようになった映画館での応援上映では、発声ができない代わりに、太鼓やクラッカー、紙吹雪等を使用した特別上映が、「キンプリ」以外の作品と共に実施されたりもしました。
こうして、発声禁止中でさえ新たな応援を生み出していた「キンプリ」とそのファン達にとって、約3年待ち続けてきた今回の発声解禁がうれしくないはずがありません。筆者が参加した東京の劇場も、2日間ともあっという間にチケットが完売し、上映当日はシアター満席にファンが集まりました。
最初は久々の映画館での声出しに探り探りなところもありつつ、そこはスキーなどと同じで感覚さえ思い出せば身体が勝手についてきます。最後の方には発声禁止前にも負けないくらいの全力の応援により、終わる頃には皆汗だくになっているほどでした。
そうして2日で計9時間という驚異の上映時間を走り切ったファンの応援は、3年のブランクを感じるどころか、コロナ禍の経験を経てよりパワーアップしていたように思います。
こうして振り返ってみると、もはやこの約7年の変遷が、ちょっとした文化史を築き上げているといっても過言ではないと思えてくる「キンプリ」の応援上映。しかし、たとえ映画の公開期間が終わっても、コロナ禍で活動制限がかかっても、開催され続けることができたのは一体なぜなのでしょうか。
私はそれが、一度だって同じ応援が行われる上映回はない、つまり応援が完成することはないのと同じように、応援上映というものも永遠に完成せず、その時々で進化と変化をしながらアップデートされ続けていくものだからだと思います。そしてそれは、作品を応援し続けるファン、上映し続ける映画館やプラットフォーム、それに応えようとする製作者が、“まだまだもっと楽しめるはず”と、作品を心から楽しむ方法を際限なく探求し続けている結果でもあるのでしょう。
こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。
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