弱虫ペダル:“手嶋”岸尾だいすけ&“泉田”阿部敦 キャプテン対談 「積み上げてきたものを昇華」

「弱虫ペダル LIMIT BREAK」の一場面(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル05製作委員会
1 / 18
「弱虫ペダル LIMIT BREAK」の一場面(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダル05製作委員会

 渡辺航さんの自転車マンガが原作のテレビアニメ「弱虫ペダル」の第5期「弱虫ペダル LIMIT BREAK(リミット ブレイク)」(NHK総合、土曜深夜0時)。第4期終了から約4年ぶりとなる新シリーズで、総北高校2年生となった主人公・小野田坂道らが迎える2度目のインターハイの最終日を描く。クライマックスに向けて盛り上がりを見せる中、総北高校(総北)のキャプテン・手嶋純太を演じる岸尾だいすけさん、箱根学園のキャプテン・泉田塔一郎を演じる阿部敦さんの“キャプテン”対談が実現。作品にかける思い、収録の裏側を聞いた。

ウナギノボリ

 ◇一丸となって3日目を走り抜ける

 --第5期は、どのような思いで収録に臨まれたのでしょうか。

 阿部さん 第4期は、インターハイ2年目の3日目が始まったところで終わっていたので、視聴者の方は続きが見たいだろうし、僕らもやりきりたい思いはありました。4年越しで実現したのは視聴者の方の応援はもちろん、スタッフさんが動いてくださったからこそ。その思いに応えるためにも一生懸命やりたいと思いました。第5期が始められたのはうれしかったですね。

 岸尾さん 2年目のインターハイを最後までやりたいと熱望していたので、時間はかかっちゃいましたが、3日目を走らせてもらえることで、みんなで「やったね」と。状況的に収録は(キャストが)そろった状態ではできませんでしたが、一丸となって3日目を走り抜けようという思いは一緒。いい感じで着地しようと臨みました。積み上げてきたものが見事に昇華できました。3年目もできたらうれしいけど、まずは一段落、いや二段落かな。感無量です。

 --第5期を振り返り、印象に残っている思い出深いシーンは?

 岸尾さん (宮野真守さん演じる)葦木場(拓斗)との戦いはすごいなと思った。いろいろな作品で戦っている同士が、しゃべっていないのに思いが通じるというか。感覚が研ぎ澄まされただけでなく、昔からの戦友というか友達でありライバルでもあった関係性から、考えていることや思っていることが分かる。その結果、心の中のモノローグの会話ができてしまうという。長年の謎が解けた意味でも戦えて良かったです(笑い)。

 阿部さん 泉田君はスプリンターなので最後まではついてはいけないのは、キャプテンとしてどうなのか?という問題も、回想で「実はこんなことがあった」みたいな話もありました。最後はユキ(黒田雪成)に託して、おまえなら大丈夫と信頼して送り出す。そういった意味では、山岳の平坦区間で、700メートルの差を付けてクライマーチームを送り出せたのはいいシーンだったのでは? (新開)悠人に背中を見せて「箱根学園とはこうだ」と無言で語ることができたシーンも個人的にもいいシーンだったと思います。

 ◇キャプテンになることで感じたキャラの変化

 --演じる上で大切にしていること、意識していることは?

 岸尾さん ほかのキャラたちと比べて実力が劣っているのを、何とか努力と思いだけでカバーしようと。みんなそうなのでしょうけど、手嶋は特に自転車が好きな面がせりふとしても前に出ているところがある。好きな気持ちは重要で、無理と思っても努力を続ける姿に「継続は力なり」の大切さを改めて感じさせてくれるキャラクター。初心に返らせてもらい、自分もまだまだ頑張らなきゃなと思わせてもらいました。

 阿部さん 泉田君は1年目のインターハイにも出ていて、常勝校だったけど負けてしまいました。泉田君だけの責任ではないと思いますが、「自分が出ていたけど負けた」という思いや責任感、去って行った3年生たちの思いを引き継ぐという覚悟はあるのだろうなと想像しました。

 --これまでのシーズンと比べて、第5期で演技に変化はありましたか。

 岸尾さん せりふ量がむちゃくちゃ増えたのが大きな変化で、いいシーンというか出番も多く、そういった変化に飲み込まれてしまいますね(笑い)。サブキャラがインハイという本番に臨めるようになったのが、もう最高の出来事だと思います。その喜びやうれしさを表現しつつも、チームのキャプテンですから、一度優勝した故のプレッシャーも感じています。「手嶋もいろいろ考えることはあるのだろうな」と僕も考えたことが大きな変化だったかな。

 阿部さん 2年目のインターハイでみんなを引っ張っていかないといけない。精神的支柱にならないといけないという思いもあり、泉田君が以前よりもブレなくなったのは演じていて感じました。前回は先輩たちについていく後輩ポジションで少し揺らいでしまうところが見えていたけど、今回はそれを一切表に出さず、何をしても勝つという思いがあったからこそ、ああなったのだろうなと。2日目に(岸神)小鞠君と戦った時や、今回クライマーチームを引っ張るところで、1年目のインターハイと同じせりふがあるのですが、思いは同じだけど2年目だから気づいたことや、自分の中で生まれた覚悟が乗ることで、似ているけどちょっと違うものになっているなと感じました。個人的には熱いなと思いながら演じていました。

 --お互いが演じるキャラクターをどう捉えていますか。

 岸尾さん それぞれキャプテンになり、それぞれのチームの作り方をしたのだなと。お互い全然違うタイプだし、それぞれがいいところをブラッシュアップして、それぞれが思う最強のチームに仕上げたのだなという感じですね。

 阿部さん 極端に違う2人。立ち位置や話し方も違いますし、汗水垂らしてみんなを鼓舞して自分も必死についていく手嶋さんと、何かを覚悟したような目で見てブレずに指示を出す泉田君は対照的で……というより対照的になったなと思います。泉田君がちょっと変わったのもありますが、あえてそこは狙っていたところなのかなというのもあります。

 ◇キャプテンが語るチーム自慢 もしも引き抜くなら誰?

 --総北、箱根学園それぞれの「ここがすごい!」という魅力を教えてください。

 岸尾さん インターハイで優勝して今回も優勝争いに絡んでいるところがすごい。箱根学園と違って常勝校でもないし、「まぐれ」と言われても仕方ないけど、勝ったから2年目も強いかというとそれはなかなか……という部分もある。それでも2年目もちゃんと強いのはすごいし、重圧に負けず優勝校の一つになれている精神力がすごいと思います。

 阿部さん そもそも個々がすごいけど、2年目のチームは会話量が増えたなと感じます。前の3年生たちは、思いが分かっているから多くを語り合わないという感じでしたが、今の3年生は会話をして、悩んでみたいなところも見受けられる。泉田君も司令塔ですが、もう一人ユキという司令塔がいるので、やっぱり強い。フレキシブルにいろいろやれるようになり、強さにしなやかさや柔らかさが加わった感じがするなと思います。

 --お互いのチームの魅力は?

 岸尾さん 個人レベルでは箱根学園の方が絶対的に上というところかな。6人全員がゴールを狙えるエースで、10点満点で言ったら10点満点が6人そろっている。総北はそうではないのでいいなあ(笑い)。失敗する確率が少なく最良の采配をすれば無敵のはずなのに、うちが勝っているから何とも言えませんけど(笑い)。

 阿部さん 総北は、意外性というか幅があるのがいいなと思う。なによりも会話が朗らか。箱根学園だと、みんな確立しちゃっているからカチッとした会話が多い。それでも2年目のインターハイはいろいろなキャラが増えて、楽しい会話も増えましたけど。総北のわちゃわちゃした感じはうちのチームにはあまりないなと思っていました。

 --もし、お互いのチームから1人だけ引き抜くとしたら……?

 岸尾さん 弱いところを補える人がいいかなと思うので、オールラウンダーの方がいいかなと考えると、黒田かな。いろいろと作戦も立ててくれるし、立てられる作戦も増えるでしょうしね。

 阿部さん 鳴子(章吉)が入ってくれると朗らかになりそうな気がします。銅橋(正清)とも面白い会話をしそうだし、葦木場ともいい感じのツッコミとボケの関係性が成り立ちそうだなと思います。

 --最後にファンへメッセージをお願いします。

 岸尾さん インターハイ3日目にたどり着くまでに、物理的な時間もかかってしまいましたので、1日目からの流れをお忘れの方もいらっしゃるのでは? このご時世、1日目から、いや、第1話からでも見返すことはできますので。過ぎてしまった時間を忘れるほど我々も熱く頑張っています。青春の熱い1ページを皆さんも思い出しつつ楽しんでいただければ。

 阿部さん 待っていてくれた視聴者の方がいて、第5期を実現させようと頑張って動いてくれたスタッフさんがいて、だからこそ収録を始められた我々がいます。キャラクターたちもそうですけど、我々も望んでいた決着。オンエアを見る時は、我々も一視聴者として皆さんと同じ気持ちで見ますので、最後まで一緒にワクワク、ドキドキ手に手に汗握りながらゴールを見届けていただければと思います。(取材・文:遠藤政樹)

写真を見る全 18 枚

アニメ 最新記事