子安武人:吹き替えの魅力 英語と日本語の違い 「レジデント・エイリアン」で“おかしな”エイリアン熱演

「レジデント・エイリアン」の日本語吹き替え版に声優として出演する子安武人さん
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「レジデント・エイリアン」の日本語吹き替え版に声優として出演する子安武人さん

 米人気ドラマ「レジデント・エイリアン」のシーズン2がWOWOWで5月16日から毎週火曜午後11時に放送、配信される。シーズン2が日本で放送、配信されるのは初めて。さらに5月10日にはシーズン1が一挙放送される。人類を抹殺すべく地球に来たエイリアンが米国の田舎町に不時着し、人間社会に潜伏する……というSFサスペンス。SFでサスペンスではあるが、コメディー要素も強く、人間の医師のハリー・ヴァンダースピーグルに擬態したエイリアンが巻き起こすドタバタがドラマの魅力になっている。日本語吹き替え版では、人気声優の子安武人さんがハリーの吹き替えを担当。「この男は、何かがおかしい。」というキャッチコピーの通り、おかしなハリーを演じている。子安さんに収録の裏側、吹き替えへの思いを聞いた。

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 ◇えげつなくても下品にならないように

 ドラマの舞台となるのは、中西部コロラド州にある人口約1000人の町、ペイシェンス。人類抹殺のために地球を訪れたエイリアンが宇宙船の事故で地球に不時着し、任務に使う装置を紛失してしまう。エイリアンは、ペイシェンスの外れにある湖畔の別荘にいた医師ハリーを殺し、その姿に擬態して、任務遂行まで正体がバレないよう奮闘する。アラン・テュディックさんがハリーを演じる。

 ストーリーを読むと、シリアスなSFサスペンスのように感じるかもしれないが、それだけではない魅力がある。個性豊かなペイシェンスの人々、ハリーの交流がコミカルに描かれている。

 「最初、サスペンス、ハートフルコメディーと説明され、確かに第1話はサスペンスなんですよ。こういう感じで進んでいくのか、と思っていたら、いつの間にかサスペンスはどこかにいってしまい、コメディーが強くなっていきました。ただ、ハートフル、ヒューマンドラマでもあって、コメディーを散々やっておきながら、最後に泣かせにきて、グッとくるところもあるんですよね。みんなキャラ立ちしているんですね。モブだと思ったらレギュラーになっていたり、生き生きしています。脚本や設定など全てが面白い。気楽に見られるようで、意外に教訓めいたものもあるんだけど、ギャグで包んでいったり(笑い)」

 ハリーの正体はエイリアンということもあり、地球人とのギャップがコミカルに描かれている。ハリーは人間と交流する中で変化していく。

 「第1話の意味ありげなサスペンスを期待していて、結構シリアスに声を作っているんですけど、聞いていた話と違って、コメディーになっていった(笑い)。コメディー寄りに段々シフトしていきました。ストーリーが進んでいくと、ハリーさんが人間的になって、饒舌(じょうぜつ)になるんですよね。ナレーション、心の声、人間としてのハリーさん、エイリアンとしてのハリーさんと使い分けていたのですが、段々とエイリアンのハリーさんが人間のハリーさんに寄っていて、近くなっていきます。だから、第1話を見直すと、今とは違うんです。スマートにしゃべっているけど、今はスマートの要素はないですから(笑い)」

 徐々に変化しているので、ドラマを見ていると、子安さんの演技の変化にも気づかないかもしれない。しかし、最初から見直すと、確かに変化している。

 「気づかないかもしれないですね。エイリアンが人間に擬態して、人間に感化されていくというのがグラデーションのように変化しています。僕はそれに乗っかっています。(ハリー役の)アランさんがとにかく面白いんです。仕草が本当に面白くて、細かいことをするんです。この役がすごく好きなんだな!というのが伝わってきます。アランさんが楽しんでやっている役なので、僕も楽しくやらないと失礼ですからね。真摯(しんし)に演じようとしています」

 ハリーは淡々としながら、とんでもないことを言い出すのが面白い。

 「絶妙な感じなんですね。淡々としているんですけど、感情が入っているから、棒ぜりふにはならない。ブラックユーモア、下ネタもあるけど、エイリアンであるハリーさんが言うことだから、えげつなくならないようにしないといけません。結構えげつないことを言っているんですけど(笑い)。汚かったり、下品になったりしないようにしようとしています」

 ◇原音にはない日本語の面白さを

 子安さんは演じる中で「英語と日本語の違い」も意識している。

 「英語と日本語は違うところがあって、英語は結論からしゃべるので、言葉の頭が強くなることが多いけど、日本は語尾にいくにしたがって強くなります。頭の強いところを合わせるのが難しいんです。アランさんのお芝居は、素っ頓狂なところもあって、それを拾ってはいるんですけど、そこを拾う苦労はあります。日本語には日本語の面白さがあるので、そこを表現しようとしています」

 子安さんは数々の人気アニメにも出演する人気声優だ。吹き替えとアニメでは演技の際に意識の違いはあるのだろうか?

 「僕はアニメが多いので、吹き替えの現場の後にアニメをやると、アニメはやりやすいんですね。アニメは原音がないけど、吹き替えは違う役者の芝居を踏まえるところが違います。アニメも吹き替えも尺が決まっているから、そこに合わせるのは変わらないんですけど、人間の表情が細かいですし、そこを拾うことに神経を使います」

 原音を意識しながら、吹き替えならではの表現も目指している。

 「今回にしてもハリーさんは。奇声を上げたり、変なしゃべり方をしたりすることがありますが、ここで大きな声を出すのと?と思うこともありますが、気持ちを理解して、そこをしっかり拾おうとしています。エイリアンであるハリーさんに寄り添うのは難しいところもありますが。それに、日本語吹き替えの面白さも出していきたいんです。僕は、台本通りどこまでやっているのかな?となるような昔の吹き替えが好きですし、決められたせりふの中でどうやって楽しさを入れるかを考えますし、原音にはない面白さがあってもいいのかな?とも思っています。原音好きの人は字幕版を見るでしょうし、吹き替えのよさもありますしね」

 ◇シーズン2の収録で変化が

 コロナ禍ということもあり、アニメや吹き替えは最少人数で収録することが多かったが、今春辺りから少しずつ緩和されつつある。

 「シーズン2は最大8人くらいで収録しています。シーズン1の時も絡みが多い人とは一緒に収録していましたが、意外にマックス(田中あいみさん)、ダーシー(松井暁波さん)とは一回も一緒に録(と)っていないんです。シーズン2は、皆さんと一緒に収録でき、空気感、相手の呼吸を感じることができています。やっぱり全然違いますね。別々の収録でも音響監督の方が調整していただいているので、見ている方は気づかないところかもしれません。ただ、僕たちの気持ちは違うんです」

 シーズン2の放送に向けて「いろいろすごいですよ。ペイシェンスを出て大都会に行ったり、いろいろなことがあります。シーズン2は全16話でシーズン1よりも話数が多いですしね。次のシリーズが制作されることも決まっていますし、これからも楽しみです」と語る子安さん。期待が高まる。

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