SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第1話 再出発!集う麦わらの一味!
11月3日(日)放送分
北条司さんの人気マンガ「シティーハンター」の新作劇場版アニメ「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」が9月8日に公開された。約20年ぶりの新作アニメとして2019年に公開され、大ヒットした「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」から約4年、新作劇場版アニメは、冴羽リョウの“最後の戦い”を描く最終章に突入する。1987年に放送をスタートしたテレビアニメシリーズの初代監督であるこだま兼嗣さんが「新宿プライベート・アイズ」に続き総監督を務める。新作では「今までとは違う冴羽リョウ、『シティーハンター』を描いた」というこだま総監督に、制作の裏側、「シティーハンター」を制作する醍醐味(だいごみ)を聞いた。
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新作は、現代の東京を舞台に冴羽リョウの過去を描き、パートナーだった槇村秀幸の死の核心に迫る物語。投与した者を超人兵士へと変える闇のテクノロジー・エンジェルダストの最新型を手に入れようと東京に暗殺者が現れ、槇村秀幸の命を奪った禁断の開発を巡る争いが描かれる。アニメでは初めて、冴羽リョウの育ての親である海原神が登場することも話題になっている。
約20年ぶりのアニメ「シティーハンター」の復活となった「新宿プライベート・アイズ」は、観客動員数100万人を超える大ヒットを記録。こだま総監督には「『アニメ映画では復活はほとんどない』というジンクスを覆してみたい」という思いがあったという。
「前作は『シティーハンターを復活させる』ことを目的に作りました。そのためには、テレビアニメ放映時からのコアなファンの人たちにまず見てもらいたかった。テレビアニメ放映当時の作り方、音楽、雰囲気を現代に持ち込んで、イメージを変えない状態にすることが非常に重要でした。コアなファンの人たちが納得してくれないと、ほかに広がることはないと考えていました」
1980年代の作品を現代にマッチさせることの難しさはあったが、「できるだけ同じような雰囲気で描こうと。新宿にはまだまだ当時の町並みが部分的に残っていたりしますので、そういったものを使わせていただいて違和感がないようにしました」と説明する。
初期のテレビアニメからこだま総監督は「10年先にも通用するようなアニメーションにしよう」という思いで制作に取り組んでいた。「オシャレにしよう、都会的な感じを出していこうということで作っていました。それから30年たって、現代にも通用するとは思いませんでしたけれども」と前作のヒットに驚きと喜びを感じたという。
新作は、原作の中でも重要なキーワードである「エンジェルダスト」をタイトルに冠し、冴羽リョウの過去を知る育ての親、海原神が登場する。前作の制作時から、こだま総監督の中には新作の構想があったという。
「前作で“復活”は果たせましたので、新章に突入するしかないと。ですから、漠然とですが、海原神やエンジェルダスト、そしてリョウの過去にも正面から向き合わざるを得ないだろうと考えていました。ただ、2本目があるなんて、これっぽっちも考えていなかったのですが(笑い)。『シティーハンター』は原作の連載が終了していますし、原作のファンも『ここを描かずしてシティーハンターじゃないだろう』と。ですから、これはやらざるを得ないということで、本格的にエンジェルダスト、海原神を描くことにしました」
新作でも、前作に続き、「シティーハンター」の世界観をそのままに新たなエピソードを作り上げていった。新作のキャッチコピーは「最強の敵と最後の戦いへ―― 」。最強の敵と対峙(たいじ)する冴羽リョウの描き方に変化があったという。
「新作を制作するにあたって、普段リョウが圧倒的な強さを見せる時、リョウが見ている景色はどんなものなのだろう?と考えたんです。リョウ自身が圧倒的な強さを持っていることで、相手の動きがスローに見えて、攻撃を軽くかわせてしまう。だからこそ、リョウは余裕を持って敵と対峙して倒すことができるし、自分が窮地に追い込まれることもないと。それがリョウの格好よさにもつながっているわけですが、新作では、それが逆転するような展開になる。敵にリョウ以上の景色が見えてしまい、それによって窮地に追いやられるわけです」
これまでもリョウにピンチが迫るようなことはあったが、新作ではこれまでにない窮地に追い込まれるという。
「アニメでは、これまで真剣になってリョウが戦う姿は、ほとんど見せたことがない。表情でいうと、リョウは基本的に眉間(みけん)にしわを寄せないのですが、今回だけは表情からして真剣にならざるを得ない。そんなリョウを描くのは、映像としてはほぼ初めてに近いのではないでしょうか。これまでは、僕たちもリョウが真剣になって戦うということを想定していなかった。だから、実際にそんな状態のリョウの戦いを描くことは、かなり苦労しました」
新作では、音楽ユニット「TM NETWORK」の名曲でテレビアニメのエンディングテーマだった「Get Wild」がエンディングテーマ、新曲「Whatever Comes」がオープニングテーマとなり、挿入歌も手がけている。冴羽リョウの戦いを描く上では、音楽の力も大きかったという。
「僕自身、音楽はアニメーションと非常に仲の良い友達だと思っていて、音楽によって盛り上げてもらって初めて100%の映像が完成すると考えています。アニメーションは、実写のように常時動いていませんから、そこを音楽で補ってもらう。むしろ、キャラクターの心情、気持ちを音楽が後押ししてくれる。今回も映像を見た時に、もしかしてこれは受け入れてもらえないかもしれないという心配があったのですが、そこへ小室哲哉さんの曲が流れると、リョウの気持ちや決断を後押ししてくれるような、優しい気持ちになれるんです。その曲がはまったときに初めて、このシーンはうまくいくかもしれないと感じました」
楽曲制作は大部分がTM NETWORK「おまかせ」だったが、シーンやストーリーにぴったりと合うような楽曲が完成したという。
「クライマックスの3分にどんな音楽がつくのだろう?とちょっと不安でもあったし、期待もあったんです。恐らくこんな感じで上がってくるかなと思っていたら、予想と全く違うものが上がってきたのですが、映像と合わせてみると、思わず拍手をしてしまうほどの素晴らしい出来でした。イベントでTM NETWORKの皆さんにお会いした時に、どうしてもお礼を言いたくて『ありがとうございます。感動しました』とお伝えしました」
こだま総監督は、新作で新たな冴羽リョウの姿を描きながらも、「『シティーハンター』の世界観を絶対に壊してはいけない」と強調する。テレビアニメ初期から制作に携わってきたこだま総監督が考える「『シティーハンター』らしさ」とは?
「それは、昔からずっと変わらずにあるのですが、主役の冴羽リョウが圧倒的な強さをもって敵を倒せる。倒した後もドヤ顔はしない。自分の強さをひけらかさない。そして女性に優しく“もっこり”もするエッチな男。これを変えてしまうと、冴羽リョウではなくなってしまうので、リョウのキャラクターを大事に描くようにしています」
作品の主な舞台である新宿の街の描き方も重要であるという。
「新宿の街は、映画を見た人たちが憧れるように描きたい。実は僕自身、都会にほとんど出ない人間ですので、新宿に詳しいわけではないのですが、周囲の人に話を聞いたり、取材をしたりして新宿という街を理解しました。やはり、新宿の街は、映像としてかなり画面が映えるんですよね。ビル街や、あるいは飲み屋街があったとしても、非常に良い画面が作れますので、やっていても楽しかったです。僕自身、そういう都会に憧れる人間ですので」
こだま総監督は、「シティーハンター」の制作を「非常に楽しい」と語る。作り手から見た作品の魅力はどんなところにあるのだろうか。
「『シティーハンター』は、ストーリー、アクション、シリアス、コメディー、美女、そして“もっこり”と、アニメーションで描くべき全ての要素が含まれているんです。つまりこの作品だけやれば、もうほかの作品をやらなくてもいいほどに全ての技術が得られる。制作をしていて飽きずに楽しめるという意味では、非常に優秀な作品です。アニメーターとしても、僕ら演出としても、楽しめる作品です」
ファンからはもちろん、作り手からも愛される名作「シティーハンター」。その“最新”のエピソードが現代を舞台に描かれる。劇場でじっくりと堪能したい。
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