趣里さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」(月~土曜午前8時ほか)で、梅丸少女歌劇団(USK)の大トップ・大和礼子を演じた蒼井優さん。礼子は、ヒロイン・スズ子(趣里さん)の永遠の憧れの存在で、バレエを踊る蒼井さんの美しい姿や、圧巻のダンスパフォーマンスもSNSで話題となった。ここでは、蒼井さんが「ブギウギ」以前に踊りを披露した映画を3作品を紹介する。
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蒼井さんは1985年生まれ、福岡県出身。2歳からクラシックバレエを始め、38歳になった今も継続中だという。そんな蒼井さんのクラシックバレエを堪能できるのが、2003年にインターネット配信され、2004年に劇場公開された岩井俊二監督の映画「花とアリス」だ。
「花とアリス」は、鈴木杏さんと蒼井さんがダブル主演した青春ドラマ。高校生のハナ(鈴木さん)は、一目ぼれした先輩・宮本(郭智博さん)と同じ落語研究会に入部。ひょんなことから、ハナは宮本に記憶喪失になったと信じ込ませ、宮本の彼女になることに成功。幼なじみのアリス(蒼井さん)に宮本の元彼女を演じさせるが、宮本がアリスに恋心を抱いてしまい……というストーリー。
終盤で、蒼井さん演じるアリスが、雑誌モデルのオーディションを受ける場面が描かれる。自分をアピールしようと考えたアリスは、紙コップと白いガムテープで即席のトゥシューズを作り、制服姿のまま、約5分間にわたってバレエを披露する。
撮影当時18歳だった蒼井さんの透明感あふれる雰囲気や、圧巻のバレエシーンが話題を呼び、この作品を通して蒼井さんの知名度は一気に高まった。
「花とアリス」公開の2年後、蒼井さんは李相日監督の映画「フラガール」に出演する。
「フラガール」は、福島県いわき市が舞台。炭鉱の閉鎖により危機的な状況に追い込まれた町で、レジャー施設「常磐ハワイアンセンター(現スパリゾートハワイアンズ)」建設の計画が持ちあがる。その目玉としてフラダンスショーが行われることになり、地元の女性たちの中からダンサーが集められる。東京から講師として招かれた元プロダンサーの平山まどか(松雪泰子さん)は、嫌々ながらもダンス未経験の女性たちに指導を始めるが、ひたむきに踊る谷川紀美子(蒼井さん)らの姿に、忘れかけていた情熱を思い出し……というストーリー。
蒼井さんは10月20日に放送されたNHKの朝の情報番組「あさイチ」(総合、午前8時15分)に出演した際、「フラガール」で披露したフラダンスについて、「クラシックバレエは天に向かっての踊りだけど、フラダンスとかタヒチダンスは大地の踊りだから、重心が違うのですごい大変でした」と説明。出演オファーが来てから練習を始め、1日8時間の練習を3カ月間続けた、と振り返った。
同作で蒼井さんは、迫力のあるフラダンスシーンに加え、演技が高く評価され、第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得。出世作となった。
2016年には、「海炭市叙景」「そこのみにて光輝く」で知られる佐藤泰志さんの芥川賞候補作を映画化した「オーバー・フェンス」(山下敦弘監督)に出演。鳥の動きをまねる風変わりなホステスを演じた。
映画は、妻に見限られ、東京から故郷・函館に戻った白岩(オダギリジョーさん)が主人公。職業訓練校に通いながら失業保険で暮らしていた白岩は、同じ職業訓練校に通う代島(松田翔太さん)にキャバクラに連れて行かれ、変わり者のホステス・聡(蒼井さん)と出会う。白岩は聡に強くひかれていくが……と展開する。
蒼井さん演じる聡は、自分の感情を表現することが苦手で、白鳥や白頭ワシなど、さまざまな鳥の求愛行動をまねした“求愛ダンス”で白岩に思いを伝える。鳥のオスとメスがくちばしを合わせて愛を求め合う姿に魅了された聡は、周囲の目を気にせず、感情の赴くままに求愛ダンスを踊る。
蒼井さんは、劇中で3回、求愛ダンスを披露。クラシックバレエで鍛えたしなやかな動きや高い表現力で、見る者の印象に鮮烈に残る名場面を作り上げた。
「ブギウギ」では、第24回(11月2日放送)で、蒼井さん演じる大和礼子が亡くなってしまったことが明らかになり、ドラマからは退場。それでも蒼井さんの踊る姿は、ファンにとって忘れられないものになったはずだ。